キャリアデザインマガジン連載
「キャリア辞典」

「継続雇用」(2)

 昨年、老齢基礎年金の支給開始年齢引き上げにあわせて、定年延長、定年制の廃止または継続雇用制度の導入を企業に義務づける高年齢者雇用安定法改正法案が成立した。経営サイドがこれに慎重な姿勢を示したのは当然としても、労働サイドの姿勢も推進を強く主張するというものではなかった。むしろ、たとえば労働政策研究・研修機構発行の「ビジネス・レーバー・トレンド」2004年11月号掲載の座談会などでは、労働サイドからも率直な戸惑いが表明されている。これは、今回の法改正に先立って2003年に発表された厚生労働省の「今後の高齢者雇用対策に関する研究会報告」が、雇用延長のためには現役世代の労働条件見直しも視野に入れるという、労組にとっても重い内容を含んでいたことにもよるだろうが、なにより、(労使ともに)これほど早い時期にこれが義務化されると考えていなかったことが大きいのではないか。
 過去の経緯をみると、前回、1998年の高年齢者雇用安定法改正で、65歳までの雇用延長が努力義務化されている。努力義務というのは、将来的な義務化を視野に、まずは労使の自主的な取り組みを促そうという性質のものだろうから、それから6年を経て(これが長いかどうかは議論があろうが)、そろそろ義務化してもいい時期だ、という判断はあるだろう。しかし、2000年に策定された「高年齢者等職業安定対策基本方針」には、「向う10年程度の間に65歳継続雇用制度の普及を図る」と明記されている。さらに、2002年に発表された厚生労働省の「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議」の中間報告でも、「今後10年間は65歳までの雇用確保を最優先」と記述されている。これをみた労使が、「義務化は2010〜2012年」と考えても不自然ではない。
 また、努力義務というのは、労使をとりまく環境に配慮し、事情の許すかぎりなるべく実現するよう努力すべきとの趣旨でもあるだろう。であれば、1998年以降の日本経済の低迷を考えれば、なかなか努力の余地がなかったのも致し方なかろう。それでもこの間、雇用延長の導入比率は2割強から3割弱にまで上昇しているから、努力義務化も一定の効果があったには違いないが、それでも3割弱という実施率で義務化するのは尚早との感は否めない。
 それでも義務化が行われたのは、同時に審議された年金改革法案との兼ね合いという政治的意思が働いたものと考えるのが常識的だろう。年金改革の議論では、年金給付と保険料負担の関係において世代間の公平性が大きな焦点となった。しかし、継続雇用などによる雇用延長が「今後の高齢者雇用対策に関する研究会報告」がいうように現役世代の労働条件見直しを含むものだとすれば、ここにも世代間の公平性の問題が発生することになる。さらに、もし高齢者の雇用が延長されることで若年の新規採用が抑制されるとすれば−それは大いにありそうなことだが−そこにはもっと大きな世代間の問題が発生するだろう。こうしたことに対する議論ははたして十分に行われたのだろうか。
 準備も議論も不十分なままでの義務化は、結局労使双方に大きな負担をかけることになりそうだ。

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