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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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        平成14年03月18日発行 通巻146号
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 ベアゼロ、賃金制度維持、雇用安定に関する労使共同メッセージ、最賃引き
上げ、これで電機各社の春季労使交渉は事実上決着しました。
 ところがその翌日、日立が「定期昇給実施後の賃金を、一年間一律5%カッ
トする」ことを労組に提案して交渉に入るというニュースが入ってきました。
そのほか、現在までの報道で目についただけでも、松下電器、東芝、富士通の
各社が、やはり一年間、時間外労働手当の割増率(割賃)の引き下げなどの手
当類の見直しを交渉するとしているほか、松下電器、nec、東芝の各社は定
昇の実施を半年間凍結することを提案するとのことです。デフレ下の春季労使
交渉で、ベアゼロでも実質ベアだったこともあり、時限的とはいえこうした事
実上のベダの動きが出てくるのは十分考えられる話ではありますが、それにし
ても、それならなぜ春季労使交渉で議論しなかったのか、なぜ13日に示した
ような回答が行なわれ、受諾されたのかというのが少々疑問に感じられるとこ
ろです。常識的に考えれば、こうした状況で13日の回答について執行部から
妥結提案を受けた組合員はいささか戸惑うのではないかと思われます(もちろ
ん、そうならないようにしっかり説明がされているとは思いますが)。
 関係者の話などを見ると、日立の場合は「春季労使交渉の中でも話はしたが、
回答指定日までの限られた時間では議論が尽くせないと考えた」と云っていま
す。割賃の改定などを提案している企業では、「労組が現行制度を前提とした
交渉の中で制度変更を持ち出すのはルール違反と反発した」ということです。
要するに、経営サイドとしては、春季労使交渉で要求のあったのは「賃金制度
維持」なのだから、これについての交渉を実施して回答した。そして、改めて
経営再建のための施策について提案し、交渉するのだ、ということになるので
しょう。その方が上部団体の介入もないし、スト権もはずれているし、なにか
と好都合だという判断もあるかも知れません。
 だとすると、このような不自然な形になったのは労組サイドの都合が大きく、
経営はそれに付き合ったということなのかも知れません。
 電機連合は産別の中でも最も先駆的な考え方を持っていることは周知のとお
りで、最近でもワークシェアリングや職種別賃金などについて、労組としては
かなり思い切った内容の提言や取り組みを行なっていますが、その一方で、業
界内での横並びという点に関しては非常に保守的な一面も持っています。電機
連合は単産として業界全体で労働問題を考えていこう、業界内での人の移動や
能力開発を通じて業界内で雇用と労働条件を守っていこうという基本姿勢をと
っていますので、たしかに賃金については業界横断的な職種別の相場が必要で
あるという理屈になるでしょう。
 大手16社の回答に対する電機連合のコメントでは、まずは雇用安定共同宣
言、定昇確保、最賃引き上げで横並びの成果を上げたことが述べられています。
そして、終わりの方で、「『ベアゼロ』にも厳しい対応を示した経営側の姿勢
の背景には、ますます激しさを増す国際競争の観点が色濃く反映されたものと
考えられ、…現行の賃金・処遇のあり方が引き続いて争点になるものと想定さ
れます」との一文がありますが、「引き続いて争点になる」というところに、
電機連合の春闘としてはこれで終わりだが、あとは各社が個別に、スト権も外
れて、引き続き交渉を続けることになるだろう、という意図がこめられている
のでしょうか。
 結局のところ、電機産業においては、春闘は産別のものであると考えられて
いるということなのでしょう。経営再建策や賃金制度の変更などについては、
これは各企業・単組のものであって、以前から継続的に議論されていることで
あり、今次はそうした中で電機連合の春季労使交渉が並行して行なわれ、経営
が一定の配慮を示したと考えれば、一応この不思議な現象も納得はできます。
 とはいえ、外部の目で見ると問題もあるように感じます。こうした理屈を理
解していない一般大衆から見れば、定昇確保の回答の翌日すぐにベダの話が始
まるというのは、いかにも茶番に見えます。回答だけではなく、スト権投票や
歯止めの設定といった一連の闘争の手順までも、自己満足だけのための茶番に
見えてしまうのではないでしょうか。横並びの結果にこだわるあまり形だけを
整えても、根元から信頼を失うのでは元も子もないのではないでしょうか。
 また、言葉はよくありませんが、やはり「世間を欺いた」という批判もある
のではないかと思います。たしかに、交渉の途中経過として、はじめに紹介し
たような「時間が足りない」などの情報は断片的に出てきてはいますので、回
答日以降もそうした交渉が別途あるだろうということは示唆されていると言え
るかも知れません。
 しかし、これらの再建策や制度変更、定昇実施時期なども春季労使交渉の中
で解決すべく話し合っていたとしたら、その状況が世間に伝わることで、他産
業の労使にも影響を与えたかも知れません。ベアが出たのは日産自動車だけで
すが、造船重機や自動車などで業績の不振な企業では、やはりベダに踏み込む
ところがなかったとは言い切れないでしょう。逆に言えば、そのようなマイナ
スの影響を与えないためにこのような方法をとったということかも知れません。
それは作戦としてはありうるかも知れませんが、やはり世間を欺くものである
には違いないのではないでしょうか。
 本当に、ここまでしてまで横並びの形式にこだわる必要があるのでしょうか。
もちろん各産業労使の自由であるわけですが、余計なお世話ながら心配になっ
てしまうのは私だけでしょうか。

   (3月21日は「春分の日」のため配信をお休みさせていただきます。
                 次回は3月25日に配信する予定です)
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