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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成13年08月01日発行 通巻081号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 【書評】変われる会社、変われない会社 >>> j.ペッファー/r.i.サットン著 長谷川喜一郎監訳 菅田絢子訳 流通科学大学出版 =================================== 書名が「変われる会社、変われない会社」、著者はスタンフォード大教授で 米国有数の経営学者とくれば、もう内容は読まないでもわかった、という気分 になる。例によって、株主重視の経営をせよ、集中と選択に取り組め、過去の しがらみを断ち切り、従業員も取引先もドライに整理せよ・・・。 違うのである。 この本は、その手の凡庸な経営書ではない。敢えて極言すればこの本は事例 集である。多数の成功事例、そして失敗事例。これらはきわめて示唆に富んで いる。その中から、成功と失敗を分けるものはなにかが明らかにされる。説得 力にあふれた本である。 この本は、成功と失敗を分けるものは「知識」ではなく「行動」であるとい う。知識は成功した企業にも失敗した企業にもある。知識はビジネス・スクー ルで学べるし、おカネがあれば、コンサルタントにカスタム・メイドさせるこ ともできる。失敗した企業にないのは「行動」である。 なぜ行動できないのか。この本は、知識を持つ人はたくさんいるが、行動か らしか得られない本当の知識を持つ人は少ないという。優れた企業では平凡な 人たちがすばらしい成果を上げている。これは、彼らが行動を通じて本当の知 識を体得しているからだ。それに対して、優秀な社員をたくさん雇いながら、 成果の上がらない企業もある。それは、優秀な社員たちは知識をたくさん持っ ているが、行動から得た本当の知識は持っていないからなのだ。 それでは、社員を行動に向かわせるためにはどうすればいいのか。ここで語 られるのは、現場主義であり、失敗を許し恐怖感を与えない組織であり、社内 での競争よりライバル会社との競争に目を向けさせることであり、結果でなく プロセスを評価することである。そして、長期的な経営ビジョンであり、情報 共有であり、ojtであり、チームワークと人間尊重である。短期的な業績や 株価の向上を求める投資家たちは、行動を促すことの阻害要因とされる。 とりわけ共感を覚えるのは、現実に行動する社員の行動に注目し、彼らが行 動しやすくするような環境を整えるリーダーシップを強調していることだ。成 功をもたらすのは企画部門ではなく現場で働く平凡な多数の人たちであり、彼 らに前向きに行動し、知恵を出させるような動機づけを行うというのは、まさ に日本企業が営々と行ってきたことではなかったか。あるいはこの本は、まず 行動することが大切であり、戦略はその後で良いという。行動する前にいくら 議論しても、単なる知識を超えるものはできないから、まず行動して、行動か ら得られた本当の知識をふまえて戦略をつくるべきだという。これは見方を変 えれば、ボトムアップでの戦略づくりという日本企業の特質に近いものではあ るまいか。 このところ、日本企業でも、経営戦略の策定や、マネジメントの再構築など といったことがさかんなようである。極論すれば、経営戦略を論じたりマネジ メントを語ったりするのは楽しいし、楽である。しかし、現場でそれを実行す るのは困難をともなう。それにもかかわらず、知識をもてあそぶ人がもてはや されるのでは、いずれ現場は行動しなくなるのではないか。最近起きている、 品質をめぐる不祥事は、その前触れではないか。日本企業の抱える最大の問題 点がここにあると云っても過言ではあるまい。 そしてこれは、企業に限らず、経済や社会の「構造改革」についても同じで はあるまいか。「経済戦略会議」やら「経済財政諮問会議」やら、訳知り顔の 「学者」たちがあれこれ「知識」をもてあそんでいるが、さっぱり行動には結 びついていない。今、本当に必要なリーダーとは、ナントカ会議で高説を述べ るリーダーではなく、国民が構造改革に向かって行動するような動機づけや環 境づくりを行うリーダーであろう。 企業の成功、国家の発展を支えるのは、一部の「指導者」の知識ではなく、 多数の現場の平凡な人の行動である。わが国経済・企業の発展の基盤となり、 そして今見失われつつあるこの原点に、われわれはもう一度、この本を読んで 立ち返らなければならないのではないだろうか。 ちなみにこの本は、私のホームページを見ていただいた方に教えていただい た。読書好きにとって、このような良い本に巡り会うほどうれしいことはない。 こうしたことがあれば、つたない書評や書籍推薦を掲載した甲斐があったとい うものである。ご紹介いただいた方に深く感謝したい。 (次回は8月2日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/ の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |