|
=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成13年03月22日発行 通巻048号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 職種ミスマッチとぜいたく失業 >>> =================================== 昨年末から、東京労働局は、管内の公共職業安定所における職種別の求人・ 求職の集計結果を公開しています。「求人・求職バランスシート」と名づけら れたこのデータ、いわゆる「職種のミスマッチ」の実態がわかりやすい形で提 示されており、たいへん興味深いものです。 失業については、需給要因、すなわち景気後退期に人手が過剰になることで 発生する失業のほかに、ミスマッチによる失業があり、さらに、ミスマッチに は、地理的ミスマッチ、賃金ミスマッチ、職種ミスマッチ、年齢ミスマッチな ど、さまざまなミスマッチがあると言われています。現在、雇用失業情勢がた いへん悪くなっているわけですが、そのかなりの部分はミスマッチによるもの であり、その対策が急務であるというのが一般的な見方になっているようです。 特に、it関連などを中心に、必要とされる能力を持った人材が不足している という「能力のミスマッチ」が問題だという声が高まっており、能力開発、職 業訓練の必要性が叫ばれています。 とはいえ、景気が良くなって人手が足りなくなってくれば、ミスマッチのか なりの部分は賃金の上昇や内部育成の強化などによって解消されてしまうのが 現実なので、需給要因とミスマッチ要因を区別することは実際は難しいことに 注意が必要です。現状のような経済不振、買い手市場の中では、「必要な技能 を持つ人材を安価に調達したい」という求人側の意図が強く働くため、どうし ても職種ミスマッチ(現実には賃金ミスマッチでもある)が発生しやすくなり ます。これが本当に人手不足になり、どうしてもその技能を持つ人材が必要だ ということになると、企業はとりあえず素養のありそうな人を採用して、その 後に内部で育成するという行動に向かいますので、おのずとミスマッチも縮小 するわけです。 また、職安は労働市場における調整機能の主役であるには違いありませんが、 必ずしも全体にわたって主力選手というわけではありません。特に、最近では リクルートのような民間業者も活躍しており、中でも高度な職業に関しては職 安よりも民間業者の方が大きなプレゼンスを持っていることは確実なので、職 安のデータは、傾向は示しているにしても、全体を代表しているとはおよそ言 えなくなっています。 こうした前提を確認した上で、東京労働局の「バランスシート」を見てみる と、それでもなかなか面白い実態が見えてきます。 これは昨年9月分から公開がはじまり、最新データは昨年12月のものです が、4ヶ月間の推移を見てもかなり安定的なので、議論の材料になりうる資料 だろうと思います。以下、特記しない限り一般(フルタイム)常用雇用におけ る12月のデータを見ていきますが、全体的には、一般常用は9月から12月 で求人は12万2千人から11万8千人と若干減少しているのに対し、求職は 18万5千人から16万5千人と大幅に減少していますので、全体的には需給 は改善しているといえそうです。また、パート常用を見ると、求人が44,106人 から44,305人と横ばいなのに対して、求職は47,805人から41,959人に減少して、 すでに有効求人倍率が1倍を上回っている状況です。 問題の職種別ミスマッチを見ていきますと、専門職・技術職は29,242人の求 人に対して求職が26,177人と、あまり大きくはありませんが人手不足という状 況が見て取れます。他には、販売の職業が求人25,509人に対して求職23,746人、 運輸・通信(ほとんどは運輸)が求人8,405人に対して求職7,106人と、人手不 足傾向のようです。 これに対して、管理的職業は求人325人に対して求職1,447人、サービス業は 9,523に対して10,670、生産工程・労務の職業は20,855に対して32,938、事務 的職業に至っては18,035人の求人に56,770人が殺到しているという状態で、世 間でいわれる「専門・技術職不足、現業・事務職過剰」という状況は当たって いるように見受けられます。事務的職業はパートでも10,290人の求人に対して 求職が13,929人とかなり上回っており、事務職の過剰は相当なものがあります。 