===================================

          *** 労務屋の労働雑感 ***

+++++++++++++++++++++++++++++++++++
        平成13年02月22日発行 通巻039号
+++++++++++++++++++++++++++++++++++

       <<< 外国人労働力は社会を活性化するか >>>

===================================

 バブル期に大きなテーマとなって、その後沈静化していた外国人労働力の導
入に関する論議が、数年前から再燃しています。その背景は、少子高齢化にと
もなう労働力人口の減少で、移民などの形で外国人労働力を受け入れなければ
日本経済は縮小、衰退するという議論で、そこに最近では、it革命という流
行に乗って、「インド人などの優れたit技術者の導入」という議論が重なっ
てきているようです。その他にも、特定職種での労働力不足対策やら、国際貢
献として受け入れるべきとかいう議論も出てきて、かなり議論は混乱してきて
いるようです。
 とはいえ、ことは外交に関わる問題でもあり、一企業、一業界のエゴで議論
されてはならないことは当然です。発生するさまざまなコストをきちんと把握
し、それを負担した上でなお、外国人労働力の受け入れがわが国と送出国双方
の国益にかなうということでなければなりません。
 外国人労働力と国益ということを考えたときに、アメリカの例などをひいて、
さまざまな人種、民族の人が混ざり合っていることで、社会に活力が生まれる
のだ、ということを言う人がいます。しかし、これは少々短絡的な考え方では
ないかという気がします。
 確かに、ひとつの考え方として、純血種は弱くなりがちであり、混血によっ
て強くなるのが生物というものだ、という意見は、おそらくもっともな説なの
だろうと思います。しかし、これにはどうも優生思想に近いものを感じてしま
い、少なくとも私は好きになれません。政策として推進、あるいは介入すべき
問題ではないのではないか、ということには、大方の賛同を得られるものと思
います。
 こうした側面を除外して、社会的な面を考えてみても、現実には、移民国家
であるアメリカにおいては、異なる人種・民族のコミュニケーション・ギャッ
プの克服のために、たいへんな労力が費やされており、しかも、必ずしもそれ
がうまく行っているわけではないというのが、現実だろうと思います。
 多くの人種、民族が一緒に働くアメリカ企業においては、人種・民族それぞ
れに文化や伝統、考え方や価値観が違うため、日本人が当たり前だと思ってい
ることがアメリカ人には当たり前ではない、といったことが度々起こり、さま
ざまなフリクションを引き起こしているといいます。こうした文化や価値観の
違いは、言語の違い以上に、コミュニケーション・ギャップを引き起こすので
米国企業は、そうした中で企業活動を円滑に進めていくために、従業員がさま
ざまな異文化があることを理解し、それを許容することができるようになるた
めに、かなりのコストをかけて教育や意識啓発などを行っているようです。
 もちろん、文化や価値観が異なることで、新たな視点、独特の発想が得られ
るというメリットは大きいだろうと思います。しかし、それ以上に、コミュニ
ケーション・ギャップによるコストの方が高くついているのが現実ではないか
と思います。
 それでも、企業内では、まだしも多種多様な人種・民族が混在して働いてい
ますが、一歩企業を出れば、それぞれに人種、民族が同じものどうしでコミュ
ニティを作っているのが現実です。例えば、ゴルフ場などは、米ゴルフ界のス
ーパースターであるタイガー・ウッズでも、有色人種であるがゆえにプレイで
きないコースがあるという話が以前有名になりましたが、実際に、例えば年収
の下限を設ける(有色人種は、日本企業の駐在員のような例外を除けば、これ
をほとんどクリアできない)といった間接差別で、白人以外を排除していると
いうケースは非常に多いということです。
 こうして見ると、現実にはアメリカにおいても、多様な人種・民族が共存し
ていることは、活力につながるよりは、負担を増やしているという側面の方が
大きいのではないかと思われます。
 アメリカにおいて、外国人の存在が社会を活性化しているように見えるとし
たら、それは、外国人であることそのもののためではなく、彼等が成功を目指
してアメリカに渡ってきたという、活力ある人たちであるからではないかと思
います。さらに、彼等が、「マネー」を共通語にして、「ビジネス」に特化し
て生きる世界においては、コミュニケーション・ギャップも小さくなり、多様
性の活力がクローズアップされてくるのかも知れません。
 そういう意味で、そのような「成功しよう」「一山当てよう」という活力の
ある外国人が、日本にももっと来るようにすればよい、という議論はありうる
のかも知れません。実際、日本は、単純労働などでは外国人就労の制限は厳し
いですが、専門的な労働においては、世界でももっともハードルの低い国のひ
とつであり、制度的な制約はないわけなので、あとは日本にどれほどの成功の
チャンスがあるか、ということになるのだろうと思います。これについては、
また様々な意見があり、議論があるのだろうと思います。それはそれとして、
少なくとも、「様々な文化、価値観を持つ外国人を入れて、多様化が進めば、
社会は活性化する」という発想は短絡的であり、「単純労働でもなんでも、ど
んどん外国人を入れればいいのだ」という考え方は、おそらくは間違いである
可能性が高いということは言えるだろうと思います。

                (次回は2月26日に配信する予定です)
===================================

◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され
 ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801

◆このメールマガジンは、発行者が、個人の立場で、管理職、人事労務担当者、
 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す
 る話題を提供するものです。
 不定期刊ですが、おおむね毎週1回以上発行しています。

◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。
 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html

◆登録・解除は、次のページからお願いします。
 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html

◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659
 の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。

◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com

◆転載・引用を歓迎します。その際は、「労務屋の労働雑感」からの転載・引
 用であることと、まぐまぐのid(0000049801)の記載をお願いします。

◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま
 せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、
 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。

===================================

メールマガジンにもどる
バックナンバーのインデックスにもどる