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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成14年11月28日発行 通巻197号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 春闘「第二の終焉」 >>> =================================== 連合は、この19日に開かれた中央委員会で、来春闘の闘争方針を決定しま した。内容を見ると、「最重点課題」として「政策制度を中心とした景気回復 と雇用確保」「賃金カーブ確保と賃金の底上げ」「パートの処遇改善と均等待 遇推進」「不払い残業撲滅と時短推進」の4つを掲げています。さらに、その 具体化のための共闘課題として「賃金カーブ維持分の確認と確保」「全従業員 対象の企業内最賃協定」「時間管理協定化」の「ミニマム運動課題」をあげま した。そして、具体的な賃金要求については、「賃金カーブ確保を前提に産別 自決」として、賃金カーブ維持分相当として年額57,000円を示したものの、ベ アの統一要求の設定を見送りました。その一方で、最低到達目標として35歳、 30歳のポイント賃金を示しています。 これを見ると、ベアの統一要求目標を見送り、「賃金カーブ維持」に大きく ウェイトをかけた方針で、まずは徹底した守りの闘争という印象です。今年、 昨年と経済低迷・企業業績不振が続く中で賃金カーブ維持分も確保できず、来 年も環境の改善が見込めないとあっては、まさかマイナスベアをこれ以内にと どめてください、などという要求もできないでしょうから、これも致し方ない 選択なのかもしれません。もっとも、物価が下落を続けるデフレ下においては、 名目ベアゼロでも実質では物価下落分のベアがあるわけですから、それなりの 向上ははかれることも事実です。 とはいえ、今回の方針は、従来のような「世間水準」をつくることを通じて 賃上げを横断的に波及させていくという運動論は完全に捨てた形になっている といっていいでしょう。それに代わって、今回の方針では、「底上げ」「ミニ マム」「格差是正」などのことばが目立ちます。従来春闘相場の形成役となっ てきた金属産業や私鉄、公益などが国際競争の激化や規制緩和などの影響でベ アの獲得が困難になる中で、従来から金属産業を中心に一部産別が提唱してい た「ミニマム確保の取り組み」にシフトしようということでしょう。 しかし、現実の交渉においては、これもベア以上に難しい課題になるかもし れません。 賃金のミニマム水準は、初任給で18歳148,000円、25歳167,000円などと なっており、かなり現実を直視したレベルに設定されていますが、そもそも、 このレベルにも達しない企業というのは、すでに相当程度経営が厳しい状況に あることが容易に想像できます。となると、賃金引き上げ余力のない企業に引 き上げを迫ることになり、これはそう簡単な話ではありません。実際、ここ数 年の結果を見ても、連合の格差是正の取り組みにもかかわらず、中小は大企業 の賃上げに追いついていけなくなっているのが現実です。さらに、現在のよう に雇用失業情勢が厳しい中では、労働力の調達も比較的容易ですから、なおさ ら「初任給」の引き上げは進みにくい状況といえるでしょう。 また、「賃金カーブ維持分の確認」というのも容易ではありません。大企業 であれば、賃金制度もきちんとできていますから、賃金カーブ維持分を計算し、 確認することはそれほど困難ではありません。もちろん、「わが社には定昇は ない」という経営者は多いですが、賃金カーブは現実に存在するわけですから、 否定しきることも難しいでしょう。問題は小規模な企業で、そもそも賃金制度 すら存在せず、社長が仕事ぶりや業績を見て決めているとか、賃金制度はあっ ても、現実の賃金は個別事情によって必ずしも制度どおりになっていないとい うケースの方がむしろ多いでしょう。現実の問題として、ある規模以下であれ ば、硬直的に制度を固めるよりは、個別判断で柔軟に決めたほうがかえって適 切な賃金になるわけです。こういう企業で、実在者の賃金を調べてプロットし て強引に賃金カーブをひいてもあまり意味はないはずです。ましてやそれを協 定などで確認するというのは困難でしょう。 そのほかも、たとえば「労働時間管理の協定化」というのも妙な話で、そも そも時間外協定はまず必ず結ばれているはずですし、就業規則や労働法規を遵 守します、ということを改めて協定するのもおかしな話です。これはおそらく 具体的なモデルが示されるでしょうから、注目してみたいと思います。 あるいは、「全従業員対象の最賃協定」というのも、現実にはなかなか難し いだろうと思います。これは要するにパートタイマーまで含んだ最賃協定を結 ぶことで、パートの待遇改善をすすめようというものでしょうが、そもそもパ ートを組織化していない労組がパートの最賃を協定するというのに違和感があ ります。さらに、パートの賃金はなんといっても外部市場価格の大きな影響を 受けますから、一律の協定になじむのかという問題があります。現実を見ても、 最賃協定を結んでいる企業労使はそれほど多いわけではなく、これが大きく進 展するとはなかなか思えません。 そうは言っても、難しいからやらないというのでは何も進まないわけですか ら、連合がこうした方針を掲げてチャレンジしようという姿勢は立派なものだ と思います。ただ、難しい理由の中には「理屈があわない」というものもある ので、そこは再考が必要ではないでしょうか。 いずれにしても、今回の連合の方針は、ベア中心からミニマム中心へと大き く舵を切ったものだといえるでしょう。その背景にはさまざまな事情があり、 必ずしも不可逆的な変化だとまでは言い切れないかもしれません。とはいえ、 おそらくこれはオイルショック時に「大幅賃上げ」から「経済との整合性」に 舵を切ったのに匹敵する大きな方向転換といえそうです。その当時、それまで の春闘を指導してきた立役者である太田薫氏が「春闘の終焉」という本を出し、 春闘終焉論が取り沙汰されました。それにならえば、今回の方針転換は、春闘 の「第二の終焉」といえるかもしれません。 (次回は12月2日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)ID=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.roumuya.net/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.roumuya.net/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.roumuya.net の「労働掲示板」に、 ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |