キャリア辞典

 「ニート」(2)

 ニート(NEET、Not in Employment, Education or Training)は、直訳すれば「雇用も教育も職業訓練もされていない(人)」ということになろう。これでは長いということか、わが国では当初「仕事につかない若者」とか「働かない若者」などと意訳されていたようだ。しかし、最近では「仕事につけない若者」あるいは「働けない若者」とかいうことが多くなっているという。「つかない」「働かない」だと、「働けるのに働かない怠け者」というニュアンスが強いが、現実のニートをみると、「働きたい」という気持ちは強くある(しかし、なんらかの理由で働けない)人も多いようなので、一律に「怠け者」扱いすることは望ましくない、ということだろうか。
 実際、ニートの内実はきわめて多様だ。本誌前号で児美川孝一郎氏が紹介した玄田有史氏らの著書「ニート」の副題は「フリーターでも失業者でもなく」だが、実際、いわゆる正社員ではない、自営業者でもない、学生でもない、失業者でもなければフリーターでもなく、家事手伝いでもない、どれでもない若者が「ニート」と一括りにされているのだから、多様なのが当然なのだ。労働政策研究・研修機構の小杉礼子副統括研究員らは、ニートを「刹那を生きる」「つながりを失う」「立ちすくむ」「自信を失う」「機会を待つ」の5類型に分類している。決して、「怠け者」と一律に決めつけられるものではない。
 しかし、現実にはこうした決めつけがまだまだ多い。たとえば、今年10月2日付朝日新聞朝刊の土曜版「Be」がニートの特集記事を掲載して、「『自己実現追求型』(立ちすくむ)『自信喪失型』(自信を失う)は長引く不況で、望んだ通りの就職がままならない現実と深く関係する。社会との接点が極端に少ない『ひきこもり型』(つながりを失う)を含め、親に子供を養う余裕があることが前提で、『非行型』(刹那を生きる)以外は日本社会ならではの問題といえるかもしれない。」と書いている。ニートはパラサイト・シングルで仕事を選り好みする怠け者、というステロタイプな見方の典型例だろう。
 しかし、現実には、親がひきこもりを養うのをやめたところで、その多くはホームレスのひきこもりになるだけだろう。また、「自信喪失型」のニートは迷惑をかけたくないとの思いから短期のアルバイトを繰り返す傾向があるという。
 「日本社会ならではの問題」などと言って、ニートやその親を単純に非難するだけではなんの解決にもならないのではないか。日本社会との関連でいうならば、不況が長引くと若年の就労機会が極端に減少することや、新卒採用中心で卒業時に将来の相当部分を決めなければならないことなどを問題とすべきだろう。また、「非行型」にしても、それが増加しているのは日本社会の問題と考える必要があるかもしれない。教育学者の苅谷剛彦氏が「インセンティブ・ディバイド」の発生と拡大を指摘しているように、日本社会の階層化が進展し、これがニートの増加を招いているという見方は有力と思われる。こうした問題について、雇用慣行や教育制度のあり方を再検討する必要があるのではないか。
 また、ニート本人に向けての対策としては、その多様性を考えれば一律に就労を強制するようなやり方をとるべきではあるまい。前出の玄田氏もいうように、「若者全体に対してではなく、個別・個人別の支援が必要」ということになりそうだ。

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