キャリアデザインマガジン連載
「キャリア辞典」

「VSOP」

 VSOPといってもブランデーのクラス分けではない。人事担当者の間で言い伝えられている「求められる人材像」とでもいうのだろうか。具体的には、VはVitality、SはSpeciality、OはOriginality、PはPersonalityを指しているといわれる。なるほど、うまく語呂合わせ?したものだ。
 オリジナルはどこにあるのかははっきりしない。岐阜大学応用生物科学部 教授の福井博一氏は、2000年に書いたエッセイ(http://www.gifu-u.ac.jp/~fukui/0703.htm#001212)のなかで「20年前に先輩から聞いた」と述べているので、かなり古くから云われているのだろう。
 福井氏が聞いたもともとの話は「20代はVitality、30代はSpeciality、40代はOriginality、50代はPersonality」というものだったようで、人材の成長パターンを示すものだろう。学者に限らず、ビジネスマンにもよくあてはまりそうに思われる。1995年に経営評論家の牛場靖彦氏が出した「自分のための危機管理学―V・S・O・P人間のすすめ」という本の宣伝文句をみても、「危機管理の達人こそ、ビジネスマンとして成功する。そのために何が必要か。それは、V・S・O・Pの4条件を備え、主体性をしっかり確立することだ」となっていて、ひとつの完成像として捉えられている。
 ところが、千葉商科大学の広報誌「For Tomorrow」の96号(2002年10月1日号)の「インフォメーション」をみると、「…学内において、リクルートワークス研究所の角方正幸氏による講演ならびに同氏を交えたパネルディスカッションが行われ、…講演では、企業が求める人材の能力について、1.課題設定能力、2.コミュニケーション能力、3.集中力の3点を強調しました。また、企業は一般的に、採用人事における慣用語VSOP(Vitality・Speciality・Originality・Personality)により、人物の将来性を判断すると指摘し学生は採用側の認識を新たに、今後の就職活動にとって示唆に富む講演」となった、という記事がある。本当にVSOPが採用人事の慣用語で、企業がこれで人物の将来性を判断しているかどうかは別問題として、この時期には学生に向かってこういう話が語られていたのだ。これは要するに、一時期広く言われていた(いまだに言われているとの声もある)「企業は新卒に即戦力を求めている」という「即戦力幻想」のひとつの現れだったろう。
 もちろん現実には、大学生に企業が求めるようなSpecialityやOriginalityを望むのはいささか酷というものだし、新卒者が将来どんなSpecialityを持つだろうかということが採用時点でわかるとも思えない。多くの企業ではそれを承知のうえで新卒採用を実施しているはずだろう。「即戦力幻想」に振り回されて就職活動に追われた当時の学生さんたちは気の毒だったとしか言いようがない、といったら大げさだろうか。
 ところで、サントリーのホームページによると、ブランデーのVSOPの意味するところはVery,Superior,Old,Paleで、最後のPaleというのは「『透きとおった』という意味。透明感のある琥珀色に由来する熟成感の高さをあらわしている」のだそうだ。考えようによっては、これも人間の成熟のひとつの理想に近いといえるかもしれない。

キャリア辞典にもどる
ホームにもどる