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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成13年04月02日発行 通巻051号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 直接償却と雇用対策 >>> =================================== ここにきて、にわかに、不良債権の最終処理、いわゆる「直接償却」を促進 すべきとの意見が勢いを増してきました。それにともなう失業の多発が心配さ れるところです。最終処理にともなう雇用対策をどのように進めるべきかを考 えてみたいと思います。 まず前提として、労働力の流動化とか、構造改革による新規雇用創出とかい う方法は、時間がかかりすぎるため、間に合わないということがあります。ま た、仮に労働力が流動化しているとしても、現在は圧倒的な求人不足であり、 失業者は労働市場に滞留するだけで、現実には流動しないでしょう。 したがって、まずは失業をなるべく出さないようにすることが、基本的な考 え方にならざるを得ないと思われます。すでにすでにデフレ状態にある日本経 済において、さらに一気に多数の失業が出ると、所得の減少や予備的動機の貯 蓄を通じて一層の消費の減退を招き、デフレを深刻化させ、回復困難なダメー ジとなる危険性が高すぎます。 もちろん、現実には、どうしても法的整理の道を採らざるを得ないこともあ るでしょうし、その場合は多数の失業の発生は避けられません。したがって、 極力法的整理を回避し、私的整理においてもなるべく失業が発生しない再建計 画を策定すべきと考えます。この場合、金融機関の債権放棄額は大きくなり、 追加的な公的資金の投入が避けられなくなる可能性が高いわけですが、失業の 発生を抑制するためであれば、国民の理解は比較的得られやすいと思われます。 具体的には、再建計画の策定にあたっては、労使間でも十分な話し合いを持 ち、失業を抑制するための努力として、賃金の引き下げや、賃金ダウンをとも なうワークシェアリングなどにも取り組むことが求められるでしょう。 また、金融機関サイドのリストラにも、強力に取り組む必要があると思われ ます。そもそも、不良債権処理が進まないのは、銀行の収益力が弱く、不良債 権処理を進める体力がないことが大きな一因です。これだけの低金利にもかか わらず利益が十分出ないのでは、リストラが不十分であると言わざるを得ない わけで、銀行の自助努力は絶対的に必要と考えます。 次に、失業が発生する場合は、転職の容易さや、転職に伴う技能の損失の少 なさなども、考慮する必要があると思われます。例えば、銀行員などは、基本 的に能力が高く優秀な人が多いわけですし、職業能力、ノウハウも、銀行によ る違いは少なく、汎用性があります。さらに、金融自由化により、異業種の銀 行業への参入や、外資の進出も相次いでおり、基本的に金融は成長産業です。 したがって、ある程度の賃金ダウンは致し方ないとすれば、銀行は思い切った 雇用削減を進めても、影響は小さいと考えられます。他にも、例えば建設業の 現業部門などは、もともと流動性の高い職種であり、勤務場所の移動(おもに 地方から都市部への)が可能であれば、外国人労働者との代替などにより、数 字に現われている以上の転職可能性があると思われます。これについては、転 居の支援などの施策が必要でしょう。逆に、失業すると大幅に技能レベルが低 下する職種、例えば製造業の現業部門などは、極力失業させないようにするこ とが技能の低下を防ぐという意味で効率的でしょう。 もう一つ重要なこととして、他の健全な企業との均衡に十分配慮して再建計 画を策定しなければならないと思われます。債権放棄を受け、雇用をスリム化 して身軽になった再建企業が、それをいいことに安売りを始めたら、これまで まじめに債務を弁済し、懸命に雇用を維持しながら、なんとか健全な経営を維 持してきた企業が、大きくバカを見ることになります。これはさすがに不公平 と言わざるを得ませんし、現実にそんなことが起きた場合は、競争上の必要か ら健全企業から二次的な失業が発生してくる危険性があります。 とはいえ、このように、失業を最低限に抑制する努力をしても、かなりの失 業の発生は避けられないと思われますので、新産業の登場や景気の回復により、 新規雇用が出てくるまでの「つなぎ」を考える必要があります。 