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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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        平成14年04月04日発行 通巻150号
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 新年度を迎え、各社一斉に入社式が開催されました。入社式といえば新入社
員にとっての門出であるとともに、人事担当者にとっても大物イベントでもあ
ります。人材派遣大手のメイテックのように、バブル期にはディスコで入社式、
バブル崩壊後は入社式でゴミ拾いのボランティアと、いろいろな工夫で入社式
を演出?する企業もありますが、大方の企業では入社式と言えば社長の訓示、
代表者への辞令交付と答辞といったところが定番でしょう。社長訓示といえば
退屈なものと相場は決まっていますが、それなりに毎年の経営環境を反映して
いて興味深いものがあります。今回は新聞各紙の報じた社長訓示から目につい
たものを拾ってみました。
 まず全体的な傾向を見ると、「若さ」が強調されるのは当然として、判で押
したように繰り返されているのが「チャレンジ」「変革」「創造」「失敗をお
それず」といった言葉です。「自立」とか「自己啓発」といった言葉もあちこ
ちで目につきます。「プロフェッショナル」という言葉もたびたび見かけます。
経済の低迷と経営の不振(でない企業ももちろんありますが)が続く中で、な
んとか現状打破をはかりたいという切実な経営者の気持ちがにじみ出てくるよ
うです。
 次に、個別の訓示で変わったところを見てみたいと思います。まずは、4月
1日から組織再編されるみずほグループの持株会社みずほホールディングスが、
3月31日に一足早く入社式を行ないました。そこでの前田晃伸社長の訓示が
なかなかふるっています。いわく、「マニュアル通りにやるな、上司のいうこ
とを聞くな、責任は上司にとらせろ、の3条をおくりたい。みなさんの質問に
答えられないような上司はすぐに転勤させる」。まあ、こりゃ破れかぶれです
な。しかし、4月1日のていたらくを見ていると、こりゃ確かに上司の言うと
おりではダメかもな、とも思ってしまいます。さて、この訓示、不良上司を一
掃するか、不良新入社員を大量生産するか、どうなるでしょう。不良は債権だ
けで十分だと思うのですが…。
 同じリストラ組の電機はどうでしょう。5%賃金カット交渉中の日立製作所
の庄山悦彦社長は、「社会が大きく変わる今こそ私たち日立の出番」となかな
か意気軒昂です。松下電器の中村邦夫社長は「日本文明の最大の強さ、特徴で
ある『小さなものを巧みに作る力』はバイオやナノで新たな力を発揮する」と
ミクロ技術に自信を見せています。
 日本ibmは、今年から入社式という呼称をやめて「スプリング・キックオ
フ」に変更したそうです。大歳卓麻社長は「これは『就社』ではなく文字どお
りの『就職』という意識改革を推進するためだ」と訓示しています。だったら
いっそのこと新卒採用もやめればよさそうなものですが、それでは今の日本で
はまだまだ優秀な人材の確保が難しいのでしょうか。
 キヤノンの御手洗冨士夫社長の訓示は、「日本全体が『平等』という非競争
の哲学から、『公平』という競争の哲学に転換していかなければならなくなっ
た」と訓示しています。平等と公平の違いというのもなかなか難しいですが、
『均等』『公正』でなく『公平』というところに、競争はするが、機会の均等
だけではなく、結果の平等にも、これまでほどではないがある程度は配慮する
よ、という考え方がうかがわれます。
 ファナックは、創業者(富士通からの独立ですが)の稲葉清右衛門名誉会長
が入社式の訓示に立っています。いわく、「当社の研究開発に対する基本姿勢
は『厳密』」。これはファナックの公式の?「基本理念」や「研究開発の基本
方針」にはないことばで、トップ自身の現在の信念を語ったものでしょう。さ
すがに創業者という感じです。
 味の素の江頭邦雄社長と、ついにダイムラーのエクロート氏に社長の座をあ
け渡すことになった三菱自工の園部孝社長がともに強調したのは「健康維持」。
味の素はビジネスからしてもそうかな、と思わせますが、三菱自工の方は新入
社員の心身の健康とともに会社の健康という思いもあるかも知れません。
 私が個人的にいちばん印象に残ったのはトクヤマの中原茂明社長の訓示です。
これだけは絶対に忘れないでほしいと前置きして「社内外問わず、大きな声で
元気にあいさつをしてほしい」。もう一つ面白いと思ったのは、ミサワホーム
の三沢千代治社長の「以前は『出る杭は打たれる』だったが、今は『出ない杭
は抜く』だ」という訓示。これは抜いたら捨てるぞということではなく、出て
こない奴は引っ張り出しても働かせるぞ、と受け止めたほうがいいですね。
 いくつか目立つ訓示を拾い上げて見ましたが、今年は例年以上にどの企業も
画一的な印象があります。特に、金融、保険、証券といったところが面白くあ
りません。鉄鋼をはじめとした素材産業や造船・重機も今ひとつです。時代の
先端を行くはずの通信関連も平凡です。まあ、ntt各社は公社時代の風土を
残しているのかも知れませんが。
 日産自動車のカルロス・ゴーン社長は、「日産は楽で居心地のいい変化のな
い職場を希望する人には期待はずれだが、将来に向け課題に挑戦したい人には
ふさわしい場所だ」と訓示しています。彼にはもっと派手なパフォーマンスを
期待したかったのですが、それにしてもなかなか意気軒昂です。やはり業績の
回復と好調がこう言わしめるのでしょう。世間では来年4月入社の就職・採用
活動が進んでいますが、来年の4月にはゴーン氏のような勢いのある訓示をた
くさん聞かせてほしいものです。

                 (次回は4月8日に配信する予定です)
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