細部を見ていきますと、専門・技術職ではやはり情報処理技術者が11,310人 の求人に対して求職が3,139人と圧倒的に不足。医師、薬剤師、保健婦などの 医療業務も、2,749に対して1,983と人手不足で、これは相変わらず看護婦不足 ということなのでしょう。それに対して、「デザイナー等」は、797人の求人 に対して3,794人の求職と大幅な供給過剰で、いまや人気職業ナンバーワンと いう印象のあるグラフィック・デザイナーやインテリア・コーディネーターは、 すでに完全に余っているという感じです。 事務的職業は大幅に人余りですが、実はその内訳を見ると、人余りのほとん どは一般事務員と会計事務員で、営業・販売関連事務員や事務用機器操作は人 手不足になっており、パートでもその傾向は明らかです。 サービス業について云えば、飲食物調理や接客などは、一般常用では求人倍 率0.6倍程度の人余りなのに対し、パート常用では求人倍率3倍程度という 人手不足になっていて、この分野でのパート代替は活発に進んでいるようです。 また、生活衛生サービスという聞きなれない仕事が、求人3,219に対して求職 850と大幅な人手不足になっています。これは何かというと、そのかなりの部 分を占めるのが美容師と美容関連、あるいはクリーニングやランドリーといっ た仕事で、この分野がかなりの成長産業であることが伺えるとともに、無資格 「美容師」問題の表面化によって、美容師の有資格者に対するニーズが高まっ ているという事情もありそうです。意外なのは、ビルメンが求人792人に対し 求職2,252人と大幅に人余りになっていることですが、これは保安の職業が求 人5,943人に対して求職1,547人と大幅な不足になっていることとセットで考え る必要がありそうです。 「生産工程・労務の職業」も、良く見てみると、分類困難な「その他の労務 の職業」が求人2,143人に対して求職12,124人となっており、供給過剰のほとん どがここに含まれています。求人側は職種を明記して求人するのに対し、特に 職業経験がなく、職種明記できない求職が多いということだと思われます。職 種のはっきりした求人求職については案外バランスしており、繊維関係・印刷 関係といった構造的問題のある職種が人余りで、電気機械・電気作業が不足と いうのが目立つ程度です。建設関連は、建設躯体工事(ビルなどの基礎や鉄骨、 外壁などの工事)が極端に不足(求人倍率6倍)、建設・土木も大幅に不足し ているのは、公共投資で支えられているというよりは、東京都という地域要因 による部分が大きいものと推測されます。 こうして見ますと、it、ハイテク、一部のサービスといった成長産業にお いては、専門職・技術職に限らず人手不足が見られ、その限りにおいては職業 訓練の重要性も肯定できそうです。ただし、その需要も不足も格別大きなもの ではないことにも留意が必要で、これだけでは雇用問題の解決には不十分であ るように思われます。これ以外に不足している職種はと云えば、販売、保安や 建設関連などの現業といった、いわゆる「3k」的な仕事ということになって います。また、パートの需要はかなり強くなっていますが、職種の内訳を見る と、専門・技術職の不足傾向が弱い(そもそも、ここではパートでの求人も求 職も少ない)ことを除けば、あとは一般常用とほどんど同様の傾向です。すな わち、現在の雇用失業情勢の悪化は、いわゆる「3k」などの不人気職種に就 職するよりは、事務職などの人気職種の空きを待った方がいいという「ぜいた く失業」という部分がむしろ大きいのではないかと推測されます。 したがって、経済環境が好転して全体的に労働需要が高まるということがな い限り、雇用失業情勢を改善するためには、成長分野の人材ニーズにこたえる ための人材育成に加えて、いわゆる「3k」など、不人気職種への就職を促進 していく必要がありそうです。こうした分野の労働条件や就労環境の改善を進 めるほか、社会的に必要不可欠な役割を担う仕事として、社会的地位の向上や イメージアップをはかっていくことが望まれます。 (次回は3月26日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659 の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。その際は、「労務屋の労働雑感」からの転載・引 用であることと、まぐまぐのid(0000049801)の記載をお願いします。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |