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人事・労務・労働の諸問題は、実に多くの分野にわたっています。 ここでは、各分野別に、私が参考になると感じた本を一冊づつご紹介させていただきます。ここでご紹介する本は、必ずしも私が全面的に賛同できる内容というわけではありません。問題点の所在と実情が要領よく記述され、それぞれの問題を考えるのに役立つ本という観点を中心に選んでいます(他にもいい本がたくさんあると思います。ご教示いただければ幸いです)。 |
| 「日本の人事制度は年功序列で競争がない」などといった俗説を次々と破壊し、日本の人事管理の長所とその合理性を経済学の視点から解き明かすことを通じて、労働経済の全般的な姿も理解できる独特の教科書。人事・労務管理についても幅広い論点を提示している。文句なくこの一冊としておすすめしたい。 |
| 著者はわが国労働法の最高権威で、立法や司法判断にもその学説は大きな影響力を持つ。この本は労働法の歴史、精神から解釈、実務への応用までも含めて幅広く体系的に論じたスタンダードであり、人事・労務担当者の座右にぜひ推薦したい。「厚生労働省監修」などといった実務書よりはるかに勝っている。 |
| 家族、結婚といったものを、「金勘定」で考えるのは本当にけしからんのだろうか?晩婚化、非婚化や、それにともなう少子化について、経済学の考え方に立ってわかりやすく分析した本。経済学のユニークな入門書としても好適。必ずしも労働問題の本とは言えないかも知れないが、女性労働を考える上での材料を豊富に提供してくれる。同じテーマを社会学の観点からアプローチした山田昌弘「結婚の社会学」(紀伊国屋出版)も、歯に衣着せぬ直言の書で、あわせて読むと興味深い。 |
| 少子高齢化が大変らしい、政府の言うことはどうもあてにならない…しかし本当のところはどうなのか。少子化時代の経済はどうなるのか、さまざまに世間で喧伝されていることの何が起こって何が起こらないのかの理解を助けてくれる本。議論する前提としての知識を得るのに好適。 |
| もはや持続困難とも言われ、国民的課題となった感のある年金問題だが、議論はともすれば錯綜し混乱している。この本は、年金のしくみ、考え方とその問題点についてわかりやすく解説し、正しい理解を促進するとともに、年金改革の方向性を明らかに示している。万人に推薦したい良書。 |
| 国民医療費、特に高齢者医療費は膨張を続け、このままでは持続不可能なことは明らかになっている。その解決策を探るためには、医療に限らず、保健、福祉、介護なども含めた全体的な検討が必要である。これらの全体像の現状と将来性についてわかりやすくまとめた本。 |
| 高齢者労働の問題は重要なのだが、実はあまりいい本がない(良い本をご存知の方、ぜひご教示ください)。著者はこの問題の権威とされている人だが、「エージレス社会」への個人的な思い入れが強すぎる感があり、私はあまり積極的におすすめする気にならない。この本は、高齢者労働をめぐる問題点と課題についてひととおり網羅しており、また価格も安く入手しやすい点で一応おすすめできる。 |
| 若年労働の分野でこの一冊と言うにはあまりに抵抗が大きかったが、議論の材料を提供するという意味ではこれ以上の本はないことも間違いないので、あえて選ぶことにした。実際、毀誉褒貶のきわめて激しい本であり、さまざまな反論が試みられているが、所論は一般国民の生活実感に良く一致していることは認めなければならない。社会現象としてのパラサイト・シングルを広く社会に認識せしめた本であり、それだけでも高く評価されるべきと思う。玄田有史「仕事の中の曖昧な不安−揺れる若年の現在」は、若年の立場から若年労働の現状を解説している。 |
| 外国人労働者の問題は、これまでもたびたび議論され、今また将来的な人口減少を前提に議論が活発になっている。しかし、この問題も理念論や感情論が先行し、議論は成熟しているとは言えない現状ではないか。この本は、外国人労働力の議論の前提となる時代背景や環境変化を論じた上で、「数合わせより、いかに共に働くかが重要」という一歩進んだ認識を示し、その方策を論じている。慎重な上にも慎重な検討が必要で、軽率は厳にいましめるべき問題であるが、本書は比較的慎重な姿勢を維持しているのも好感が持てる。 |
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雇用・労働分野の規制緩和は、かなり進んだとは云えまだまだ課題は残っている。この本は、労働経済学者から労働法への問題提起の本。著者は規制改革推進のオピニオンリーダーであり、かなり極論に振っている部分があって、全面的に賛成とはいいがたいし、事実関係の誤りも多いなど、挑戦的な本にありがちな難点もあるが、現在世間で議論されている論点をほぼ網羅しており、議論の材料を得るには好適。 なお、「日本労働研究雑誌」平成12年7月号に野川忍氏の秀逸な書評が掲載されている。 |
| 1979年に出版された本であり、コア・コンピタンスもヴァリュー・チェーンもナレッジ・マネジメントも出てこないので、物足りないと思う向きも多いとは思う。しかし、依然として経営学の基本的な入門書としてこれ以上の本を知らない。内容はいたって基本的なことだが、いかに同じことが繰り返し語られてきたか、いかに基本を忘れた経営が失敗しているかを読むたびに改めて思い知らされる。 |
「企業ガバナンス構造の国際比較」 |
| 経済・企業業績の低迷が長期化する中で、明らかに行き過ぎて迷走気味の感すらある コーポレート・ガバナンス論議だが、この本はこの問題が注目を集めはじめたばかりの 時期に出たもので、諸外国のコーポレート・ガバナンス構造の冷静な紹介・比較により、 事実関係を明らかにすることが主眼となっている。それを通じて、さまざまなあり方が あり得るのだという健全な常識に目覚めさせてくれる良書である。アメリカの経営は 株主最優先というのがかなりの建前であることも指摘している。この問題は特に混乱が 著しく、世に悪書も多いだけに、ぜひ一読してもらいたい本。 |
| 経営には企業理念が必要」にはじまる5ヶ条に示される企業経営のあり方に限らず、技術者のあり方、技術開発のあり方や、キャノンの「共生」の企業理念などについても力を入れて記述されており、著者の経営思想、人生哲学が縦横に語られて行く。人事・労務管理に関しても豊かな洞察が示されている。共感できる「経営者の本」としておすすめしたい。 |