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「完全失業率」(1) 毎月月末になると、夕刊各紙で「完全失業率」「有効求人倍率」が報じられ、 上がった、下がったと言ってはあれこれ論じられる。実際、この二つのデータ は、労働市場の動向や雇用情勢を示すもっとも基本的な指標として定着してい るといえるだろう。 多くの場合セットで使われるこの二つの指標、実はまったく異なる調査にも とづいている。ともに公的な統計だが、実施主体も異なり、完全失業率は総務 省の「労働力調査」、有効求人倍率は厚生労働省の「職業安定業務統計(一般 職業紹介状況)」によっている。もちろん発表も別々だが、毎月のように同じ 日に発表されているのは、両省の担当官が示し合わせているのだろうか。まあ、 これだけセットにされることが定着していると、報道の便宜や、あるいはマー ケットへの影響(もっとも、マーケットは事前に織り込むことが多いようだが) という面でもそろっての発表が望ましいのかもしれない。 完全失業率ということばはごく普通に使われているが、「完全」というのは なにが「完全」なのか、と考えると少し不思議な感じがしないでもない。完全 失業というのがあるのなら不完全失業というのもあるのだろうか。 もちろんこれは定義の問題で、単に「失業」といったのではあいまいなので、 「把握すべき失業者」を明確に定義して、それを「完全失業者」と称している わけだ。ちなみにその定義はかなり厳格?で、(1)仕事がなくて調査週間中に 少しも仕事をしなかった、(2)仕事があればすぐ就くことができる、(3)調査週 間中に,仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結 果を待っている場合を含む)、という3つの条件を満たさなければならない。 なお、「調査週間」というのは毎月の末日に終わる1週間をいう。 なるほど、これならば、回答する人が「自分(や家族など)が完全失業者に 該当するかどうか」で迷うことはほとんどなさそうなので、正確で継続性のあ る統計という意味ではかなり満足のいくものになっていそうだ。一方、行政の 実施する調査だから、当然行政上の活用が意図されているわけで、この場合は 「なんらかの政策的な対応が必要な失業者」という趣旨で定義されているので あろう。そうした意味でこの定義が満足なものかどうかは議論もありそうだ。 もっとも、十分に正確な定義は現実には困難だろう。たとえば勤め先が倒産 して失職し、新しい仕事を探している人が、たまたま「月末の一週間」のある 日に半日だけ親戚の店を手伝ってアルバイト代をもらった、といった場合は、 本人の意識としては完全に「失業者」だろうが、この統計の「完全失業者」に はあたらないことになる。いっぽうで、退職して事実上引退した人が、失業給 付を受けるために形式的に求職活動を実施している場合は、統計上の「完全失 業者」ではあるが、本人の意識として「失業者」かどうかはかなり疑わしい。 こうした誤差は、統計上避けがたいものとして受け入れるしかないのだろう。 |