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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成14年01月21日発行 通巻131号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 公的雇用での若年雇用対策を急げ >>> =================================== 厚生労働省の発表によれば、3月卒業予定の高卒の就職内定率は、昨年11 月末現在で、前年同期を5.5ポイント下回る63・4%と過去最低の水準に あるということです。求人倍率も1を割り込んで0.98倍で、11月時点で 1を割っているのも初めてとのこと。内定していない高校生は約7万9000 人にのぼり、厚生労働省は急遽全国の高校に就職支援相談員の派遣を決めまし た。 いっぽう、大卒の方は、昨年12月1日現在(高卒が11月末で大卒が12 月初というのが謎です)は、前年同期比1.5ポイント増の76・7%となっ ています。こちらは約9万1000人が未内定で、人数的にはやはり深刻です。 そもそも、数年前から従来なら高卒の就職先だった職場を大卒が侵食している ことが問題視されているわけですから、トータルで下がっているようであれば 大卒だけが改善しても喜べないということになるでしょう。 深尾光洋氏は、先日開催された経済社会総合研究所の経済政策フォーラムで、 わが国のこうした現状に触れ、「かつて中国は文化大革命で10年分くらいの 人的資源を破壊してしまったが、今やわが国にも同じ状況が起こりつつある」 という懸念を示しました。金融関係者に言われるまでもなく、労働関係者もす でに深刻な危機感を持っているわけですが、どうにもマスコミの関心が低いこ とや、「パラサイト・シングルが増えているから」といった皮相な見方もあっ てか、なかなか世間に問題意識が共有されません。山田昌弘先生の「パラサイ ト・シングルの時代」はある意味画期的な本ですが、世間にこうした気分が広 がったのは、山田氏の「パラサイト・シングル」というネーミングによる部分 は結構ありそうで、山田氏も罪作りなことをしたものだという気もします。 民間企業では、現在の雇用をなんとか維持・確保していくために、賃金の引 き下げによるワークシェアリングにまで踏み込もうという状況です。これはも ちろん、これ以上の雇用失業情勢の悪化を食い止め、社会不安の深刻化による 経済の後退を防ぐために、ぜひとも必要な取り組みですが、これはすなわち、 新たに労働市場に参入してくる新卒者を中心とした若年層に対して、十分な就 労の機会が提供されない、ということを意味します。 とはいえ、それでは人件費の高い中高年を解雇できるようにして、若年をよ り多く雇用すればいいというのは幻想で、どの企業も人を減らしたがっている 現状においては、おそらくは解雇ばかりが行われて採用ははかばかしくないと いうことになるでしょう。「解雇のルールがはっきりして解雇が容易になれば 新規採用を増やす」と回答した企業が多かった、というアンケート調査の結果 がたびたび持ち出されますが、あの調査を良く見ると、企業は「新規採用を増 やす」とは言っていても、トータルの雇用を増やすとは言っていません。そも そも、若年にしたところで、中高年が放り出されたところに入り込んでも、明 日はわが身ということでは意気も上がらないのではないでしょうか。 それでは早期引退優遇か、ということになりますが、なにしろ年金が出なく なるからなんとか65歳まで再雇用せよ、というのが大問題になっているわけ ですから、ちょっとこれもできそうもありません。 結局のところ、若年雇用対策は、現時点では公的雇用に一定の役割を果たし てもらうしかないように思います。 今、消費低迷の理由として、消費者に広く強く訴える魅力的な商品の不在が 言われます。実際、経済財政諮問会議の雇用創出策も、島田晴雄先生の「サー ビス産業で530万人」というものです。そう考えてみると、公的サービスの 分野においては、国民のニーズが強い、あるいは増加しているにもかかわらず、 十分なサービスが提供されていないケースが目立つように思います。大阪大学 の猪木武徳教授によれば、公共部門就業者の割合は、わが国ではかなり多めに 数字をとっても一桁台で、oecd諸国の中で最低なのだそうです。