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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成13年02月15日発行 通巻036号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< インターンシップと新卒採用 >>> =================================== 報道によれば、松下電産は、大学3年生と修士1年生を対象とした2週間の インターンシップコースを設け、職場の評価の高かった学生については卒業後 に採用することにしたそうです。コースの定員は100人で、日当は一日1,000円 とのこと。 コースが終了する3月末には、評価の高い学生には本人が希望すれば内定を 出すということで、本人は一応5月までは内定を受けるか受けないかの判断が できることになっており、さらに、5月以降も、他社への就職活動は制約しな いということだそうです(まあ、これは制約する方が無理でしょうが)。 こうした話は、欧米、特にアメリカでは珍しい話ではありません。日本でも、 小規模企業では、アルバイトに来ている大学生が、そのままそこに就職してし まうというのは割とよくある話です(アメリカでのインターンシップを通じた 就労も、コミュニティカレッジなどを中心に、これに似たケースが多いのでは ないかと思います)。しかし、社会的に影響力のある優良企業がやるとなると、 これはわが国ではかなり珍しい話になりますし、また、珍しいのにはそれなり の理由があります。 第一に、まずはインターンシップは就学の一環であって就職活動ではないと いう建前論があります。まあ、これはそんな堅い話をしなければいいだけの話 ではありますが、そういううるさいことをいう人が特に大学サイドにはいる。 第二に、これは買い手市場でなければ成り立たないということがあります。 当然のことながら、引く手あまたの売り手市場であれば、就学(単位獲得)と してのインターンシップはともかく、就職活動として2週間も就労するなどと いう呑気なことをする(優秀な)学生は少なくなることは目に見えています。 しかも、これまた当然のことながら、買い手市場の中で、ある程度自社は採用 を行うという意図がなければ無意味なわけで、こうした意味では、新卒一括採 用がさかんで、景気によって採用市場が大きく振れがちなわが国では、案外使 いにくい手法であるわけです。 第三に、時期的な問題で、まとまった期間の就労体験をしようと思うと、ど うしても学期間の休暇にやらざるを得ないわけで、そうなると、現状の就職・ 採用活動の日程から考えても、どうしても学部で云えば第三学年の春というこ とになってしまいます。しかし、常識的に考えても、三年生のうちから就職活 動に入るのが好ましいという意見はまだ少数派であり、日経連の採用に関する 「倫理憲章」も、昨年から新たに、「三年生への実質的選考活動は慎む」とい う一文を入れています。 第四に、インターンの取り扱いがかなり難しいということがあります。これ は案外実務的には無視できないポイントで、たとえば松下電産の場合、日当が (時給ではない)一日千円というのは、通常のアルバイト採用であればもちろ ん最低賃金にひっかかってくるわけです。こんな極低額の日当で就労させられ るのは、もちろんインターンシップが就学の一環であって就労ではない(した がって昼食代くらいの日当を払えば良い)という建前によるものですが、本当 にそれでいいのかという問題は常にあります。また、どんな仕事をしてもらう のか、というのも案外難しく、まるっきりアルバイトと同じ仕事ではわざわざ 就学(しかも大学教育)の一環として行う意味があるのか、という話もありま すし、下手をすると、就職難をいいことに、採用をエサにして格安のアルバイ トを集めているという批判も、こうした動きが広がってくれば出てこないとも 限りません。それではそれなりに意味のある仕事を経験してもらいましょう、 ということになると、そもそも2週間でどれほどのことができるのかという問 題は別としても、受け入れる職場が面倒を見るのがかなり大変ということにな ります。 もちろん、採用選考という側面から考えれば、数回の面接で採否を決めるの と、実際にある程度の期間就労させて採否を決めるのと、どちらがより優れた 判定ができるのか、という問題があり、これについてはいろいろな意見がある でしょう。複数の人事マンの目よりも、実際に就労させた方が、優れた行動特 性の持ち主を見抜けるというメリットがありそうにも思えることは事実です。 ただしこれは、在学している大学のブランドで基礎能力がかなり正確に判定で きるということが大前提になっていることには注意が必要です。だから、学科 試験がなくても判定できるということになるからです。 「インターンシップ」などという言葉を使わないまでも、学生の体験就労の 受け入れは、これまでも行われて来ました。例えば、製造業では、ともすれば 開発や設計といった仕事ばかりをイメージしがちな理科系の学生に、さまざま な仕事を理解してもらうために、製造現場の周辺を中心に、体験就労の場が多 く提供されていますし、理科系・文科系を問わず、あまり人気の高くない企業 が自社の良さをprしたり、知名度の低い企業が成長性を実感してもらったり するために、就労体験を受け入れたりするケースは数多くあります。また、最 近では、若年者の失業問題が注目されており、就学から就労への円滑な移行を 進めるための手段の一つとして、インターンシップに期待が持たれています。 おそらく、これからも、学生の就労体験の場としてのインターンシップは拡大 していくことでしょう。 しかし、採用の手法としては、判断材料が増えるというメリットは大きいも のの、意外に難しい条件も多く、ある程度の買い手市場のもとで、それなりに 人気のある企業といった、限られた条件のもとでの活用にとどまるのではない かと思います。 むしろ、学生だってしたたかですから、「自分は松下のインターンシップで 内定を獲得した」ことを、他企業での就職活動での売りにするということも十 分考えられるような気がします(まあ、松下を蹴ってまで行く企業となるとか なり限られてくるでしょうが)。もしこれがかなり有利に働くようだと、松下 に追随する企業が出てくれば、学生はまずインターンシップに申し込んで採用 されることが第一関門となり、ますます就職戦線は過酷をきわめるということ になるのかも知れません。現実にそうなるかどうかはわかりませんが、大変な 時代になったものです。 (次回は2月19日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の立場で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。 不定期刊ですが、おおむね毎週1回以上発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659 の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。その際は、「労務屋の労働雑感」からの転載・引 用であることと、まぐまぐのid(0000049801)の記載をお願いします。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |