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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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        平成12年11月29日発行 通巻016号
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 女性少年審議会の女性部会では、「ポスト激変緩和措置」を中心に検討が進
められてきましたが、最近になって公益委員案が提示され、どうやら方向性が
見えてきたようです。
 「ポスト激変緩和措置」というのは、もともと、平成10年の労基法改正で
女性の残夜業の解禁された際に、激変緩和措置として、育児・介護などの家庭
的責任を有する女性は、年間150時間という時間外労働の上限を、平成14
年3月までに限って例外的に残したものをどうするか、という問題ですが、そ
れに加えて、少子化対策として「育児休業の取得促進」をはじめとする「職業
と家庭の両立支援」も検討対象に加わって、盛りだくさんの内容となっていま
した。
 今回の報告では、両立支援の色彩を強く打ち出し、激変緩和措置については
男女とも、家庭的責任を有する場合に請求によって年間150時間を超える時
間外労働を免除されることとしたほか、育児時間の対象年齢の引き上げも盛り
込まれるもようです。
 また、新たに、小学校入学前の子を持つ親に対して、子の病気やけがを理由
に休業する「看護休業制度」も設けられるようで、これについては、育児・介
護休業の例から見て、無給(というか、労使の取り決めによる)になることは
確実でしょうが、日数がどの程度になるのかが注目されるところです。おそら
く、育児や介護ほど企業の負担になる日数ではないと思われますが、これとは
別に、「教育改革国民会議」の中間報告でも、「年次有給休暇とは別の教育休
暇制度を導入する」との提言もされており(もっとも、これは企業が自主的に
導入するという書き方になってはいますが)、休暇制度がどんどん拡大しそう
な雲行きです。
 とりわけ注目されるのは、育児・介護休業の取得を理由とする不利益取扱を
全面的に禁止するという方向性が示されたことです。これまでは、取得を理由
とする解雇が禁止されているのみで、ベアの停止や、昇進・昇格の遅れなどの
取り扱いは禁止されていませんでしたが、今回はすべての不利益取扱を禁止し
ようとしているらしいのです。
 とは云え、育児休業で1年休む、2人生めば2年まで休めるわけで、その間
働いている人とでは、当然、成果や能力に差がでてくるでしょう。それにもか
かわらず、同期と同じように昇格させなければならないというのは、考えてみ
ればおかしな話ではあります。能力も成果も明らかに劣る人が、育児休業を取
得したからと云って昇格したのでは、社内のモラルがもたないかも知れません。
 そういうことを避けるためには、昇格は勤続年数ではなく、能力や成果を評
価して、それを基準にして実施する、という制度・運用にすれば、おそらく大
丈夫だろうと思われます。当たり前のことじゃないか、と云われるかも知れま
せんが、実はそんなに当たり前でもないのが実態なのです(だから、女少審で
も問題になるわけです)。
 このところ、能力・成果重視の人事制度の導入がさかんですが、それでも、
大半の企業は、ホワイトカラーの定期採用者については、同学歴であれば、入
社後5〜10年の間は、賃金や賞与では差がついても、昇進・昇格には差がつ
かず、平均して入社後8年くらいで初めて昇進・昇格の差がつくという運用に
なっているようです。問題は、育児休業(昇格の問題が出るほど長期にわたり
休業するのは、現実にはほぼ育児休業に限られるでしょう)で休んだ場合にも
同期と同じように勤続年数で昇格させるかどうかですが、これは昇格させる企
業もあれば、させない企業もあるようです。
 一律に昇格させるのであれば、不利益取扱の問題も生じないわけですが、問
題は昇格させない場合で、「休業したので成果はなく、能力の伸びも止まって
いる」と主張しても、同期は全員昇格しているのに、育児休業取得者だけが昇
格していないとなると、育児休業取得を理由とした不利益取扱として違法とな
る可能性があるわけです。
 これは、結局のところ、若いあいだは差をつけずに一律に勤続年数で昇格さ
せる、という制度・運用になっているからこのような問題が出てくるわけで、
またひとつ、能力・成果主義の拡大を迫る要素が増えたということになりそう
です。少なくとも、限りなく一律に近い運用をするにしても、育児休業取得を
昇格不適格の理由にしない、育児休業以外にも相当数の不適格者の昇格を見送
る、育児休業取得者でも能力的に昇格に耐えるものは昇格させるとかいった配
慮は必要になってくるということでしょう。考えて見れば、能力・成果重視と
いうことを云うのであれば、そうするのが当然と云えば云えるかも知れません。
 とは云え、現実にやろうと思えば難しい話で、特に、コース別人事制度の企
業では、いわゆる一般職(事務補助職)コースでは「差をつけない」ことが労
務管理上好ましいと考えられていることも多く、しかも育児休業を取得するの
は現実にはいわゆる一般職に多いわけで、かなり悩ましい問題をつきつけられ
ているのかも知れません。何も考えずに一律にやると決めればそれでいい話で
はあるのですが。
 いずれにしても、まだ部会の段階なので、これから労使でさまざまな綱引き
があるでしょう。今後の審議が注目されます。

                  (次回は11月30日に配信します)
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