デンマー クやスウェーデンが4割に達しているのとは単純に比較できないにしても、ア メリカやイギリスでも15%前後だということですから、日本の公的雇用は決 して多くはなく、したがってサービスは不足していても不思議ではありません。 たとえば、警察のサービスはどうでしょうか。日経連の今年の労問研報告を 読みますと、いささか唐突な感はありますが、国民が安心して生活するために、 治安の悪化を防止するよう、警察官を増員せよとわざわざ書いてあります。確 かに、今国民がもっとも求めているものの一つは「安心、安全」でしょう。と ころが、不況の長期化もあって、治安情勢は確実に悪化しており、警察のサー ビスはそれについていけていません。 桶川ストーカー殺人事件で、警察の対応の悪さが問題になりました。あのケ ースは確かに論外ですが、しかしその背景には、「ストーカー被害の訴えに全 部まともに相手をしたら、警察官が不眠不休で働いても足りない」という人員 不足の実態があるといいます。実際、ストーカー被害などの相談や訴えは急増 しており、しかもその大半はまったく犯罪性のない、単なる思い込みや取り越 し苦労だといいますから、訴える方は真剣でも、対応する方は「またか」と思 ってしまうような状況すらあるというのです。 それでは、ニーズがあるのに警察官を増やせないのはなぜか、といえば、そ れはひとえに予算がないから、ということのようです。実際、各都道府県の警 察本部は毎年の警察官採用試験の結果を公表していますが、競争倍率は軒並み 十倍から数十倍となっています。これだけの倍率になれば、質的にもかなりい い人が入っていると言えるでしょう。警察官はかなりの3k職場ですが、それ でも就職希望者はたくさんいるのです。 警察に限らず、育児や保育、介護、教育、徴税、あるいは環境保全などをは じめ、国民が必要としているにもかかわらず充足されていない公的サービスが、 まだまだ存在するというのが実感だと思います。こうした分野を若年雇用の受 け皿として活用すべきではないでしょうか。民間でできるものは民間に委ねる ことが大原則ではありますが、行政が担うべきサービスもあることも事実です。 たしかに、日本の公的雇用は、実際には前述のとおり国際的に見ても決して多 くないのですが、特殊法人などに代表されるようにムダも多く、それが国民の 目に目立つので、さらに公的雇用を増加させるという意見は同意を得にくいこ とは事実です。日経連の労問研報告も、わざわざ「時限雇用措置」と断ってい るほどで、これには「行政頼り」という批判を受けたくないとの気持ちもある のかも知れません。しかし、時限雇用では若年雇用対策としては意味がありま せん。大阪大学の小野善康先生が、1月10日付日経新聞の経済教室欄で「不 況期は長期の政府事業で労働力の活用を」「駐車違反の取締(などの時限雇用) では人的資本は蓄積されず、新需要も生まれない。…いつまでも臨時失業対策 のままで、やめれば再び失業者が増えるだけである」と述べられています。で あれば、本当に需要のある公的サービスで雇用を増やすことは有益なように思 われます。特に注意が必要なことは、そうした仕事の多くは、若者が一生をか けて取り組むに値する、立派な職業が多いということです。駐車違反の取締で は人的資本は蓄積されませんが、警察官として正規に採用され、経験と訓練を 積んでいけば、大いに人的資本が蓄積されるでしょう。 財源の問題はたしかにあります。しかし、従来のサービスの中で、相対的に 必要性の薄れたものは大胆に廃止・縮小したりするとか、可能なものは民営化 や民間委託するなどの施策をあわせて実施すれば、ある程度までは確保できる のではないでしょうか。 民間における労働需要が弱いときは、逆に考えれば、行政が優れた人材を獲 得する絶好のチャンスでもあります。経済の状況に応じて、民間部門と公的部 門が補完的な関係を持つことは、むしろ必要なことではないかと思います。 (次回は1月31日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)id=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/wallstreet/2659/ の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |