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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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        平成14年05月02日発行 通巻158号
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          <<< 企業「本社」の就労実態 >>>

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 総合規制改革会議をはじめとする規制改革論議の中で、主だった経済的規制
についての議論が一巡したこともあってか、労働分野の規制改革についての議
論が従来以上に活発になっているようです。とりわけ民間からの要望が強いの
が「有期雇用」「派遣労働」「裁量労働」の三点セットですが、とりわけホワ
イトカラーについて労働時間(拘束時間)ではなく成果で処遇しようとの考え
方から、裁量労働の抜本的な規制改革を求める意見が強いようです。とはいえ、
労働界などを中心に、「サービス残業の合法化」「従来以上の長時間労働につ
ながる」との反対意見も強く、議論は膠着している感があります。
 裁量労働の規制緩和論者が念頭に置いているのは、いわゆる「本社」部門で
事務的・技術的業務に携わる、「成果と労働時間が必ずしも連動しない」人た
ちです。まあ、実際にはある程度の連動は当然あるでしょうが、その関係があ
まり強くない人たちということになります。
 こうした議論にあたっては、現実にこういう人たちがどのような就労実態に
あるのかをある程度踏まえておく必要があるでしょう。少し古いのですが、平
成12年6月に東京労働局が東京所在のいわゆる「本社」事業所を対象に調査、
集計したデータがあるので、これを見ていきたいと思います。時間外労働時間
についてのデータがないのが物足りないのですが、調査対象事業所は約3000社、
うち約2000社から回答を得たということでサンプル数もかなり多く、また、事
業所の規模を見ると従業員300人以上で7割、1000人以上で3割を占めており、
いわゆる「本社」のイメージに概ね一致しているように思われますので、それ
なりに参考となるデータではないかと思います。
 はじめに所定労働時間について簡単に見ておきますと、99.8%が一日8時間、
一週40時間以下になっています。年間休日数では6割以上が年間120日
(すべての土日、国民の祝日に加えて、さらに若干の休日(創立記念日やメー
デーなど)を確保できる水準)以上で、7割以上の事業所が原則すべての土曜・
日曜が休日となっており、99.8%が年平均で週あたり2日以上の休日を設定し
ているという結果になっています。その結果、年間の所定労働時間は、1900時
間を下回る企業が6割以上、13.4%が1800時間を下回っており、2000時間を上
回るのは7%にとどまっています。
 さて問題の時間外労働についてですが、この調査では労働時間の把握方法、
所定外労働および割増賃金支払の管理方法、所定外労働削減策について質問し
ています。
 まず労働時間の把握の方法ですが、「出勤簿」の利用が56%と最も多く、
次いで「届出書」が30%、「タイムカード」が28%となっています。複数
方法で把握している事業所も多いようです。昔ながらの方法が多いわけですが、
IT技術を生かした「IDカード等」による把握が13%、「社内LAN」が
3%と、新しい方法による管理も広がりつつあるようです。「労働時間の記録
を行なっていない」事業所は1%を切っていますので、労働時間の把握はほぼ
すべての事業所で何らかの形で行なわれているといえるようです。
 いっぽうで、時間外労働および割増賃金支払の管理については、労働者の自
己申告ベースのものが多く、「自己申告をそのまま時間外労働時間とする」事
業所が11%、「自己申告を管理職が確認する」が49%と、あわせて60%
にのぼっています。タイムカードベースによるものは、「タイムカードをその
まま」が16%、「タイムカードを管理職が確認」が23%で、約4割となっ
ています。
 時間外労働の実施に関しては、就業規則などには「上司が命じた場合に行な
わせる」としている企業がほとんどだと思われますが、実態を見ると、「事前
に管理職が指示した場合のみ実施」が14%、「その都度事前に申請して管理
職が承認」が33%と、管理職の指示や承認によるものは4割を下回っていま
す。現実には、ほとんどの企業が時間外労働の実施を本人まかせにしているの
が実情ではないかと思われます。
 この結果を見ると、「労働時間は何らかの方法で把握されて」おり、「時間
外労働の実施は本人まかせ」だが、「割増賃金支払については上司の確認がは
いる」というのが典型的なパターンということになりそうです。
 なお、時間外労働削減のための企業の取り組みとしては、「特になし」とし
た5%を除けば何らかの施策が打たれています。
 最も多いのは「管理職への啓発」で7割を超えています。「間接部門の合理
化・OA化」「社員への啓発」も過半数となっています。制度面での取り組み
としては「変形労働時間制・フレックスタイム制の導入」が約3割、「ノー残
業デーの実施」が25%となっている一方、「36協定の上限引き下げ」「割
増賃金率を法定以上に設定」は1割を切っています。「要員増」も20%あり
ますが、要員増をともなわない「業務計画の改善」の34%を下回っています。
ちなみに「労使協議による削減への取り組み」をあげた企業も27%あります
が、回答事業所の属性を見ると過半数が「労組あり」となっていますので、こ
れはいささか淋しい結果であるといえそうです。
 さて、これを見て裁量労働の規制緩和をどう考えるかですが、さすがに時間
外労働そのものの実情がこれではわからないので、なかなか明確には言えそう
もありません。ただ、少なくとも、時間外労働が本人の裁量に任されており、
その認定も自己申告ベースという点では、一応裁量労働になじむ働き方に近づ
いているとは言えそうです。すでに所定労働時間もそれなりに短いものになっ
ていますし、労働時間の把握や、時間外労働の削減努力といった面での管理体
制も一応できているようです。これで時間外労働そのものが、身体的にハード
ワークではなく、ある程度なら就労時間中にも小休憩(喫煙時間など)を自分
の裁量で確保できるホワイトカラー業務としてリーズナブルな範囲におさまっ
ているのであれば、裁量労働拡大の素地はそれなりに整っていると考えてもい
いのではないでしょうか。
 もちろん、企業により、時期により、あるいは個別の部署、人によってケー
スは多様なので、なかなか一律には考えにくい問題であることも事実です。と
はいえ、回答企業の過半数に組合があるにも関わらず、労使で時間外労働削減
に取り組んでいるという回答が4分の1程度しかないということでは、労組の
反対意見にそのまま耳を傾けようという気にはなかなかならない、ということ
だけは言えるように思います。

                 (次回は5月9日に配信する予定です)
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