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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成13年01月25日発行 通巻031号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< esopと株価対策 >>> =================================== 昨日(24日)の東京株式市場の平均株価は、1万3893円58銭で、前 日終値比91円08銭安で引けました。11日には一時1万3204円まで下 げ、バブル後最安値に迫りましたが、その後8日続伸、2日続落という推移と なっています。戻したとはいえかなり低い水準であり、金融危機再燃につなが りかねないなどとして、株価対策の検討を求める声が高まっています。これは 労務屋とも無縁の話ではありません。 すなわち、この流れの中で、株式市場への資金の流入を促すために、日本版 401kプランの早期実現を求める声が強まっています。さらに、まだ法案が 成立していない現時点ですでに、今のところ非常に限定的な401k優遇措置 の大幅な拡大を求める声も上がっています。 それに加えて、経済同友会は、アメリカのesopにならった制度を、日本 でも導入すべきとの意見を発表しました。 esopとは、employee stock ownership plan の略で、401kが自己責 任で適宜投資するものとされているのに対し、もっぱら自社株に投資する確定 拠出型年金プランです。すなわち、制度としては退職金制度であり、従って原 則的に社員は全員参加となります。具体的には、企業がesopに対して拠出 を行い、それをesopは自社株で運用します。従業員は退職時までこれを引 き出すことはできず、退職時に原則として自社株の現物を受け取ります。もち ろん、それを現金化したり、さらに年金化して受け取ることも可能で、年金化 すれば確定拠出型年金となるわけです。企業の拠出に対しては、賃金の一定割 合(15〜25%)まで損金計上できるという優遇税制があります。 すなわち、ごく大雑把に云えば、ストック・オプションを退職金制度、ある いは確定拠出型年金制度に応用したものと言えると思います。したがって、原 則的に自由参加であり、参加者に対して企業が支援を行う、日本で一般的な従 業員持株会とは、かなり性格の異なるものです。 なぜesopが株価対策として期待されているかと言うと、esopを信託 として設立し、資金を借り入れて一気に自社株を大量購入することが可能であ るからです。つまり、自社株の配当や株価上昇が借り入れ金利を上回れば、レ バレッジ効果で巨額のゲインを得ることができるわけですが、これは巨大な株 の買い手が出現することであり、株価を上げる方向に働きます。もちろん、企 業にとっては安定株主の確保という意味でもメリットがあります。 なかなか面白い制度のように思われますが、はたしてどうなのでしょうか。 株価対策としてどうかというのは労務屋には何とも云えませんが、労務管理の 側面から考えると、いろいろ難しい問題がありそうです。 まず第一に、株価が上がることが大前提の制度ですから(配当だけでも運用 益は出るかも知れませんが、あまり有利ではないはず)、株価が下がったらど うなるのか、という問題は常にあります。一応、退職金という中長期のレンジ で見れば、値下がりリスクは確かに低いだろうとは思いますが、例えば会社が 倒産の憂き目にでもあえば、esopもあげて紙屑に帰すことになり、従業員 は非常に大きなダメージを被ります。そこまで行かなくても、例えば転職しよ うとした時にたまたま株価が下がっていると、かなりの不利益になることは大 いにありそうな話です。 第二に、そのリスクはそもそも労使関係としては企業が負担していた(例え ば、経団連の主張する金庫株の場合は、株価変動リスクは企業が負担)わけで あり、それを従業員に転嫁しようという制度ですから、例えば既存の退職金制 度をこれに置き換えようということでは、従業員の理解を得ることは相当困難 であると思われます。 第三に、株式はかなり流動性の高い資産ではありますが、それにしても現物 支給であるには違いないわけで、従業員としてはキャッシュでの支払に比べて 魅力が劣ることも間違いないでしょう。 そもそも、アメリカでesopが導入された経緯が、ユナイテッド航空とか クライスラーとか云った会社が経営危機に陥ったときに、従業員に対して企業 存続に向かうモチベーションを高めようという趣旨であり、確かにそのような 事態においては有効な施策かも知れませんが、普通であれば自社株の一極集中 などというリスクの大きいことはしないだろうと思います。従業員にとっては、 401kプランの中で、やりたければ100%自社株で運用すればいいだけの 話になるわけですから。 そもそも、株価対策のために退職金制度をどうこうしようという考え方が筋 違いで、どうも根性がよろしくないですよね。まあ、溺れる者は藁をも、とい うことかも知れませんが。 なんでも、経済同友会は年度末には日本版esopの具体案を提言する方向 で検討中とか。おそらくは、熱心なのは証券会社や一部の市場関係者だけでは ないかと思いますが、どんなもんなんでしょうか。 (次回は1月29日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の立場で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。 不定期刊ですが、おおむね毎週1回以上発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659 の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。その際は、「労務屋の労働雑感」からの転載・引 用であることと、まぐまぐのid(0000049801)の記載をお願いします。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |