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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成13年12月17日発行 通巻123号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 当面のワークシェアリングは緊急避難型 >>> =================================== 先週の金曜日(12月14日)に、今度は政労使三者によるワークシェアリ ングの研究会が開催されました。すでに日経連と連合による事務局ベースの研 究会はスタートしているわけですが、こちらは双方のトップと厚生労働大臣が あいまみえる重量級の研究会です。ずいぶん個別のテーマに大げさな枠組みを 準備したものだという感じもしますが、これは小泉首相の指示によるものだと いうことですから、いかにワークシェアリングが注目されているかということ でしょう。 さて、一言にワークシェアリングと言っても、実際にはさまざまなパターン があるということは、この4月に出た厚生労働省の委託研究報告でも指摘され ています。具体的には、一時的景況悪化への対応策として、所定内労働時間を 短縮し、場合によっては賃金も減額して、現有の雇用を維持する「雇用維持型 (緊急避難型)」、高齢者雇用を促進するために、高齢者の体力にも配慮して 労働時間を短縮して雇用増をめざす「雇用維持型(中高年対策型)」、失業者 の就業促進のために労働時間を短縮し、その分雇用を増やそうという「雇用創 出型」、そして、パートタイムなど勤務形態の多様化により、女性や高齢者を はじめとして雇用を増やす「多様就業対応型」の4つの分類が示されました。 この4つの類型の具体例を考えて見ると、「雇用維持型(緊急避難型)」の 先駆的代表例は独フォルクスヴァーゲン社の取り組みでしょう。93年、労使の 合意により、週5日35時間の労働時間を週4日28.8時間に短縮し、賃金も約1 割減額することで、差し迫った三万人規模の雇用削減を回避したというもので す。これは一定の効果を上げたと評価されているようで、ドイツ国内でも追随 する動きが出たようです。わが国では、55歳以上について1日8時間から7 時間に所定労働時間を短縮し、1割強の賃金削減を行った日野自動車の例がこ れにあたるとされています。 「雇用維持型(中高年対策型)」は、わが国でも多くの事例が見られるとこ ろです。バブル経済下の人手不足期において、わが国では多くの企業で定年後 再雇用制度が導入されました。人手不足の中で、高齢者でも働ける人は働いて ほしい、という企業サイドの強いニーズで導入されたものだったため、なるべ く働く人を増やすべく、週5日がたいへんなら週3日とか、一日8時間がきつ ければ一日5時間とかいうオプションが提示されました。実際、高齢者を対象 とした調査でも、働き続けたいがフルタイムはしんどいな、という人が大勢で あるという結果が出ていました。加えて、わが国の厚生年金が、働いて収入の ある人について減額支給する制度になっていたことから、ある程度労働時間を 短くして賃金を抑制し、それで厚生年金の5割支給を受ける、といった制度設 計が行われたという事情も大きいように思われます。 「雇用創出型」の代表例はフランスの週35時間制でしょう。雇用増のため に法定の労働時間の上限を週39時間から35時間に法律で短縮し、それに雇 用を増やした場合の補助金をセットして雇用増をめざしたものです。2000年に は従業員21人以上の企業で35時間制に移行し、政府や労組は30万人以上 の雇用創出効果があったと主張しています。その一方で、単に好況の恩恵が大 きく、政策の効果はなかったとの意見も有力なようです。こうした取り組みは すでに80年代のドイツ(旧西独)でも進められており、こちらは政府主導で はなくigメタルを中心とした労組主導で進められました。その結果、西独は 世界でも屈指の時短先進国となりましたが、残念ながら失業率は低下せず、雇 用創出効果は乏しかったとの評価が定着しています。 「多様就業対応型」はいわゆるオランダ・モデルで、「オランダの奇跡」と 言われるほどの良好なパフォーマンスを示しています。その一方で、必ずしも 世間で喧伝されているような話がすべて鵜呑みにできるとも限りません。いず れにしても、オランダの場合も好況の追い風があり、そうした中でも目に見え て効果が定着するには7〜8年くらいはかかっていますので、それほど即効性 のあるものでないことも事実のようです。 さて、現時点での話に戻りますと、金曜日(14日)の会議では、日経連か らは「当面は雇用維持のためのワークシェアリングを重点的に検討」し、その 後、「多様化によるワークシェアリングを中長期的な課題として検討」すると いう考えが示されたようです。連合もすでに執行部が雇用維持のためには一定 の賃金抑制をともなう労働時間短縮を受け入れる方向性を示していますし、政 府もそれに対して支援の方向性を打ち出したようなので、まずはフォルクスヴ ァーゲン社や日野自動車のような「雇用維持型(緊急避難型)」を中心に実現 の可能性を模索することになりそうです。「オランダ・モデル」はその後の課 題ということで、政労使および労使の研究会がそこまで踏み込めるのかどうか ははっきりしません。 考え方はいろいろでしょうが、まずはこれが具体的には現実的な進め方なの だろうという気はします。実際、当面はいきなりフランスのような法定上限の 引き下げなどは無理でしょうから、個別労使の話し合いと合意によって進める しかないわけで、そうなると自分たちの雇用を守ることは最優先としても、組 合員でも社員でもない人の雇用を増やすために組合員の賃金を下げてまで労働 時間を短縮するなどという議論ができるはずがありません。現実を直視すれば、 すでに経営の厳しい企業では、労使の合意で賃金を引き下げる動きも出ていま す。これは労働時間短縮はともなっていないわけですが、緊急避難的な雇用維 持のための施策という点ではきわめて共通部分の多いものです。 とはいえ、いかに経済や経営が困難であるとは言っても、現実にそこまで追 い詰められる労使もそれほど多くはないと見るのが現実的でしょう。連合とし ても大勢ではないから呑めるという部分があるわけで、逆にいえば便乗的に賃 金カットが横行するようだと連合としても態度を変えざるを得ないでしょう。 そう考えると、いかに個別労使中心の取り組みとは言っても、一定の社会合意 が必要であると言えそうです。 加えて、これを必ずしも緊急避難と位置付けなくてもいいのではないかとい う気もします。ここで所定短縮したら、今度操業が回復してきたら所定を元に 戻すのではなく、残業で対応するのです。もちろん、所定短縮してあった分を 残業する場合は割増はなしということでもいいでしょう。そうすれば、その後 また操業が低下したときに、繰り返し所定短縮などという面倒なことをしなく ても、残業減で対応できるからです。たしかに、雇用を増やさなければならな い情勢の中で残業とはなにごとかという批判は足元ではあるでしょうが、少し 長い目で見ると、80年代後半〜90年代前半の時短騒ぎでかなりの部分を失 ってしまった残業時間の弾力性を回復しておいて損はないように思います。 (次回は12月20日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/ の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |