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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成13年03月05日発行 通巻042号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 高級官僚よ、お前もか。 >>> =================================== 先月23日、行政改革推進本部が実施した、若手国家公務員のヒヤリング結 果のまとめが公表されました。回答者は現職114人、退職者12人で、明記 されてはいませんが、1種が対象になっているものと思われます。 その結果を見ると、わが国の精鋭集団たる高級官僚たちも、民間企業と似た 悩みを抱えている姿が見えてきます。 まずはその「忙しさ」については、「定員の大幅な削減や業務量の増大によ り、雑務の処理に追われ…」「忙しすぎて2・3年先を見た政策の仕込みを行 う時間的余裕がなく…」「超過勤務があまりにも多いため、職員が心身に異常 をきたす等の問題が起きている」と言った実態が訴えられています。現実に、 地方の出先に配布する書類のコピーであるとか、それをソートしてセットする などと言った仕事を、深夜の霞ヶ関で若き高級官僚がひたすらこなしているな どというのは毎日のことらしいですし、夜食の注文のとりまとめが若き女性 キャリアの仕事になっているとかいう話もあります。予算さえ許せば、適宜ア ルバイトなどを雇って雑用をやらせることはもちろんできるわけですが、予算 がなくなれば官僚自身でやらざるを得ないわけです。 それではその原因はと言えば、「国会議員から要求された…作業が膨大であ る。また、…質問通告が遅いため、深夜(早朝)に及ぶ…」「与党間の意見調 整に各府省の幹部職員が走り回る」などと、まずは政治家の都合に振り回され ているということで、これは行革担当相の橋本竜太郎氏も「政治家の問題もあ る」と認めたところでもあります。「コスト意識に欠けた無駄な作業が多い」 というのはお役所らしい回答です。さらに「省内各局、他府省との調整を要す る…が、調整に莫大な時間がかかっており、…その過程で大胆な政策が当たり さわりのない政策に変質してしまう」とは、民間人でも耳の痛い人は多いので はないでしょうか。「幹部の数が増えており、それが迅速な意思決定を妨げ」 というのもあります。業務改革の提案の中にも「決裁の印の数を減らす」とい うのが出てきます。実際、霞ヶ関における決裁というのはすさまじいもので、 関係部局はすべて印を押しますし、全体的な整合性を確認するために基本的に すべての決裁を通さなければならない部署というのもあるということで、印が 20個になるのも珍しい話ではないといいますから大変です。 次に処遇、人事異動ですが、さすがに「年次一律主義等現行の公務員制度は 時代遅れ」との認識で、能力主義、競争原理の導入が主張されています。人事 考課についても非常に前向きで、面接制度、評価のフィードバック、360度 考課など、かなり具体的なところまで踏み込んだ意見が出ているのが目をひき ます。人事異動についても、専門性の養成など、官僚自身のキャリア開発とい う観点を考慮すべし、本人の意向を反映すべしとの意見が出ています。1種・ 2種・3種のキャリア制度については、全体を一本化せよとの意見はなく、大 方は「1種で確保できていた高い士気を有する人材」を確保せよとの意見のよ うです。公務員は全体の奉仕者であり、自分自身のキャリア形成のために公務 に従事するというのは建前からすれば違うようにも思いますが、まあこれは時 代の流れでしょう。 労働条件に対しては、やはり賃金の低さを訴える声は大きいものがあります。 「厳しい勤務状況であるにもかかわらず、民間に就職した大学の同期と比べて、 給与を含めた処遇のレベルが低い」「勤務実態に処遇が追い付いていない…給 与を含めた処遇水準の抜本的な改善を最優先課題として取り組むべき」などと 意見が出ています。確かに、指定職になる前の官僚の給与はその能力や仕事に 比べておよそ満足な水準ではないと思います。それが、高齢になって、天下り 先での高給、あるいは職場を移るたびの高額な退職金によって埋め合わせされ るという構図は、歪んでいると言われても仕方のないものだと思います。そう いう意味では、「『天下り』について…見直しの論議があり、人生設計がはっ きり描けないことに職員は不安を感じている」「公務員時代は給与を安く抑え られ、退職後は再就職もできないとなると、人生設計ができない」という意見 も、まことにもっともなことだと思います。高級官僚は非常に優秀なわけなの で、一般人に比べれば仕事に困ることも少ないだろうとは思いますが、安心し て働きたいという気持ちは誰しも共通のものとして理解できるものです。 最近の「日経ビジネス」で、ヤマト運輸の経営を引退して障害者雇用に取り 組んでいる小倉昌男氏が、厚生労働省の外郭団体の理事長が年収3000万円とい うのは、仕事から見て高すぎると、もっともな憤りを述べておられましたが、 理事長にして見れば、若い頃の薄給と長時間労働の埋め合わせという、こちら はこちらでもっともな言い分があるでしょう。 