キャリアデザインマガジン連載
「キャリア辞典」

 「エイジフリー」(2)

 いまのところ、「エイジフリー」の定義はまだあいまいで、行政が具体的に
定義づけたということもないようだが、たとえば2003年1月に公表された厚生
労働省の「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議」報告書(これ
にも「エイジフリー」という語はそのままでは出てこないのだが)をみると、
「働く場の確保が必要な中高年齢者、競争力の強化を図らなければならない企
業経営、自己の能力を発揮できる多様な働き方を志向する個人、幅広く支え手
を確保しなければならない社会全体、それぞれの要請を勘案すれば(中略)過
度に年齢に偏った我が国の雇用システムを見直し、意欲と能力を持つ誰もが年
齢にかかわりなく能力を発揮して働ける社会を作り上げていかなければならな
い。」と書いてあり、年功賃金をはじめとする人事管理、たとえば評価や処遇、
働き方などについても「年齢にかかわりない」(エイジフリー?)ものとして
いくことが主張されている。余談だが、この報告書を読むと一貫して「中高年
の雇用問題こそが重要」という考え方に立っており、いかに若年雇用問題が軽
視されてきたかということが感じられる。
 それでは諸外国の情勢はどうか。米国の「雇用における年齢差別禁止法(A
DEA)」が制定されていたことと、2000年に出された「雇用及び職業におけ
る均等待遇の一般的枠組を設定するEU指令」がしばしば引き合いに出される
ようだ。しかし、これらはいずれも、必ずしも全面的な年齢差別禁止にはなっ
ていないことに注意がいる。
 たとえば、ADEAは採用、賃金はじめ労働条件、昇進、職業訓練、解雇な
ど、人事管理全般について高齢者を年齢を理由に差別することを禁止している
が、これは20人以上の事業所の40歳以上の労働者にしか適用がない。そのため、
これが39歳以下の労働者への逆差別となるとか、中高年の雇用機会が19人以下
の小企業に偏るといった指摘があるという話もあるらしい。
 また、EU指令は宗教差別や思想信条差別とともに、雇用および職業アクセ
ス(昇進、職業訓練、解雇などをふくむ)における年齢差別を禁止したものだ
が、一定の要件(公的年金の満額支給との接続など)のもとに強制退職年齢を
定めたり、必要性が高く合理的なもの(若年雇用の保護など)について例外を
設けることが容認されている。
 こうした欧米の実情は、日本でも年齢差別禁止法を制定すべきだということ
よりは、「エイジフリー」をあまり原理主義的に考えることは望ましいことで
はないということを示しているように思われる。そういう意味では、前述の
「有識者会議」報告や2003年7月の厚生労働省「今後の高齢者雇用対策に関す
る研究会報告」が、法制化ではなく、日本の労働市場、労使慣行、人事管理の
実情に配慮しつつ漸進的な取り組みが望ましいとしているのは妥当といえよう。

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