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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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            平成12年2月10日発行
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      <<<【書評】幻想のグローバル資本主義/佐伯啓思著  >>>

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佐伯啓思著

「幻想のグローバル資本主義」
上:アダム・スミスの誤算
下:ケインズの予言

php新書

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 最近、いろいろなところで、「グローバル資本主義の中では、株主重視の経営がグローバル・スタンダードであり、過剰な従業員は、解雇もふくめてどんどん削減すべきだ。それで失業率が上がるとしても、その方がかえって構造改革も進展する」という意見を聞く。どうも釈然としない、乱暴な議論に思える。
 そんな気分で、佐伯啓思「アダム・スミスの誤算/幻想のグローバル資本主義(上)」、「ケインズの予言/同(下)」を読んだ。
 著者は、アダム・スミスとケインズという巨人の膨大な文献に正面から相対し、通説にとらわれずに自身の視点から解題を試み、それをふまえて現代の「グローバル市場経済という幻想」を解き明かして見せる。社会思想家としての力量の確かさがもたらす、飛ばし読みを許さぬ迫力がある。
 そして著者は、金融と資本のグローバル市場の膨張が、実体経済と国家経済を従属させるという奇妙な転倒と、これが「市場の声」を通じて国家と人々の生活に大きな混乱を与えるメカニズムを分析してみせる。これは、数年前に発生したアジア各国の通貨危機とそれに続く経済危機などで現実になっている。
 市場経済の重要性に懐疑的になることはないし、経済成長を悲観しなければならないこともあるまい。市場原理や自由競争のもつ活力を上手に生かすことで、まだまだ経済成長は可能である。問題は、いかに上手く、人間のためにこれを生かすかという、人間の知恵である。
 結局のところ、企業経営とは、グローバル・スタンダードとか、市場の声とかいったものに惑わされることなく、信念をもって行われなければならない、ということなのだろう。そういう意味では、漠然と感じていた疑問に確かな回答を与えてくれる本である。
 
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