===================================

          *** 労務屋の労働雑感 ***

+++++++++++++++++++++++++++++++++++
        平成14年09月19日発行 通巻184号
+++++++++++++++++++++++++++++++++++

           <<< 組合費は高すぎる? >>>

===================================

 日経連が経団連と統合して4ヶ月近く経過しましたが、この12日に、新し
い団体(日本経団連)と連合の初めての懇談会が開催されました。16日付
「週刊労働ニュース」がそのもようを伝えています。
 記事によれば、連合のおもな主張点は「補正予算による景気回復策と雇用対
策」「パート労働者の処遇改善」「中長期的(多様就労型)ワークシェアリン
グの早期検討」ということだったようです。さらに笹森会長は相次ぐ企業不祥
事について「労組としてもチェック機能を果たす必要があり、反省している」
と述べたそうですが、これは反省の弁というよりは「チェック機能」への意欲
を示したものでしょう。
 日本経団連は、例年春季労使交渉に臨む経営サイドの基本方針などを討議し
てきた「労働問題研究委員会」は今後も継続(ただし、名称は変更するらしい)
するとした上で、ワークシェアリングや賃上げについては例によって「国際競
争力」の観点が重要との姿勢を示したようです。「労働問題研究委員会」につ
いては、実際に報告書を読んでみると、必ずしも労働問題にとどまらず、経営
課題や政策提言などもかなりの割合を占めていますし、おそらく新団体となっ
てさらに労働問題以外のウェートが高まるのでしょうから、名称はそろそろ変
更の時期なのかも知れません。
 さて、今回の懇談でなんといっても注目されるのは、日本経団連の奥田会長
の「組合費が高すぎる」という発言についてのやりとりです。
 問題の発言は、7月末に行われた日本経団連の夏季フォーラムの報道の中で、
日経新聞が、奥田会長が「組合費が高すぎる」「企業は必死にコスト削減をし
ているのに、組合はバブルの頃と変わっていない」「組合費を半額にすれば、
社会保障の増額にあてることができる」などと記者団に語ったと報じたもので
す。ごく小さい記事のうえ、他紙では報じられませんでしたので、詳細は判然
としないのですが、今回の懇談会で奥田会長が「釈明した」というのですから、
言ったことは言ったのでしょう。
 奥田氏の釈明内容は、「国も財政再建が必要、企業もがんばっていることを
考えると、家計も見直しが必要」であり、たとえば「塾にかかる費用などと並
べて組合費を取り上げた」ということのようです。連合サイドはこれに対し
「組合側では反響が大きい」「組合としても経費節減や専従役員の削減、スト
資金の返上など努力している」と反論したとか。
 議論の詳細な内容はわかりませんので、なんともいえない部分は大きいので
すが、「家計も見直しが必要」というのは、要するに不景気なんだから(ある
いは、社会保障の負担が増えるからその分)倹約しましょう、ということでし
ょう。ならば、組合も努力して組合費を下げれば、組合員も助かるではないか、
という考え方なのでしょうか。「組合費が高すぎる」の趣旨が「効率化の努力
が足りない」ということであれば、「努力している」という連合の反論もとり
あえずもっともだということになりそうです。
 とはいえ、この問題はそれで片付けてしまっていいのでしょうか。奥田氏自
身がどんな意図で発言したかは別として、労組としては、組合員が組合費につ
いてどのような感覚を持っているのか、あらためて反省してみる必要があるの
ではないでしょうか。多くの組合員は、実は内心「組合費は高すぎる」と感じ
ているかも知れません。
 もとより、労働組合というものは、組合員がお金を払ってサービスを買うと
いうものではないはずでしょう。一人ひとりの組合員が組合活動に「参加する」
ことが基本であり、組合費はそれに必要な費用を組合員が分担するものである
はずです。ところが、この基本的前提が、かなりの職場で崩壊しているのでは
ないかという印象があります。わが国における労組の組織率は下がる一方です
が、その中でも、相当割合の組合員は、ユニオン・ショップ協定によって、自
分の意思とは無関係に自動的に組合に加入しているというのが実態でしょう。
加えて、争議行為のような目に見える運動も減ってきて、組合員の組合活動へ
の参画意識が低下し、「組合活動は執行部がやるもの」という意識の組合員が
増えているのではないでしょうか。しかも、組合費はチェック・オフで、賃金
から天引きされるケースが多いでしょうから、人によっては、組合費は組合活
動参加の一環ではなく、あたかも税金や社会保険料などのように、「負担」で
あると感じているとしても不思議ではありません。そういう人は、「高い組合
費を払っているのに、メリットがない」といった意識を持っているのではない
でしょうか。
 もちろん、連合としても、先般の参議院選挙の結果を見るまでもなく、こう
した組合員の参画意識の低下に対する問題意識は持っていることでしょう。ま
た、これは理屈としては組合組織の内部の問題ですから、経営サイドが口出し
する問題ではないというのも筋だろうと思います。とはいえ、労組の求心力、
組織力が低下することは、経営サイドにとっても困った問題であることも一面
の事実です。
 今回の奥田氏の発言も、連合はじめ労組としては、こうした現状に対する警
鐘としてもっと重く受け止めるべきではないだろうかと思います。その上で、
「組合員は組合活動に積極的に取り組んでおり、活動の成果にそれなりに満足
している。組合費も組合活動参加の一環として、納得の上で払っている。した
がって、組合費は決して高くない」と、堂々たる反論ができるようになってほ
しいものだと思います。

(再開のごあいさつ)
 作者は、会社のミニ・サバティカルを無事終了いたしました。激励のメール
をいただいたみなさん、本当にありがとうございました。
 本号から、メールマガジン「労務屋の労働雑感」の発行を再開いたします。
今後は、オリジナルのエッセイを週1回(木曜日)、「労政時報」誌に連載の
エッセイ「労務屋一筆啓上」を隔週1回掲載してまいります。また、書評など
も随時掲載し、なるべく週2回の発行ペースを維持したいと考えております。
 今後とも、みなさまのご愛読と叱咤激励をよろしくお願いいたします。

 (9月23日は、「秋分の日」のため、発行をお休みさせていただきます。
                 次回は9月26日に配信する予定です)
===================================

◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され
 ています。(http://www.mag2.com)ID=0000049801

◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、
 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す
 る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。
 
◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。
 http://www.roumuya.net/mm/backn.html

◆登録・解除は、次のページからお願いします。
 http://www.roumuya.net/mm.html

◆労務屋のホームページ:http://www.roumuya.net の「労働掲示板」に、
 ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。

◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com

◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載
 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。

◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま
 せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、
 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。

===================================

メールマガジンにもどる
バックナンバーのインデックスにもどる