キャリアデザインマガジン連載
「キャリア辞典」

「完全失業率」(2)

 完全失業率は完全失業者数を労働力人口で除し、100倍して計算する。労働
力人口とは、15歳以上人口のうち、現に就業している人(職についていて休ん
でいる人を含む)と完全失業者を合計した人口のことをいう。残りが非労働力
人口で、就業も職探しもしていない15歳以上の学生や家事従事者、あるいは引
退した高齢者などを含んでいる。生産年齢人口(15〜64歳人口)と異なり、労
働力人口には年齢の上限はない。
 したがって、完全失業率は失業者が増えれば上がり、減れば下がるだけでは
なく、労働力人口が増えれば下がり、減れば上がるということになる。
 従来から、完全失業率を労働市場の状態を示す代表的指標としたり、政策目
標とすることには、さまざまな異論があった。
 完全失業者の定義は、大雑把に言って「仕事をしていないが、すぐに働くこ
とができ、仕事を探している人」ということになるだろうが、たとえば、この
「仕事をしていない人」という条件(の細部)は妥当なのか、という意見があ
る。調査週間に1時間でも仕事をすれば完全失業者には該当しないわけだが、
現実には職探しのかたわらアルバイトでわずかなりとも収入を得ようという人
は多いだろう(もっとも、失業給付を受けている時期にはアルバイトをすると
受給資格を失うから、アルバイトの事実を隠して、結果として完全失業者にカ
ウントされていることが多いものとは思われるが)。近年のいわゆる「フリー
ター」をめぐる議論でも、短時間、低賃金で就労しながら勤め口を探している
人は失業者に含めるべきだという意見があったように思う。
 また、「仕事を探している人」という条件への疑問も、古くから呈されてき
たようだ。「ぜひとも働かなければならないわけではないが、いい仕事があれ
ば働きたい。」こう考える人は常に一定数存在するだろう。一般的に、不況期
には条件のよい求人は減少するから、こうした人はいい仕事を見つけるのをあ
きらめて、求職活動をしなくなる。求職していれば労働力人口としてカウント
され、失業者に含まれるわけだが、求職をやめれば非労働力人口としてカウン
トされることになる。完全失業率の計算式の分母と分子がともに減少し、数値
は低くなるだろう。逆に、こうした人たちは景気が改善し、いい仕事につけそ
うだと考えれば再び求職をはじめるだろう。不況期とは逆のことが起こり、完
全失業率を上げる方向に働くことになる。労働市場の状態をよりヴィヴィッド
に表現するには、こうした「意欲と能力はあるが就業・求職はしていない」人
を失業者に含めたほうがいいのではないか、というわけだ。実際、近年では、
非労働力から失業者を経ずにいきなり就業者になるというフローが年間1,000
万人にもなるという。
 もちろん、こうした批判に対しては、「求職していない(就業する必要性の
低い)人については、政策対応の優先順位が低い」という反論がありうる。た
とえば失業給付のような、雇用対策の救貧政策としての側面を重視するのであ
れば、こうした考え方になるだろう。
 いっぽうで、たとえば欧州などでは、近年では失業率以上に「就業率」を政
策目標として重視しているという。働きたいのに働けない人がどれだけいるか、
ではなく、働ける人がどれだけ働けているか、を重視するわけだ。雇用政策の
重点を救貧政策ではなく、経済活動の拡大・効率化におくのであれば、たしか
にその指標としては就業率のほうがふさわしいように思える。日本でも、いわ
ゆる「ニート」をめぐる議論などでは、就業率を重視すべきとの意見がみられ
るようだ。
 考えてみれば、単一の指標だけを見ているのでは限界があるというのは当た
り前のことかもしれない。課題に応じて適切な指標を使い分けること、さまざ
まな指標をみて総合的に判断すること、そして必要な指標が入手できるよう調
査を充実させることが大切だということだろう。

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