失業給付の延長や、職業訓練の一層の充実といったセーフティー・ネットの 拡充が、まずは考えられますが、失業給付は基本的にコストである上、いずれ は切れるものですし、職業訓練は投資という面はありますが、再就職に必要な 技能を予測することが難しいなど、こうした施策は、コストや効率の面で限界 があります。さらに、失業期間の長期化によって、技能水準の低下やモラルハ ザードの発生など、人的資源が劣化する恐れもあります。 したがって、具体的な雇用の受け皿を早急に準備することも、同様に重要で はないかと思われます。行財政改革の流れに反するという批判はあるでしょう が、不良債権の最終処理を進めるというきわめて特殊な状況下においては、時 限的に公的な雇用を作るという施策も除外すべきではないと考えます。 もちろん、それは従来型の失対事業的側面を持つ公共事業の継続であっては なりませんし、不要な公共事業はむしろ削減することが、直接償却促進の趣旨 にも一致しています。 それに対して、公共サービスの分野を中心として、本当に必要なのに実施で きていない仕事もあるのではないでしょうか。たとえば、今後、電子政府を作 るにあたって、全国的な土地登記の区画の整備、具体的には不確定な境界線の 確定や、二重登記や登記の空白の整理を行う、いわゆる「平成の検地」必要だ、 という意見は以前からあります。これなどは、住宅地図の会社が受託して、そ のノウハウを活かし、有期契約の従業員を教育して従事させればよさそうに思 われます。この他にも、潜在的にニーズのあるサービスは、相当程度あるので はないかということで、現在、経済財政諮問会議の専門委員会でも、5年間で 500万人を目標に、サービス産業での雇用拡大を検討しているそうですが、 そういうところから出てきたアイデアを、当面は公的サービスとしてでもいい ので、どんどん実施に移していってはどうかと思います。もちろん、そのまま 固定化するのはまずいので、雇用情勢の改善や、最終処理の一段落を待って、 基本的に打ち切るか、事業として成り立つものは民営化すればよいわけです。 また、失業の発生を抑制することで、相対的に若年層の雇用機会が減少し、 新卒就職が一層厳しくなったり、若年失業が増加したりする恐れがあります。 これに対しても、民間による雇用の増加が期待しにくい現状では、公的部門で の雇用を増やすことも、考える必要があるのではないでしょうか。警察官や医 療スタッフ、介護スタッフ、教育スタッフ、あるいは徴税吏など、公的部門で 人員が不足していると言われる仕事はたくさんあります。これらはいずれも、 若者がその能力を身につけ、長期間従事するに値する仕事でしょうし、若年者 であれば、難易度の差はあれ、それぞれの職業に必要な訓練のコースに乗って、 就職していくことも可能でしょう。具体的なやり方は工夫が必要だろうと思い ますが、現実に不足しているわけですし、民間がダメな時は行政で採用しても らうことも必要だろうと思います。 こうした中で、最も警戒すべきなのは、最終処理にともなって失業が増加し た結果、失業が当たり前になり、解雇に対する免疫がなくなって、いわば便乗 解雇が横行することではないかと思います。そうなりますと、かつて、オイル ショックに伴う便乗値上げが狂乱物価を招いたように、スパイラル的に失業が 拡大し、セーフティー・ネットが破たんして、社会全体が便乗解雇のためにメ ルトダウンする危険性すらある、というのは心配しすぎでしょうか。 すなわち、失業の抑制には、再建企業だけではなく、企業社会全体で取り組 んでいく必要があり、最終処理にともなって相当の失業が発生したとしても、 それは企業や経営者の雇用確保に対する社会的責任をいささかなりとも軽減す るものではない、ということを、改めて徹底することが必要になるのではない かと思います。 (次回は4月05日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659 の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。その際は、「労務屋の労働雑感」からの転載・引 用であることと、まぐまぐのid(0000049801)の記載をお願いします。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |