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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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        平成12年11月08日発行 通巻007号
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       <<< 米国のit技術者は本当に不足なのか >>>

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 アメリカの就労ビザの一種に、h−1bビザというのがあります。外国人で
なければできないような高度な仕事に従事させるために、企業が申請して取得
させる一時就労ビザで、米国の現地法人に駐在員を送る仕事をしている人には、
eビザほどではないにしても、なじみの深いものでしょう。
 このビザは総量規制が行われているほか、米国人の雇用を代替しないように
ということで、かなり厳格な審査が行われるため、なかなか下りないことでも
悪名高いのですが、今、その総量規制を大幅に緩和するという法案が米議会に
提案されて、反響を呼んでいるそうです。
 具体的には、要するにit先端技術者の確保ということで、インドをはじめ、
ヴェトナムや中国なからどのit技術者の受け入れ枠を増やそうという趣旨の
ものです。すでに昨年、総枠を65,000人から115,000人に引き上げたのですが、
それでも足りず、今度は230,000人にまで増やそうというのですから、大変な
勢いです。
 この法案については、技術者不足に悩んでいるというハイテク業界が成立を
切望しており、共和党・民主党とも、有力な資金源となりうるハイテク企業を
取り込もうと考えている点は共通しています。民主党の支持母体である労組が
外国人労働力の流入に難色を示していることなどのほかは大きな相違点はなく、
なんら問題なく可決するとの見通しだったのですが、黒人、マイノリティーの
労働団体から反対の動きが出てきて、ちょっとした波乱となっているようです。
 おもに黒人技術者を組織しているシリコンバレー公正労働組合によれば、今
現在でも、マイノリティー技術者まで含めれば、米国内の需要を満たすために
十分な人数のit技術者が存在するとのことで、今回のh−1bビザの拡大は、
マイノリティーをこの市場から排除して、安価な外国人技術者に代替しようと
する意図を持ったものであると抗議しています。
 この主張の当否は別として、ハイテク産業においてもマイノリティー差別が
存在することは事実のようで、昨年米国労働省がシリコンバレーのit企業を
調査した結果、15%で明らかな差別が認められたほか、40%以上の企業で、
政府調達参加のため義務づけられているマイノリティー雇用計画が策定されて
いなかったという実態があるとのことです。
 もちろん、米国経済界は、マイノリティー技術者の技術水準は低いと主張し、
外国人技術者の導入は必須として、この法案の成立を切望しているわけであり、
今のところ法案成立は確実ということですが、経済界の方もそれと引き換えに、
マイノリティーの雇用状況のチェックを厳しく受けるようになるなどの代償は
支払わなければならないだろうということです。ちなみにクリントン大統領は、
この法案の成立を期して、「中米出身の不法滞在者の永住権を認める」という
項目を、共和党の反対を押し切って導入したそうです。

 経済界とマイノリティーのどちらに理があるのかは判然としませんが、現に
差別の事実があるというのは経済界にとって痛いところですね。アメリカ人の
雇用を守るとは云っても、それは白人の雇用という意味であって、白人と同じ
賃金でマイノリティーを雇うくらいなら廉価な外国人を、というのが、本音の
部分ではあるのでしょう。
 シリコンバレーの中心であるカリフォルニア州サンタクララ郡の人口構成は、
白人51%、ヒスパニック23%、アジア系22%、黒人4%ということです。
カリフォルニア州全体では白人51%、ヒスパニック31%、アジア系12%、
黒人8%ということですから、たしかにシリコンバレーでは、ヒスパニックと
黒人がアジア人にとってかわられていることは事実のようです。
 企業の云うように、マイノリティや黒人の技術水準は低いかも知れませんが、
「シリコンバレーでは、人種・国籍の区別なく技術者が活躍している」という、
わが国の一部で報じられ、信じられている神話が虚構であることがよくわかる
エピソードであると思います。

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