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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成13年07月12日発行 通巻077号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 今年の「労働経済白書」を読んで >>> =================================== 「平成13年版労働経済の分析」が、7月6日の閣議に提出され、了承、公 表されました。従来「労働白書」と通称されてきたものですが、省庁再編にと もない、今年から「労働経済白書」に変わるということです。ちなみに、例年 「厚生白書」が出ていたタイミングで、労働行政まで含めた厚生労働省の総合 的な白書である「厚生労働白書」が出るということのようです。まだ厚生労働 省が配布している要約版しか手許にないのですが、その概況を見てみることに したいと思います。 内容は例年どおり、第部が平成12年労働経済の推移と特徴、第部が随 時テーマという2部構成になっており、今年の随時テーマは「情報通信技術 (it)の革新と雇用」と題して、it化の雇用・労働への影響を取り上げて います。 第部の平成12年労働経済の推移と特徴は周知の内容なので割愛させてい ただき、さっそく第2部の「情報通信技術(it)の革新と雇用」を見て行こ うと思います(白書は一貫して「情報通信技術革新」という言葉を使っていま すが、煩雑なので、以下は「it化」と記させていだだきます)。 まずit化の特徴として、技術の進歩と価格の低下により、家計、企業双方 に急速に浸透していること、かつてのme化などの技術革新が主に生産部門の 労働や雇用に大きな影響を与えたのに対し、it化は事務部門の効率化や新た な経営手法の創出など、事務部門への影響が大きいことの2点を特徴としてあ げています。その具体例として、電子商取引とサプライチェーン・マネジメン トがコラムで取り上げられています。 次に、it化で先行したアメリカの状況が概括されます。90年代のアメリ カはit化の成果により経済成長、労働生産性、物価、雇用などで良好な状況 が見られたとした上で、ホワイトカラーの雇用が増加する一方、個々の雇用の 安定性はむしろ低下したと述べています。データとして、解雇2年後の再就職 率は8割で、高齢者、低学歴者に厳しい状況があることが示されます。また、 学歴間賃金格差についても、99年で大卒は高卒の2.85倍と、いわゆるデジタ ル・デバイドの拡大を指摘しています。その一方、初等・中等教育におけるコ ンピュータの導入、コミュニティー・カレッジにおける情報通信関連教育が積 極的に進められていることにも言及しています。 ここから後がわが国の状況についての言及となります。まず、it化の雇用 量への影響として、わが国の情報通信技術関連産業の従業員数は99年で364 万人で、5年間で0.5%増加しており、全産業ではこの期間に1.0%減少してい ることから、かなりの伸びが見られたとしています。その構成比は6.8%とな っていて、米国を上回っており、必ずしもわが国がit化において遅れている とは云えないと主張しています。さらに、具体的な推計として、it化により、 わが国でも90年代を通じて200万人以上の雇用創出効果があったという結果 を紹介しています。 次に、it化による仕事の変化ということで、it化により、定型的業務が 減少し、創造的業務の比重が増大しており、今後もこの傾向が続く可能性が高 いと述べています。特に、情報通信技術の技能が賃金や昇進に影響し、格差が 拡大する可能性があると指摘しています。その一方、一般的にit化への対応 が困難であると言われる中高年に関しては、現実に中高年に企業が求める能力 はワープロや電子メールなどの基礎的なものであり、時間をかければ修得可能 であるという実態が紹介されています。また、it化により中間管理職が中抜 きされるという一般的な見方については、マクロレベルのデータではその減少 は確認できないとした上で、中間管理職の役割として「情報の重要性判断」 「新規事業や業務改善の企画」が重要と考えられているという調査結果を紹介 し、中間管理職に求められる能力はむしろ高度化し、その役割は重要になって いるという実情を指摘しています。 it化に対応した人材育成という点については、幅広い情報リテラシー(情 報収集・活用能力)が求められているとした上で、さらに、情報通信技術を業 務に生かす発想力、課題発見・解決力などが重要であり、そのために本来業務 の能力が不可欠であると述べています。また、情報通信技術者は不足しており、 官民で計画的な養成が必要であることにも言及しています。 it化に伴う雇用・就業形態の多様化についても一章を設けており、基本的 な認識として、it化により自宅就労などの働き方が可能となり、高齢者、障 害者、家庭的責任を負う人の就労を容易とするという考え方を示しています。 その上で、在宅勤務やサテライト・オフィス、在宅就業がかなりの規模になっ てきており、雇用管理や業務管理などの課題を指摘しています。また、it化 による業務の標準化などが、パート・アルバイトや派遣など、非正規雇用の活 用や、アウトソーシングを促進している実態を指摘しています。 こうした中での労働市場のあり方として、it化により雇用システムの見直 しが必要となる場合にも、単純に外国のシステムを持ってくるのではなく、わ が国の実情にあったシステムを模索することが必要であるとの認識が示されて います。 その上で、従来も、例えばエネルギー革命やme化のような大きな技術革新 にあたって生かされてきた日本型システムの強みは、今回のit化でも活用可 能であると結論づけています。その具体的な内容としては、第一に雇用の安定 を保障するため、新技術や配置転換への抵抗が少ないこと、第二に長期的な人 間関係により情報の共有・蓄積が可能であること、第三にコスト回収が可能な ため企業が教育訓練に積極的であることをあげています。 その一方で、外部労働市場における円滑な労働移動の重要性にも触れており、 民間の労働力需給調整システムの強化、公共職業安定所での情報通信技術の活 用などが必要であるとしています。 さいごに、情報通信技術が地域的制約を縮小することから、情報交換や交流 における地方の不利はかなり解消されるものの、地域発展に不可欠な人材の集 積に関しては、そのための環境づくりが重要であるとしています。 まだ要約しか入手できないため、評価は難しいのですが、it化の雇用・労 働への影響が、実態をベースにして要領よく整理されていると感じます。あま り紹介できませんでしたが、最近実施された複数の実態調査をベースに、豊富 なデータが紹介されており、特に、「中高年はit化に対応できない」「it 化で中間管理職は不要になる」「it化で日本型雇用システムは崩壊する」な どの皮相的な通説に対して、行政がデータをもとにに批判を行ったことは高く 評価したいと思います。 要約を見る限り、行政の白書に往々にして見られる政策追認のような内容も あまり強くは感じられず、近年の白書の中では出色のできばえであると評価し てよいのではないでしょうか。 (次回は7月16日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659 の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。その際は、「労務屋の労働雑感」からの転載・引 用であることと、まぐまぐのid(0000049801)の記載をお願いします。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |