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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成13年06月21日発行 通巻071号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 米国のコミュニティ・カレッジ >>> =================================== 雇用失業対策のひとつとして、職業訓練の強化が必要だと言われていますが、 その具体的な施策として注目されているのが「コミュニティ・カレッジ」です。 米国で、コミュニティ・カレッジが社会人向け職業教育の場になっていること から、先日公開された経済財政諮問会議の「骨太の方針」素案にも織り込まれ ています。 アメリカのコミュニティ・カレッジは、2年制で、卒業するとassociateと いう学位を取得することができます。1999年現在で全米に1132校あるといわれ ており、約550人が学んでいるとされています。その内訳は、1995年の調査に よれば、57%が女性、28%がマイノリティで、平均年齢は32歳となっています。 歴史的には1900年代の初めにさかのぼるものですが、急速に拡大したのは1960 年代の後半から70年代にかけてと言われています。 入学資格は高等学校卒業程度とされていますが、18歳以上の米国民であれば、 誰でも、学区内のコミュニティ・カレッジには無試験で入学できるという「オ ープン・アドミッション」方式が採用されています。米国民以外については、 無試験というわけではありませんが、英文によるエッセイの提出と面接試験程 度で入学が認められるケースがほとんどということで、後述するように4年制 大学への編入もできることから、米国留学の手頃な入口として日本人の入学も 多いようです。ちなみに気になる学費は5000〜8000ドル/年くらいとか。 その教育内容も多岐にわたっています。基本的に地域に密着した学習機会を 提供するというのが趣旨ですので、地域独特の内容が多いというのも一因です が、学校にかなりの裁量の余地が認められているため、学生サイドのニーズに あわせて、各学校がいろいろとカリキュラムに工夫をこらしていることも大き な特徴と言えます。 具体的にはおおむね4分野の教育が行われているとされており、その第一が、 一応コミュニティ・カレッジの本来の趣旨ということになるのだと思いますが、 生涯教育です。地域の一般社会人向けの教養講座で、日本で言えば市民大学講 座からカルチャー・センターのイメージということになるのでしょうか。学区 内住民には無料で提供されることも多いようです。 第二が、今注目されている職業教育です。地域における地元産業界のニーズ を踏まえた教育コースを準備していることが大きな特徴で、地元の大企業との 提携コースや、地元企業におけるインターンシップ(co-opプログラム)など を実施しているケースも多数あります。内容的には、日本の工業高校・商業高 校レベルから、もう少し進んだところくらいのイメージと云われます。企業に とっては、公共の費用と施設で必要な技能を持つ主として中堅技能者を養成で きますし、自治体にとっても雇用の安定・改善に資するという、それぞれにメ リットのある取り組みと評価できると思います。jtpa(job training program act)という職業訓練支援制度による国の通学援助も行われています。 第三が、大学の前期課程です。コミュニティ・カレッジで、4年制大学への 転入に必要な全ての単位を取得すれば、4年制大学への転学が可能となり、大 学においても、コミュニティ・カレッジで取得した単位数は通算することがで きます。英語力の問題などで、いきなり4年制大学への留学が難しい場合など は、まずはコミュニティ・カレッジに入学し、語学力を高めながら転入に必要 な単位を取得していくことができるわけです。 第四が、補習教育です。コミュニティ・カレッジは一応高校卒業程度の学力 を前提としていますが、入学は無試験のため、現実には文盲者や、中等教育未 修了者の入学も多いことから、いわゆる「読み・書き・そろばん」レベルのリ テラシー(3r=reading,writing,arithmeticと言うそうです)を教えるとい う教育も行われています。 教育機関としての評価は分かれており、高所得層=4年制大学、低所得層= コミュニティ・カレッジという構造は事実として強まっていることから、社会 の階層構造を固定化するものであるという批判がある一方で、補習教育がアジ アや中南米からの移住者の最初の受け皿となっていることや、職業教育による 処遇や能力の向上が、階層間移動のチャンスを拡大していることなどを高く評 価する意見もあり、必ずしも定まっているとは言えないようです。 職業教育機関としての評価を見ると、修了後の就職実績などは良好なものが あるようです。特に、企業との提携コースなどのパフォーマンスは良好なよう ですが、これは裏を返せば、好況期には企業の求人も多く、採用も多いが、不 況期にはその逆になる可能性もあるということで、不況期にどのようなパフォ ーマンスを示すかはこれからの課題と言えそうです。また、職業訓練それ自体 が役立っているかどうかについては、jtpaの評価は必ずしも良好なもので はないことを合わせて考えると、むしろコミュニティ・カレッジを修了した、 associateの学位を持っている、ということのシグナル効果が、就職に有利に 働いているのではないかと推測されます。 こうして見ますと、アメリカのコミュニティ・カレッジをそのまま日本に持 ち込むのではあまり効果が見込めそうにありませんが、しかし、参考とすべき 点も多いように思います。具体的には、学費が安価であること、そして、現実 の労働需要を踏まえた教育がなされていること、もう一つ注目すべき点として、 中堅技能者の育成を主眼におくことで、企業外ではなかなか養成されにくい種 類の職業能力を養成しているのではないか、ということです。 わが国の教育行政ははなはだしく硬直的ですから、大学や短大相当のコミュ ニティ・カレッジを作ろうという話になると、なかなか進まないことは覚悟す る必要があります。また、労働需要をふまえた教育訓練、などと云っても、労 働需要そのものがないような状況では、成り立ちようがないという問題もあり ます。こうした中での一つのアイデアとして、現行の職業高校の職業科の授業 を、社会人に開放するということが考えられます(職業科がどこまで役立つか、 という問題はありますが、ここでは一応おきます)。既存のノウハウや教材、 施設などを流用することができるわけなので、コスト的にもかなり有利なので はないかと思われます。それに加えて、教育訓練の内容を、地元の企業から講 師を招くなどして、より現実のニーズにあったものとしていくことで、より役 立つものにできる可能性もあると思います。別々にしてももちろんいいわけで すが、高校生と社会人とが一緒に職業科を学ぶというのも、案外刺激になるか も知れません。 (次回は6月25日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659 の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。その際は、「労務屋の労働雑感」からの転載・引 用であることと、まぐまぐのid(0000049801)の記載をお願いします。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |