キャリアデザインマガジン連載
「キャリア辞典」

「正社員」(2)

 こんにち、「正社員」ということばがなにを意味しているかは、必ずしも明
確ではないようだ。「期間の定めのない雇用契約」で説明されることがあるよ
うだが、実際には「パートタイマー」などと呼ばれる人でも期間の定めのない
例が相当割合にのぼるというから、それだけでは説明できそうにない。
 それでは、一般的に想定される「正社員」の特徴として、どんなことが考え
られるだろうか。もちろん、雇用契約の期間の定めがない、というのは重要な
ポイントだが、いっぽうで定年制があることがほとんどだろうから、事実上は
働く人には退職の自由がある定年までの有期雇用、とみることもできるだろう。
 次に、フルタイム勤務、ということがある。これが正社員の重要な特徴だか
らこそ、行政などが新たな雇用形態として「短時間正社員」を提唱しているの
だろう。さらに、時間外労働を普通に行う、ということも特徴に加えていいか
もしれない。
 賃金についていえば、月給制(月々の勤務日数が違っても、基本賃金は一定
額)がほとんどだろう。さらに多くの場合には、長期勤続と能力開発を促すた
めにいくばくかの年功的な要素、たとえば毎年の昇給や退職金制度などを持っ
ていることが多いし、年収の相当割合を占める賞与が支給されることもほとん
どだろう。そして、人事管理の面では、企業内で育成され、内部の「昇進・昇
格」のはしごを上っていくことが想定されている。
 いっぽうで、仕事に関しては、従来それほど顕著な特徴はなかったといって
もよさそうだ。もちろん、かつてから正社員は基幹的な業務を担当し、非正社
員は定型的、補助的業務を担うという人事管理はごく一般的だったが、それで
は正社員だから必ず基幹的業務に従事しているかといえば必ずしもそうではな
く、いわゆる「一般職」正社員は補助的な業務を専らとすることが前提とされ
てきた(ただし、勤続によって経験を積むことで、ゆっくりとではあるが基幹
的な業務に携わるようになったり、昇進・昇格したりすることが多かった)。
また、いわゆる「総合職」であっても、入社してすぐの若手は入門的に補助的
な業務に就いたりすることは普通に行われている。
 こうしてみると、単に雇用期間の定めがないだけではなく、企業の側が積極
的に長期勤続と企業活動への強い関与(程度の差はかなりあるが)を期待して
いるのが「正社員」だ、ということになりそうだ。これは結局、戦前の「正社
員」にかなり近い位置づけだが、「職工一体」でブルーカラーも正社員となり、
長期に熟練を蓄積するようになった点に大きな違いがあるといえるだろう。そ
のため、男性のほとんどは「正社員」となり、雇用者の8割以上が正社員とい
う社会ができあがった。これにより、製造業の現場に知的熟練が集積したこと
で、安価で高品質な製品の輸出を原動力とした戦後日本の経済成長がもたされ
たということには、大方に異論のないところと思われる。

キャリア辞典にもどる
ホームにもどる