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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成12年12月18日発行 通巻023号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 今年の「採用・選考に関する倫理憲章」 >>> =================================== 今年も、日経連が「新規学卒者の採用・選考に関する倫理憲章」を、大学等 の「就職問題懇談会」が「卒業予定者に係る就職に関する要請」と「申合せ」 を発表しました。 いわゆる「就職協定」が平成8年に廃止されて、その代わりに「倫理憲章」 と「要請・申合せ」が発表されるようになって、すでに5年めということにな ります。 新規学卒者の就職に関しては、優れた人材を早期・確実に獲得したい企業サ イドと、選考活動やその後の「拘束」などで学業・学事が妨げられることを懸 念する学校サイドとの間で、古くから問題意識が持たれており、昭和27年に はすでに文部省が一種のガイドラインを示しています。その翌年には、早くも 大学、日経連、文部・労働省を中心とした「就職問題懇談会」が発足し、推薦 開始を10月1日とする「就職協定」がスタートしました。 この当時から、就職協定は特段の強制力を持たない「紳士協定」であったた め、「紳士協定を守らない紳士」が多数存在したため、昭和37年に日経連が 就職協定の廃止を宣言し、いったん就職協定は中断します。 その後は、大学だけによる「申合せ」で日程を決めてはいたのですが、効果 はほとんどなく、採用の早期化がエスカレートし、大学3年生での内定は当た り前、大学2年生にまで企業の「青田買い」の手がのびるという事態に至った ことから、昭和47年には、7月1日(もちろん、4年生の)選考開始の就職 協定が復活、昭和51年には10月1日企業訪問開始、11月1日選考開始と なります。 この協定も、当初から有名無実で、昭和56年には、青田買いや拘束などへ の世論の批判を背景に、今度は労働省が協定からの離脱を宣言しました。 その翌年からは、官庁を含まない、大学と企業による協定づくりの模索がは じまり、昭和61年には、8月20日会社訪問開始、11月1日内定解禁とい う、大学と企業による就職協定が再スタートしました。平成4年には、選考開 始が8月1日前後目標、内定解禁は10月1日に変わっています。 ところが、この協定も、相変わらず協定破りの問題をひきずりました。やは り紳士協定で拘束力が弱かった上に、そもそも協定自体が「就職協定遵守懇談 会」参加企業しか拘束しないという基本的な問題もありました。この懇談会は 昭和61年に52社で発足し、平成8年には312社までメンバーを増やして いましたが、それでも全国の新卒採用者数の約1割しかカバーできていません でした。また、水面下では、社員の自主的な行動を建前に、いわゆるリクルー ター活動による事実上の採用活動が行われるなど、協定の有名無実化ははなは だしく、平成8年、当時の日経連の根本会長は、「正直者がバカを見る協定は 無意味」として廃止を主張。平成9年度の採用からは、現状の「倫理憲章」と 「要請・申合せ」のセットによる活動に変わりました。 こうして見ますと、就職協定はおおむね10年単位で成立と廃止を繰り返し てきており、今年は最近の廃止から5年目なので、これまでのパターンから予 測すれば、あと5年はこのままかも知れません。 企業倫理に関しては、リクルート事件や証券不祥事などで企業への批判が高 まったことを受け、平成3年には「経団連企業行動憲章」が策定されるなど、 この10年、特に世間に注視されていますが、どういうわけか就職協定破りに 関しては今一つ批判も弱く、なかなか実効があがりません。これは、本来なら こうした約束違反を批判すべき立場にあるマスコミが、先頭に立って協定破り (というか、マスコミは「遵守懇談会」に参加していないので、正確にいえば 協定破りとはいえないのですが)をしているというのも一因かも知れません。 実際、テレビ局は、在京のキー局はかなりの割合で3年生のうちに選考を終了、 新聞社や出版社も、全国紙や大手は4年生の5月には事実上終了といわれてい ます。業界のヒエラルキーの中で、地方や中堅が他業種の大手と渡り合ってい くためには必要なことなのかも知れませんが。 いずれにしても、就職協定廃止以降、就職活動が早期化したことは間違いの ない事実のようで、学生は夏休みころには就職を意識しはじめ、11月には新 卒向け就職情報誌が出まわったり、インターネット募集・応募のサイトが立ち 上がったりして実質的にスタート、2月から3月には会社説明会が開催され、 4月から5月には内定のピークを迎えるというのがこの5年間のパターンで、 しかも、内定のピークは毎年1週間くらいずつ早まっているということです。 その一方で、昨年度の実績を見ると、最終(4月1日時点)での大卒の内定 率は91.1%ですが、建前の内定解禁日(すなわち、かつての常識では事実 上の終了日)時点では63.6%、12月1日時点では71.4%ですから、 実に年末以降で2割が決まったことになりますので、早期化と長期化の双方が 進んでいることになります。 いずれにしても、早期化に対しては学校を中心に世論の批判も高まってきた ようで、教育改革国民会議の中間報告の中にも、「就職活動によって大学の教 育が妨げられぬよう、採用活動時期を遅らせたり、成績表の提出を求めるなど 大学での成績を踏まえた採用を行うよう強く求める」との文言が出てきます。 こうした世論に配慮してか、今年の「倫理憲章」は、わざわざ一項を設けて 「採用選考活動早期開始の自粛」をうたい、「特に卒業学年に達しない学生に 対して実質的な選考活動を行うことは厳に慎む」としています。平成8年に現 行のスタイルが始まって以来、「倫理憲章」の内容は毎年ほとんど変わってい なかっただけに、今年はわざわざ踏み込んだ言及が行われたことは注目されま す。来年の企業の採用活動がどう変わるのか見物です。 その一方で、上智大学教授で、日本経済研究センター理事長の八代尚宏氏は 「自分の経験として、就職が決まった後の方が、学生は就職先を意識して、か えって勉強するようになる。3年生くらいの段階で就職が決まった方が、学生 にとっては4年生の1年間、自分に役立つ勉強をしっかりできるという考え方 もあるのではないか。また、高校卒の場合は、一生のことである就職のほうが 高校3年生の勉強より大切なのが当たり前であり、進学しない3年生は1年間 かけてじっくり就職活動をした方がいいのではないか」などと発言されている そうです。かえって早期に就職が決まった方がいい、という意見も、少数なが ら出てきていることも事実です。 過去の経験からすれば、あと5年後にはまた協定が復活するということにな るかも知れませんが、どんな成り行きをたどるのか注目されます。 (次回は12月21日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(id=0000049801) ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の立場で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。 不定期刊ですが、おおむね毎週1回以上発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659 の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。その際は、「労務屋の労働雑感」からの転載・引 用であることと、まぐまぐのid(0000049801)の記載をお願いします。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |