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「ニート」(3) 「ニートは女性より男性が大幅に多い」という「事実」をご存知だろうか。 実は、そもそもニートを男女別に集計した結果が公表されているものがあま り見当たらないのだが、たとえば、労働力調査(詳細調査)を特別集計した平 成16年版労働経済白書の推計(これは厳密には「ニート」という言葉は使われ ておらず、「若年層の無業者数」となっているが)によれば、2002年平均で男 性約31万人、女性約17万人の計約48万人、2004年平均では男性約34万人、女性 約19万人の計約52万人となっている。国勢調査を用いた小杉礼子・堀有喜衣 「学校から職業への移行を支援する諸機関へのヒアリング調査結果−日本にお けるNEET問題の所在と対応−」(JIL Discussion Paper Series 03-001、 2003年3月)には、1995年と2000年の各年齢別・男女別のニート比率のグラフ が掲載されているが、これをみても、1995年では男性が20代の各年齢でおおむ ね1%程度なのに対して女性は0.5%程度、2000年では男性が同じく20代の各 年齢でおおむね2%台後半なのに対して女性は2%台前半という状況を示して いる。これは、フリーターには男女の差はあまりみられず、むしろ傾向として は女性の方が多い(たとえば、同じく労働力調査(詳細調査)を特別集計した 平成16年版労働経済白書の推計によれば、2003年で男性約98万人、女性約119 万人の計約217万人となっている)のと際立った対照をなしている。 これは男女の本来的な違いというよりは、社会的におかれた状況を反映した ものと考えるべきだろう。一口にニートといっても定義はさまざまであり、推 計結果はそれに左右されるからだ。平成16年版労働白書の推計は、「非労働力 人口のうち15〜34歳で卒業者かつ未婚であり、通学や家事を行っていない者」 の集計であり、小杉・堀の推計は「非在学非家事の非労働力人口/当該年齢人 口」という計算になっている。いずれも、「家事を行っていない」「非家事」 という定義になっているところがポイントで、これらの推計結果は、女性は未 婚・未就職の場合多くが「家事手伝い」として家事従事者を称するのに対し、 男性は未婚・未就職でも家事を行わない、あるいは行っても家事従事者を自称 しないことが多いという日本社会におけるジェンダーの実情を反映しているも のと推測できるのではないか。それに対し、フリーターの定義(これも様々だ が)の多くは、女性については「既婚者を除く」として扱っており、未婚の家 事手伝いは一律には除外されない(家事手伝いでも求職していれば失業者であ り、フリーターとしてカウントされることが多い)。であれば、昨今の正社員 就職においては女性のほうが男性に較べてより厳しい(男性も厳しいにせよ) 状況におかれていることを考えれば、フリーターに女性が多くなることも十分 にうなずける。 こうしてみると、ニートの男女別推計結果が公表されないのは、短絡的な誤 解を招かないようにとの配慮が働いているのかもしれないが、必ずしも無意味 でもなさそうだ。その善悪を論じるつもりはないが、女性には自営業者や被用 者として就労することへの適性が乏しい場合に家事従事という選択肢があるの に対し、男性はそれが特段の合理的理由もなく社会的に制約されているらしい という実情が示唆されるからだ。ある有力な労働経済学者は、こうした実情が あるらしいことを踏まえて、「特に男性について、自営や就職への適性が乏し い場合には、無理に就労を促進する政策をとるよりは、家事従事を促す政策も 検討すべき」と語っていたが、そのとおりなのかもしれない。これはおそらく、 少子化対策としても有望なのではないだろうか(念のため繰り返すが、政策と して有効かどうかという話であって、善悪を論じるつもりはない)。 |