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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成14年02月04日発行 通巻135号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 今度は当たるか人口推計 >>> =================================== 国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口(平成14 年1月推計)」は、従来の推計を大幅に修正するものとなりました。内容は衝 撃的と言えば衝撃的ですが、その一方で、すでに薄々「こうだろう」と思って いたものが追認されたという感もあります。いずれにしても、これまでの推計 と大きく異なるものを出すということ自体が、今の官庁組織の中ではかなり大 胆な行動でしょうから、こうした推計が公表されたことをまずは高く評価すべ きなのだろうと思います。 中位推計の仮定を見てみますと、まず、晩婚化に関しては、昭和25年出生 コーホート(今年52歳)の24.4歳から昭和60年出生コーホート(今年17 歳)の27.8歳まで進み、その後は一定。生涯未婚率は、同じく4.9%から16.8 %まで進んで一定。完結出生児数は、夫婦で2.14人から1.72人、全女子で1.98 から1.39まで減少して一定となると仮定されています。この結果、合計特殊出 生率は平成19年の1.31で底を打ち、平成61年には1.39までゆるやかに回復 するとされています。 これがどのくらい変わったのかということを、前回の平成9年1月推計と比 較してみますと、前回推計では、昭和55年出生コーホート、すなわちその当 時の「今年17歳」、現在の「今年22歳」に関して、晩婚化が27.4歳、生涯 未婚率が13.8%、完結出生児数が夫婦で平均1.96人、全女性で1.61人でその後 一定と仮定していました。 こうして見ると、今回大きく変更されたのが、「子どもを生む数」であるこ とがわかります。将来の完結出生児数が、前回推計では夫婦で平均1.96人、全 女性で1.61人だったのが、今回推計では夫婦で平均1.72人、全女性で1.39人に 下方修正されているわけです。 それでは実態はどうかと言えば、厚生労働省の人口動態調査によれば、平成 12年の平均初婚年齢は男が28.8歳、女が27.0歳です。生涯未婚率は平成7年 国勢調査のちょっと古いデータですが、男子9.07%、女子5.28%となっていま す。平成12年国勢調査結果による生涯未婚率は見つかりませんでしたが、30 〜34歳の未婚率は男性が42.9%、女性が26.6%と、平成7年に比べそれぞれ 5.6ポイント,6.9ポイント上昇しているそうですから、生涯未婚率もかなり上 がっているでしょう。そして、国立社会保障・人口問題研の第11回出生動向 基本調査によれば、これまた平成9年と少し古いですが、結婚持続期間15〜19 年における夫婦の完結出生児数は2.21人です。 もともと、前回推計の仮定は楽観的すぎるとの批判もあったわけですが、そ れなりに根拠はあったわけで、この「結婚持続期間15〜19年における夫婦の完 結出生児数」は、1967年調査までは一貫して低下を続けていましたが、それ以 降は1972年2.20、1977年2.19、1982年2.23、1987年2.19、1992年2.21、1997年 2.21ときわめて安定的に推移してきました。これでは、将来に向けてもこの傾 向が続くだろうと考えるのも無理はないところです。 さらに、同じ調査では、子ども数についての考え方(理想子ども数と予定子 ども数)も調査しているのですが、これで「結婚10年未満の夫婦の理想子ど も数」を見ると、1977年2.49、1982年2.57、1987年2.59、1992年2.51、1997年 2.40と、これまた非常に安定的な推移を見せています。「結婚10年未満の夫 婦の予定子ども数」も、1977年2.13、1982年2.21、1987年2.27、1992年2.16、 1997年2.12という安定ぶりですから、前回推計段階では「少子化の主因は晩婚 化・未婚化であり、今後も結婚すれば安定的に2人くらいの子どもを生む」と 考えたのもやむを得ないと云えそうです。 ところが、現実にはこうした趨勢にもとづく推計は外れ続けました。これは 結局のところ、「理想」「予定」と「実際」との間のギャップが広がってきた ということに他なりません。データが安定的に推移する中での構造変化が見過 ごされてきたということでしょう。この点について、フリージャーナリストの 鈴木りえこ女史は鮮やかに喝破しています「今では、若い人が『理想のこども 数が3人』などというのは、『都心で3階建て、プール付きの家に住みたい』 というのと同じことに過ぎない」。要するに、理想というのは、育児に必要な おカネがそれなりにあり、家も十分広く、託児所、保育所などのインフラも整 備されていて、特段の苦労も我慢もないのなら、3人くらいいればいいな、と いうくらいのものだ、というわけです。予定の方には、どうしても世間の「や はり2人くらいは」といった通念が入り込みますから、ゼロとか1とかいう答 が出てきにくいという事情もあるでしょう。こどもがほしいということの意味 や、切実さが変わってしまったのです。 これは、実は先からひいている「第11回出生動向基本調査」の結果にも、 その一端らしきものが出てきてはいます。たとえば、「予定が理想を下回る理 由」を見てみると、若い人は圧倒的に「おカネがかかる」というのが多く、全 体ではこれと年齢的な理由をあげる人が多いのですが、「自分の趣味やレジャ ーと両立しないから」という理由をあげる人が、1987年2.0%、1992年3.4%、 1997年5.7%と倍々ゲームに近い伸びを見せており、特に20代後半について は、97年には12.8%がこれをあげています。なかなか云いにくい理由であるこ とを考えると、この数字はまさに前述のような意識の変化が進んでいることを 示しているように思われます。 こういう意識変化がさらに進むと考えると、実は今回の中位推計の仮定も実 は甘すぎた、ということになる可能性もないとはいえません。ちなみに今回の 低位推計の仮定はそれぞれ28.7歳、22.6%、1.49人、1.12人となっています。 さすがにここまでは行かないだろうと思う反面、これまでのことを考えるとこ れもありかなという気もします。この場合、合計特殊出生率は下がり続け、平 成61年には実に1.10まで下がるのだそうです。まあ、昭和50年代には、例 えば三全総では2001年の日本の人口を1億3000万人と予測していたと いう話もあるらしいので、出生率もいつなんどき増加に転じてもおかしくはな いのですが。 この推計をもとにして、社会保障、特に年金制度などは、新たな再設計を迫 られることになるでしょう。もともと、これまでの推計の甘さが年金不信の一 因となっていたということはあるようなので、これは好ましい話だということ になると思います。国民が「これなら持続可能」と安心できるような社会保障 改革の方向性を示すことは、国民の不安感を軽減し、消費支出増、ひいては景 気の回復にもつながる話だと思います。 それに加えて、少子化対策についても、改めて見直しが必要ではないでしょ うか。現在の少子化対策は、私には「働き方」「仕事と育児の両立」にいささ か偏りすぎているように思えます。もちろん、それは重要なアイテムであると は思いますが、もっと総合的・一般的な育児のコストダウン、負担軽減策が必 要であると考えられるからです。 (次回は2月7日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/ の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |