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「エイジフリー」(1) 2004年の年金改革とセットで高年齢者雇用安定法が改正され、原則として希 望者全員の65歳までの継続雇用が義務化された。老齢基礎年金の支給開始年齢 引き上げが決まって以来、それにともなう60歳台前半の減収対策が議論されて きたが、これで一応の結論をみたことになる。 その過程で、「高齢者が意欲と能力に応じ年齢にかかわらず働き続けられる 社会をめざすべき」との意見が主張され、それを示すキーワードとして「エイ ジフリー」がクローズアップされるようになってきた。もっとも、議論の当初 はエイジフリーではなく「エージレス社会」ということばが使われていた。た とえば、1997年に発表された労働省(当時)の「65歳現役社会研究会報告」で は、老齢基礎年金支給開始年齢引き上げへの対策として「希望者全員を対象と する65歳までの再雇用制度」「65歳までの定年延長」「定年制の廃止・禁止」 の三つをあげ、最後のものを「エージレス社会」といっている(ちなみに、こ の報告の内容が、その後現在にいたるまでの政策の枠組みを提示したものと思 われる)。 いつからこれが「エイジフリー」になったのかは定かではないが、厚生労働 省のホームページを検索すると、「エイジフリー」をふくむ最も古い文書は平 成12年1月24日に開かれた雇用審議会総会の議事録のようだ。そこでは、当時 行われていた高齢法改正の議論の基本的理念に関する事務局の説明のなかで、 「『高年齢者等はその職業生活の全期間を通じて、その意欲と能力に応じ雇用 の機会、その他の多様な就業の機会が確保され、職業生活の充実が図られるよ うに配慮されるものとすること』」。いわゆるエイジフリーといいますか、エ イジレスというような観点からいろいろご議論をいただいております」といっ た形で出てくる。この頃から、エージレス社会からエイジフリーへと用語が変 わったのだろうか。 なぜ変わったのか、となるとさらに謎だ。実は、インターネット上をざっと みたかぎりでは、agelessもagefreeも、和製英語ではないまでも、英米では高 齢者雇用についてこうした意味で使われることは少ないようだ(たとえば、わ が国における高齢者雇用をめぐる議論にも大きな影響を与えた2000年のEU指 令"Proposal for a Council Directive establishing a general framework for equal treatment in employment and occupation"(2000/C 177 E/07)にも、 agelessやagefree,age freeという語は出てこない)。インターネットを検索 すると、アメリカの"Ageless Foundation Laboratories"がヒットしてくるが、 これはサイトをみるかぎり「エージレス基金研究所」ではなく、「若返るファ ンデーション(化粧品の)研究所」のようだ。agelessやagefreeという語は、 こうした用法が一般的と見受けられる。余談だが、わが国では「エージレス」 は三菱ガス化学の主力製品である脱酸素剤(食品などの鮮度を保つためにパッ ケージに同封する小袋入りの薬品)の商品名として商標登録されている。こち らの方が英語本来の"ageless"の意味に近いだろう。いずれにしても、外来語 として正しいからエイジフリーに変わったということではなさそうだ。 まったくの推測だが、考えられるのは「エージレス社会」が高齢者雇用、定 年問題に特化しているのに対し、「エイジフリー」は年齢差別全般を含意して いるのではないか、ということだ。2004年の高齢法改正のベースになった2003 年7月の厚生労働省「今後の高齢者雇用対策に関する研究会報告」には、エー ジレス社会の語もエイジフリーの語も出てこないが、「年齢差別禁止」は大き く取り上げられている。前述した雇用審議会総会議事録の平成12年1月という 時期は、中高年の再就職が困難な理由として、求人に年齢制限(上限)が付さ れていることが指摘され、問題視された時期と符合するのではないか。このあ たりに、「エイジフリー」出現の事情があるのかもしれない。 |