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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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        平成13年05月31日発行 通巻066号
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         <<< 日本の年間休日は少ないか? >>>

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 今回は、年間休日の国際比較について、年次有給休暇と法定休日の違いを中
心に考えてみたいと思います。
 5月28日付日本経済新聞の朝刊に、米国のit業界で、経費節減のために
従業員に有給休暇の取得を奨励する動きが広がっている、との記事が掲載され
ていました。記事によれば、サン・マイクロシステムズ社が全米38,000人の社
員を対象として、7月1日からの一週間を休業とし、有給休暇のある社員には
半強制的に取得させる(有給休暇のない社員は無給の休日)とのことで、「ア
クロバット・リーダー」でおなじみのアドビシステムズ社も、米国とカナダで
約2,000人の社員を対象に同様の休暇を設定するそうです。他にも、ヒューレ
ット・パッカードが有給休暇の積極消化を呼びかけるなどしているとのこと。
 これを読んで意外に思われる方も多いのではないでしょうか。私も二つの点
で意外に感じたのですが、その第一が、有給休暇の消化によって雇用調整を行
なう、というのが、非常に日本的な手法だという点です。一般的に日本企業は
残業時間や年次有給休暇の取得によって雇用を維持したまま稼動時間を調整し
ようとするのに対し、そのような柔軟性の乏しい米国企業ではすぐにレイオフ
が行われる、と対比されることが多いのですが、必ずしも一律にはあてはめる
ことができないようです。もっとも、アメリカのit業界ではすでに相当規模
の人員削減が行われていますし、これ以上の人員削減は今後操業が上向いて来
た時のことを考えれば不利であるとの判断が働いたのかも知れません。
 もう一つが、それと大いに関連するのですが、アメリカですぐにレイオフが
行なわれる理由として、「残業は基本的に実施しない、年次有給休暇も完全取
得なので、調整の余地が乏しい」という、これまた一般的な理解が、必ずしも
そのとおりではなくて、実はアメリカでも有給休暇の未取得があるのではない
か、という点です。
 もちろん、まだ年途中ですから、未取得分の有給休暇があるのは当然のこと
で、その時期の問題だけかも知れません。従業員がばらばらに休むところを一
斉に休ませ、その間操業を止めるだけでも、コストダウン効果はかなり大きい
だろうと思います。しかし、現に余らせている有給休暇があって、「捨てるく
らいなら」という理屈がなければ、このような施策はなかなか理解を得られに
くい、あるいは思いつかないのではないかという気もします。実際、ヒューレ
ット・パッカードでは、消化されなかった休暇を買い取る制度を持っており、
今回の施策は休暇の取得を進めて買い取りに必要な費用を抑制しようというね
らいを持っているという話もあるそうです(付与された日数より6日多く有休
休暇を取得せよ、ということですが、これは付与日数を増やすということでは
なく、繰越し分の消化を目指しているのではないかと思われます。そうでなけ
れば、買い取り費用の節減にならないはずです)。
 生産性本部の「活用労働統計」には、年間休日日数の国際比較が載っていま
す。これを見ると、年次有給休暇の日数は、日本が9.1日なのに対して、アメ
リカ13.1日、イギリス24.3日、ドイツ31.2日などとなっています。そして、小
さな字で、日本は取得日数であるが、欧米は付与日数である旨注記されていま
す。欧米については「完全取得があまりにも当然のことなので、取得日数や取
得率のような統計は意味がなく、存在しないのだ」という説明が、往々にして
行われています。確かに、欧米、特に欧州では日本に比べて有給休暇の取得は
相当程度多いことは事実だろうと思います。とはいえ、このような有給休暇の
買い取り制度によって「取得されたことになっている」という実態や、ひいて
は純粋に「捨てる」といった実態が、ある程度無視されている可能性はあるの
かも知れません。
 さて、この国際比較を続けて見て行きますと、週休日は各国とも週休二日の
104日とされています。この手の数字に対して、「日本の統計は零細企業の
実態を含んでいない」という批判がよく見られます。確かにそれは事実だろう
と思いますが、一方でどこの国にもある問題でもあり、少なくともこのような
国際比較(しかも大雑把な)では気にする必要はないように思います。
 残るは法定休日ですが、日本では、6月に国民の祝日がないのが淋しいので、
「時の記念日」(6月10日)を国民の祝日にしよう、という意見もあるそう
ですが、実はすでに日本の法定休日は15日あり、アメリカの10日、イギリ
ス・ドイツの8日よりかなり多くなっています(これは、年次有給休暇の取得
率が低いのとセットで、「一斉でないと休みにくい」という日本の特殊事情を
反映したものであると言われています)。
 アメリカの祝日は、元日、キング牧師生誕記念日、プレジデンツ・デイ(ジ
ョージ・ワシントンの誕生日)、メモリアル・デイ(戦没者記念日)、独立記
念日、レイバー・デイ(勤労感謝の日)、コロンブス・デイ(上陸記念日)、
ヴェテランズ・デイ(退役軍人の日)、クリスマス、サンクス・ギヴィング・
デイ(収穫感謝祭)の10日だけです。ニューヨーク証券取引所や銀行の休日
も、土日以外は、この10日に、グッド・フライデー(イースター・サンデー
(復活祭、春分後の最初の満月の日の次の日曜日)の前々日の金曜日を休日に
して3連休にする)を加えた11日だけです。12月31日から正月三が日は
お休みする日本のマーケットに比べると、ずいぶんな勤勉さです。ちなみにロ
ンドン証券取引所になると、元日、グッド・フライデー、イースター・マンデ
ー(イースター・サンデーの翌日も休みにして4連休とする)、メーデー、春
季と夏季の銀行休業日(バンク・ホリデー。この二日のほか、元日、イースタ
ー・マンデー、メーデー、ボクシング・デーの計6日が法定のバンク・ホリデ
ーとされている)、クリスマス、ボクシング・デーの8日しか休業しません。
ちなみに2002年にはエリザベス女王の即位50周年記念式典が行われるの
で、当日とその前日が特に休日となるようです。
 これらを合計すると、週休、有給休暇、法定休日を合計した年間休日は、日
本が128日なのに対し、アメリカ127日、イギリス136日、ドイツ14
3日となっています。もちろん、法定休日以外にも、労使間で取り決めた休日
というのはいろいろとあるわけで、これだけで実態に合った比較になるわけで
はありません。しかし、法定以外の休日についても、国際比較ができるような
データはなかなか見あたらないのが実情のようです。
 いずれにしても、データの見方には(特に国際比較の場合は)十分に注意し
なければいけないということだと思いますが、この数字で比較すると、日本の
休日はすでにアメリカより多くなっています。年次有給休暇の付与と取得の違
いが多少なりともあるとすれば、欧州諸国との差もいくらかは詰まります。日
本の休日は世間で思い込まれているほど少ないわけではないということは、言
ってもいいのではないかと思います。

                 (次回は6月3日に配信する予定です)
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