その一方で、最近やはり話題の「雇用保障」については、特段の言及はなく、 わずかに「スト権について、職場が倒産する恐れのない公務員について付与す るのは不適当」という意見が、スト権と引き換えに雇用保障をなくすという意 見に対する反論になっているようです(もっとも、倒産の恐れがないからスト 権を付与してはいけない、という理屈はいささか妙ちきりんですが)。 全体のモラルとしては、「政治主導の名の下に、本来あるべき政策…が歪め られることがある…仕事が国のためになっているという実感が持てない」とい う、政治家による利益誘導への嘆き、「公務員バッシング…もあって、公務員 という職業に誇りが持てない」という意見に見られるように、非常な忙しさ、 政治家の悪しき介入、一部の公務員による不祥事、といったことが全体のモラ ルの低下を招いている様子が見られます。また、「行政の無謬性問題もあり、 時代の変革に対応した政策が立案できない」など、行政ならではの「間違って はいけない」というプレッシャーもあるようです。 こうした中で、公務員の人事制度も改革の方向を模索しているわけですが、 働く人たちの意見が、実はかつての(今も多分にそうですが)民間企業におけ る状況と重なり合う部分も大きく、基本的には民間の取り組みがその指針にな るのではないでしょうか。実際、この調査結果を読んでいると、「高級官僚よ、 お前もか。」と言いたくなる内容があちこちで目につきます。 少なくとも、60歳なり65歳なりまでは基本的には入った役所の中で働く ことができるようにして、年次逆転させないとか次官が出たら同期は省内には いないとか言った人事はやめるべきでしょう。これに対しては「役所で多くの 高齢な職員を抱えざるを得なくなり…活力が失われ停滞する」との意見も出て いますが、ここは何とかするよう努力すべきでしょう。民間ではそれぞれ苦し みながらもやっていることです。「事務方のトップである事務次官が毎年のよ うに代わ(る)…のは問題である。せめて3〜4年は在職するようにすべき」 という正論も出されていますが、毎年のように交替することが必要になるのも、 こうした硬直的な人事制度の要請です。 あわせて、給与水準、制度の在り方も、見直すべきではないでしょうか。高 級官僚の能力や業務は、決して民間企業社員のそれに見劣りするものではない はずです。若年時の給与を底上げし、中年以降は昇進しなければ横ばいとなる ような、民間型の賃金カーブを取り入れることが必要でしょう。もちろん、指 定職以上は、年俸制に近い制度・運用も考慮されるべきでしょう。雇用保障は あってはいけないとは思いませんが、その分は他の労働条件は低くていいだろ うと思います。どのくらいの水準がふさわしいかは難しいところですが、規制 に守られた産業並というのは高すぎるでしょうから、自由競争している輸出産 業、例えば電機や自動車、造船などの大手企業をベースにするというのはどう でしょう。そこから、雇用保障がある分をマイナスして、福利厚生などの分を 調整するわけです。感覚的なものですが。 人事考課については、民間企業でも難しいわけですが、営利ではない公務員 については、さらに難しいのではないかと想像されます。360度評価や、 フィードバックも大切ですが、まずは比較的シンプルな、能力評価と情意評価 の組み合わせに、賞与については業績評価も加えるような制度を試してみる方 が賢明なように思われます。いきなり手の込んだ手法を適用するのは無理があ るように感じます。 この調査結果、調査の趣旨からしても、現状に対して批判的、否定的な意見 が多いわけですが、それでもなお、回答者たちの高い意欲、モラルがはしばし に伺えるものでした。確かに、官僚は最近評判が悪いですし、いろいろと不祥 事もあり、そのような不祥事が起こりやすいシステム的な問題もありそうだと 思います。とはいえ、それは基本的にシステムの問題であり、システムが人を 害することはあるかも知れませんが、本来的に人の問題ではありません。この 高い意欲、モラルが十全に発揮され、生かされるようなシステムの構築をぜひ 急いでほしいものだと思います。 (次回は3月8日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の立場で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。 不定期刊ですが、おおむね毎週1回以上発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659 の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。その際は、「労務屋の労働雑感」からの転載・引 用であることと、まぐまぐのid(0000049801)の記載をお願いします。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |