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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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        平成13年03月19日発行 通巻047号
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        <<< フリーターになるんだぴょん! >>>

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 この文章をお読みいただいている方は、「週刊プレイボーイ」などという雑
誌はまずお読みにならないでしょう。別に、私だっていつも読んでいるわけで
はありません(笑)。
 ところが、おそらくは若年の独身男性に支持を受けているであろうこの雑誌、
時折、「働き方」「就労観」に関する記事が掲載されることがあり、若者の正
直な「ホンネ」に迫った内容がけっこう興味深かったりするのです。
 さて、今回ご紹介するこの記事、表紙には「卒業したらフリーターになるん
だぴょん!」という見出しが躍っています。内容は特に首尾一貫した主張があ
るわけではなく、フリーターは悪くないどころか、むしろすばらしいものなの
だ、フリーターが悪いと言っているオヤジたち、国や役人の方こそみじめで悪
いものなのだ、奴等が若者にしっかり働かせてそれにパラサイトしようとして
いるのだ、といったことを、いろいろな理屈といろいろな実例で訴求しようと
いうもので、これはなるほど若者のホンネに迫っているという感じがします。
人間のホンネというものは首尾一貫してもいなければ実証的でもないことが多
いので、これはこれで大いに参考になります。以下、私なりに整理してご紹介
したいと思います。
 フリーターがなぜすばらしいか、この記事の主張する第一の理由は「自分の
夢を持つことができる」ということのようです。自分には本当にやりたい仕事
があって、ただ、今はその仕事はできないので、フリーターをしながらそのた
めの勉強をする、あるいはチャンスを待つ、ということです。芸能関係などは
別としても、昨今のような就職難では、若者が「自分のやりたい仕事」につけ
るチャンスはかなり限られていますから、確かにこれは一つの選択ではあるで
しょう。ちなみにここで紹介されているのは、グラフィック・デザイナーにな
りたいという青年と、有名ジャズバーでのアルバイト経験を生かして、ソムリ
エの資格を取って、ワインの個人輸入業者になりたいという青年です。デザイ
ナーは現在もっとも過剰供給の職種の一つですし、ワインの個人輸入業者もあ
またいますが、もちろんそんなことはよくわかっているからこそ、フリーター
をしながらチャンスをうかがおうとしているわけで、狭き門にあえて挑もうと
いう志はなかなか頼もしいではありませんか。
 次にフリーターがすばらしい理由として、「自由である」ということを言い
たいようです。当面なにをやりたいかわからないから、フリーターしながらや
りたいことを探す、あるいはやりたいことに出会うのを待つ、というのもある
そうで、そのためには自由度の高いフリーターの方がいいというのもたしかに
うなずける理屈です。この事例としては、有名なゲームプランナーで、グラス
ホッパー・マニュファクチュア社長の須田剛一氏が紹介されています。氏のソ
フトはかなりあざとい暴力と犯罪が売りで、若干いかがわしい感じもあります
が、ソフト会社に「マニュファクチュア」という社名をつけるあたり、モノづ
くりマインドが感じられて好感が持てます。また、フリーターなら税金や厚生
年金(保険料)を「『天引き』されなくてすむ」という言い分は、いささかい
ただけないにしても、まさしくホンネでしょう。むしろ、行政支出や、特に社
会保障に対する根強い不信感を示すものとして、正面から受け止めるべき意見
かも知れません。
 もう一つ、「フリーターの仕事も自分の将来のためになる」ということも言
いたいようで、これは厚生労働省などの「フリーター困った論」に対する反論
にもなっているようです。もちろん、「コンビニとかでアルバイトすることで、
サービス業や流通のしくみが学べる」というのはそのとおりでしょう。
 そして、結論としては、「フリーター生活というのはお金がないだけで、あ
とはすべてそろっている。オヤジどもにはない『自分の夢』がある」というこ
とになるようです。
