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*** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成12年12月11日発行 通巻021号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 「it先進国」インドのit労働事情 >>> =================================== このところ、it技術者が世界的に不足していること、インド人it技術者 は非常に優秀であり、米国やドイツがその受け入れのためにさまざまな優遇措 置を講じようとしている、といったことがたびたび話題になります。 実際問題、インドでは、it技術の有資格者が年に18万人近くも誕生して いるということです。わが国の情報処理技術者資格取得者が、昨年・一昨年は、 第一種・第二種あわせて、各年9万人前後でしたから、その2倍ということに なります。もっとも、インドの人口は日本の8倍、しかも毎年約2000万人 増加していて、いずれ中国を抜いて世界一の人口を有する国になる可能性があ るというのですから、この数字もそんなに驚くほどのことではないのかも知れ ません。 昨年は、政府に「it省」もできたということで、インドでのit熱は高ま る一方という状態のようで、日経新聞などを読むと、数年後には、インドがi t革命の勝者となって、バラ色の成功を収めるのに対し、日本は「このままで は」敗者となって衰退の一途をたどる、と云わんばかりの書きぶりです。 その一方で、先日の読売新聞によれば、インドの全人口の44%は一日の収 入が1ドル以下という貧困層であり、2ドル以下だと66%にも達するそうで す。 もちろん、物価水準などの違いもありますから、そのまま日本やアメリカと 比較することは無理ですが、それでも、it関係の教育を受けるには、6ヶ月 の短期コースでも約700ドルは必要ということですから、それだけでも、あ る程度の上層階級でなければ難しい、ということになります。現実には、年収 3000ドルくらいの人(商店主くらいのイメージですが、それでもインドで はけっこうな上層階級)が、借金をして子女にit教育を受けさせているとい うのがブームの実態のようです。 それで、それに見合った職が得られればいいわけですが、現実には、月収 20ドル程度の仕事しかない、というのが最近の実情とのことです。 インド国内でもインターネット利用者は急増しており、マイクロソフト・イ ンディア社によれば「現在、インド人のインターネット加入者の大半はインド 国外にいる」が、「国内ユーザーは毎月100%ずつ増加している」とのことで す。毎月倍々ゲームで増えるということは、要するにまだ非常にわずかな、か なりのお金持ちだけが使っているということだろうと思うのですが、お金持ち が使っていればそれなりに商売になることも事実です。そのため、インドでは、 昨年の今頃から爆発的にeコマースがブームとなり、多くのドットコム企業が 誕生しました。ところが、アメリカや日本だけではなく、インドでもご多分に もれず多くの企業が破たんし、あるいは縮小を余儀なくされました。その結果、 今となっては、短期コースを受講した程度のレベルの技術者では、求人倍率が 3分の1倍程度という大幅な過剰になってしまっているのだそうです。 人口が増えれば求職者も増えるのは自明の理で、it技術が就職に有利とな ればその取得に熱心に取り組む人も増えるのが当然ですが、それで確実に就職 できるかとなると、結局は需要があるだけしか就職できないのも当たり前のこ とです。 2年以上の本格的な教育コースを受け、良好な成績を収めれば、かなりのい い仕事に就ける可能性はかなり高くなるようです。javaやhtmlなどを はじめ、相当本格的な教育を受けられるとのことですが、こちらは年1500 ドルの受講料が必要とのことで、これを負担できる学生は非常に限られてきて しまうとのことです。 しかも、it教育業者がまた過当競争で、小規模な専門学校はディスカウン トを迫られ、教育内容も低レベルになっているとのこと。それでも、より収入 の少ない家庭の子女が、やはり借金をしてそういうディスカウントのコースを 受講しており、就職難に苦しんでいるといいます。 一方で、国立工科大学で学べるような才能と財産とに恵まれた学生たちは、 非常に優秀なit技術者となりますが、その多くが海外に流出しています。一 流の工科大学の中には、卒業生の過半数がアメリカに渡っているという大学す らあると言います。そうした技術者たちが、シリコンバレーの隆盛に大きな役 割を果たしているわけで、シリコンバレーのハイテク企業の4分の1は移民が 経営しており、98年に設立された企業の30%は、インド人か中国人によっ て起業されています。こうした事実が、さらなる外国人技術者受け入れを求め る声につながっています。 なんでも、インドでは、シリコンバレーで活躍する若い技術者と結婚するた めのお見合いサイトまで出現して、活況を呈しているとか。もともと、なにか と結婚相手選びに制約の多いインドでは、結婚のほとんどは見合いであり、新 聞の日曜版には、お相手募集の広告が大挙掲載されて、新聞を買えるような階 級の人たちの結婚相手探しに大いに役立っているのですが、インターネットで あれば、居ながらにして、米国で活躍する前途洋々たる青年とのお見合いも可 能、という寸法です。インドのeコマースが苦戦する中で、すでにこうしたサ イトが1000をこえたということですから、いかにそのニーズがあるかがわ かります。 これでもわかるように、シリコンバレーのインド人技術者は、いずれ母国に 戻ることを前提に考えている人がそれなりに多く、それが、インド政府が、彼 等の出国を寛大に見てきた理由のひとつでもあります。彼等が帰国すれば、米 国の最新技術が移転されることが期待できるわけです。もちろん、米国にずっ と止まることを希望する人も多いわけですが、彼等からの母国への送金は、イ ンドにとっては貴重な外貨の獲得ですから、それはそれで結構だ、ということ でしょう。 ところが、最近、ついにインドでも、政府は技術者の海外流出を規制する方 針に転換しつつあるそうです。インドでもit化はどんどん進展しており、初 級レベルの技術者が過剰な一方で、優秀な先端技術者は不足しています。優秀 な技術者がいかに活躍するかによって、初級・中級レベルの技術者の仕事も増 えるかどうか決まってくるわけです。もちろん、優秀な技術者にとっては、国 内より、アメリカ企業の処遇の方が魅力的であることが多いわけですが、現実 に、優秀な技術者を育てるためには、相当の国費が投入されていることも事実 ですから、国内で不足している以上、そうそう勝手に出ていかれても困るとい うことになってきたのでしょう。 そうなると、国費を投じて育てた技術者を、外国企業が札束でひっぱたくよ うなやり方で引きぬいて行くことが、いくら本人が望んだとしても、道義的に どうなのかという問題もありそうです。 日本政府は、アメリカやドイツの動向を見て、それならわが国もとばかりに、 インド人技術者の来日優遇を考え始めているようですが、結果として大恥をか くことにならないよう、気をつけてほしいものだと思います。また、技術者が 足りないと云っている企業も、安易に海外に頼るというのはいささかモラルハ ザードの感があります。まずは、自前での育成に努力するのが筋というもので はないでしょうか。 (次回は12月14日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(id=0000049801) ◆このメールマガジンは、労働ロビイストの作者が、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。 不定期刊ですが、おおむね毎週発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659 の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。その際は、「労務屋の労働雑感」からの転載・ 引用であることと、まぐまぐのid(0000049801)の記載をお願いします。 =================================== |