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「一人一社制」(2) 近年全国的に見直された一人一社制だが、一部ではすでに「復活」を求める 意見も出ているという。その背景には就職情勢の好転があるらしい。もともと 求人の多かった時期には効果的なしくみとして評価されていたわけだから、当 然といえば当然かもしれない。 もっとも、一人一社制が批判されたのは、必ずしも「とにかく学校への求人 が圧倒的に少ないから、一人一社制にこだわらずに就職活動をさせないと就職 が決まらない」という切実な理由のためだけではなかった。たとえば平成15年 版国民生活白書には、「ある企業を希望しても自分の学校に指定校枠がなく応 募できなかったり、学業成績や出欠状況を重視した校内選考が行われ、希望ど おりの企業に推薦されないなど、求人と求職のミスマッチを起こしやすいとい った指摘もある。…生徒の意思等に基づく選択・決定をいっそう重視すること が必要となってきている。」との記載がある。これは就職の促進もさることな がら、「就職活動は自由であるべきであり、学校が関与すべきではない」とい う理念のほうが表に打ち出されている印象がある。強硬な自由化論者からは、 当たっているかどうかは別として、「学校が一人一社制の維持を求めるのは、 学校推薦が学校が生徒をコントロールするための権力源になっているからだ」 との主張もなされたという。こうした理由が有効であるならば、それは就職情 勢にかかわらず有効だろう。 それはともかくとして、現場の進路指導担当者としてみれば、依然として学 校に対する求人が多いほど多くの生徒の就職が決まりやすいことは事実でだろ う。となると、なるべく企業から求人を出してもらうためには「わが校はニー ズに応じた生徒を推薦し、合格したら必ず就職させます」という信頼関係を維 持することが重要になるだろう。となると、もともと学校と企業の信頼関係を 主眼としていた一人一社制の復活を求めることも理解できる。 さらに、一部の関係者からは、「複数受験を認めた結果、一部の生徒が多数 の内定を獲得するいっぽうで、内定を獲得できない生徒もかえって増えた」と の声もあがっているらしい。たしかに、すでにほとんど自由応募になっている 大卒文系では以前から同様の現象が指摘されているから、高卒でもそうした実 態がみられても不思議ではない。となると、就職の促進という本来の趣旨には かえって逆行してしまうということになるし、学校だけでなく企業の現場も混 乱するだろう。たしかに、考えてもみれば、長期的な信頼関係のある状況のほ うが、(言葉はよくないが)多少の難のある生徒でも、「長い目でみて」採用 する、ということになりやすいのかもしれない。 もちろん、長年続いた制度を見直したばかりだから、「以前のほうがよかっ た」という意見は出やすいだろうし、見直しの際にも反対論はあったのだから、 それが復活を求める意見にシフトしたという部分もあるだろう。大切なことは、 簡単ではないが見直しが本当に就職の改善に結びついたのか、就職後の定着は 改善したのか、生徒の評価はどうなのか、といったことを検証し(もっとも、 就職情勢の変動の影響が大きいから、それほど簡単ではないだろうが)、その 結果にもとづいて判断することではないかと思う。となると、いずれにしても もう少し時間が必要なのかもしれない。 |