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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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            平成12年5月26日発行
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         <<< 解雇の規制緩和は進んでいるか? >>>

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 先月18日、日本労働弁護団(旧総評弁護団)が東京地裁労働部の 判事に対し、最近の判決において、いわゆる「整理解雇の四要件」が 緩和されているとして、抗議したそうです。いわく、最近の整理解雇 事件の判決において、明らかに従来より使用者側に有利な方向に判断 基準を変更しようとしている、とのことです。

 使用者側に有利な方向であることに抗議するというのも、なんだか 変な感じがしますが、本当に整理解雇の四要件は緩和されつつあるの でしょうか?

 日本労働弁護団が批判している判決(決定)の一つに、ナショナル ウェストミンスター銀行事件があります。これは外資系の銀行ですが、 ある部門を廃止した際に、その部門の従業員に、割増退職金を受けて 退職するか、別部門に配転して、降格・減給して勤続するかの選択を 求め、従業員が、これに対して配転は呑むが、降格・減給については さらに交渉したいと云ったところ、銀行側は交渉の余地はないとして 解雇したというものです。
 決定は、この銀行では職務給制度をとっており、長期雇用が中心の 日本企業とは異なっており、従業員もそれを承知で入社していること、 当該部門の廃止の必要性があり、従業員はこの部門では現在の職務に つくだけの能力があるが、別部門では同等の職務につくだけの能力は なく、また、現に別部門には同等の職務の空きポストがないことから、 割増退職金と降格・減給の選択を求めたことは合理性があり、相当の 配慮もなされているとして、解雇は認められると判示しました。

 また、別の事件として、角川文化振興財団事件をあげています。
 この事件は、角川書店が主体となって設立された同財団が、角川の リストラによって編集業務委託を打ち切られたため、それに伴なって 不要となった組織を廃止し、その組織で1年契約の委託勤務していた 14人の労働者を解雇したというものです。
 角川書店は、当該編集業務を、別の100%子会社に、より安価で 発注することとし、当該労働者に、この子会社で、より低い委託料で 1年契約の委託で引き続き働くよう提案しましたが、労働者はこれを 不満として裁判所に訴えたものです。
 決定は、当該労働者は編集業務を委託されてこれに従事するために、 1年契約で雇用されていたものであり、業務がなくなった以上、継続 雇用する理由はなく、解雇は有効と判示しました。そして、労働者が 雇用された目的や雇用形態、解雇理由などを考えると、四要件などを 検討する前提を欠いていると判示しています。

 こうして見ますと、たしかにこれらの判例(決定)は、整理解雇の 四要件に当てはめて判断してはいません。そして、その理由としては、 整理解雇の四要件は、従来からわが国の雇用慣行として成立してきた 長期雇用慣行を念頭においた法理であり、必ずしも長期雇用ではなく、 雇用形態や賃金制度なども長期雇用のそれとは異なり、かつ、労働者 自身もそのことを承知して雇用されているこれらのケースにおいては、 その厳格な適用は行うべきではない、ということのようです。

 したがって、典型的な長期雇用の整理解雇については、整理解雇の 四要件による判断を行うことは否定されておりません。労働弁護団は、 整理解雇の四要件を、あらゆる雇用契約に、あまねく適用されるべき 普遍的な法理であるという立場から、抗議・批判しているわけですが、 そもそも、判例というものは、その事件の時代背景や、社会の変化を 踏まえて判断していくものであり、それが判例法の良さ・長所である わけですから、労働弁護団の抗議は、いささか的外れなような印象は 否めないように思います。

 ただし、丸子警報機事件など、高裁判決でも、四要件を「四要素」 などと表現するなど、昨今の社会環境の変化を取り込んで、厳格さが 若干弱まっていることも事実のようです。また、以前投稿したように、 この規制を緩和すべしとの意見も徐々に多くなっており、電機連合が 「こうした状況では判例法は不安定であり、明文の立法化が必要」と 踏み込んだ発言をするなど、問題意識が高まっていることも事実です。 今後の成り行きが注目されます。
 
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