 さて、紹介が長くなりましたが、たしかにこの記事のようなフリーターであ
れば、フリーターも大いにけっこうなものかも知れません。ただし、厚生労働
省やら何やらが心配しているのは、こういうフリーターではないわけです。
 「ジャズバーでアルバイトしながら、仕入のノウハウを身につけたりコネ付
けをしたりして、いずれは個人輸入の仕事を」とか、「コンビニでアルバイト
しながら、コンビニ経営のノウハウを学ぶ」とかいった、キャリア形成、能力
養成の意識のあるフリーターであれば、若者のキャリア蓄積を心配する必要は
ないわけです(コンビニは現在すでに飽和状態に近く、これ以上コンビニ経営
者は必要ないというミスマッチの問題は別として)。問題は、フリーターの大
多数が、そのような意識を持たずに、漫然とフリーターをしているところにあ
るわけです。
 また、フリーターをしながら本当に自分のやりたいことを探すとか、あるい
は自分のやりたいことができるチャンスを待つというのも、本当にやりたいこ
とが見つかったり、やりたいことができるチャンスにめぐりあったりできれば
いいのですが、やはり現実には、そのようなことにはならないフリーターの方
が多数ではないでしょうか。
 それから、「お金がないだけで」と言いますが、お金がないというのは、つ
きつめればそれだけ生み出している付加価値が少ないということ(100%そ
うだとまでは言えませんが、原則的には)ですから、やはり大問題なのです。
それに加えて、税金や社会保険料をマトモに払わないということは、公的サー
ビスや社会保障にタダ乗りしているということですから、「パラサイト」して
いるのはむしろフリーターであるというのが正しい認識でしょう。
 こう考えると、フリーターそのものがすべて悪いという認識の方も、改める
必要があるかも知れませんが、ある程度しっかりした職業観や目的意識を持た
ずに、漠然とフリーターになって、その日暮らしをしたり、いわゆるパラサイ
ト・シングルになったりしている人が多いことは、やはり問題だということに
なるのだと思います。
 この解決策は簡単なことではありません。若者に「やりたいこと」をやらせ
るために、そのポジションをふさいでいる中高年を排除すべきである、それが
将来のためであるという意見もありますが、さすがにこれは短絡的で弊害が大
きすぎるでしょう。やりたいことをやるための起業を支援すべきとの意見もあ
りますが、そもそも自立して起業ができるような人であれば心配はありません。
 結局のところは、その仕事を納得して選択するという理想論ではなく、たま
たまなんとなく選択した仕事をやっているうちに、いずれそれに納得する、あ
るいは好きになれればもっといいといった過程を踏んでいくことが大切なので
はないかと思います。事実、今、就職して10年くらい経った、30歳前後の
人を見れば、そのようなケースが大半なのではないでしょうか。
 私はその時に、ある仕事をなんとなく選択して、それに納得していくために
は、その仕事でもらえるお金が多いとか、あるいは、「正社員」というしっか
りした位置づけが明確に与えられているとかいうことが、案外大切なのではな
いかと思います。であれば、何らかの目的意識のもとに、確信を持ってフリー
ターをめざす人はともかくとして、そうでない人には、なるべく正社員として
きちんと就職してもらうということが、かなり大切ではないかと思われます。
 今、たしかに就職氷河期と云われます。しかし、必ずしも充足されていない
仕事もあることも事実です。それは大抵の場合、ノルマに追われる営業の仕事
であったり、きつかったり汚れたりする町工場の仕事であったり、上下関係の
厳しい職人の仕事であったりするかも知れません。しかし、そういう仕事にも、
それぞれに働きがいを感じ、誇りを持って従事している人もいます。ダメなら
いつでもやめればいいわけなので、そういう仕事をハナから嫌ってフリーター
になるよりは、とにかく一度は就職して働いてみるという方向に誘導していく
ことが大切なのではないでしょうか。
 これは基本的に若者たち本人の気持ちの問題になるので、結局は本人や家庭
の意識の変革や、教育・進路指導というところに依る部分が大きく、具体的な
対策はなかなか難しいのですが、それでも、フリーターを批判するといったネ
ガティヴな対応ではなく、敬遠されがちな仕事の社会的評価を高めていくよう
な施策など、考えていかなければならないのではないかと思います。

                (次回は3月22日に配信する予定です)
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