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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成14年07月09日発行 通巻181号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 【書評】町工場が滅びれば日本も滅びる >>> 橋本久義著 PHP研究所 =================================== 著者は、旧通産省出身の研究者で、もっぱら製造業を中心とする中小企業の フィールドワークの蓄積によって、中小企業研究に独自の地位を築いている。 その持論は「中小企業は日本のまごころ世界の宝」である。一見まことにエモ ーショナルなこのフレーズは、実は非常に根本的な本質をついている。著者は モノづくりの基本は「ねばりと頑張り、まごころと辛抱」だという。従業員全 員が、顧客の時には無理とも思えるオーダーやニーズに精一杯応えようと努力 するところに、よい製品が生まれる。それには従業員がお互いに譲り合い、助 け合わなければならない。時には目的のために自分を殺さなければならない。 それが「ねばりと頑張り、まごころと辛抱」だ。著者によれば、それはこれま で日本企業(とりわけ中小企業)にだけ優れて見られるものであった。それゆ え、中小企業は日本が世界に誇るべき「日本のまごころ、世界の宝」だという わけだ。 その基本を、著者は日本企業の「現場主義」に求めている。日本では現場が 大事にされることでコミュニケーションが良くなり、現場の働きやすい設計が 行われ、現場の知恵が出るようになった。エンジニアと現場の作業者とが所得 も含めてきわめて公平で、それによってお互い譲り合い、辛抱するために不可 欠な「心のゆとり」が生まれたのだという。これはこれまで、ほぼ日本にだけ 見られる特質であった(中国が近年めざましい発展をとげたのは、文化大革命 によって労働者とエンジニアの階級差がなくなったからだというのが著者の説 である)。 今、日本の中小企業はかつてない苦境の中にあると言っていいだろう。この 本は書名を見ても明らかなように、中小企業へのエールである。著者はその膨 大なフィールドワークを通じて、日本の中小企業は依然として強いとの確信を 語り、さらに強くなるための道筋を、成功している経営の共通点という形で描 き出している。特に、ITの「ツール」としての活用に関しては、一章を設け て述べられている。全巻を通じて紹介される幾多の事例は、どれも強い共感を 呼ばずにいないものであり、まことに説得力に富む。 「町工場が滅びたら日本も滅びる」というメッセージは、なにを意味してい るのだろう。私はこれは、一握りのエリートやリーダーだけがいくら大活躍し ても国は滅びる、大多数を占める「普通の」無名の人々が、それぞれ優れた働 きをして、日々レベルアップしていくのでなければ国は繁栄しない、という意 味なのではないかと思う。百歩譲って、金融や情報産業のような世界では、あ るいは一握りの天才が活躍すればそれでいいのかも知れない。しかし、モノづ くりの世界ではそうはいかない。そして、日本がモノづくりなしで立国できる 可能性はきわめて低い。 われわれ労務屋、人事屋も、こうした観点からものごとを考えていかなけれ ばならないのだと思う。圧倒的多数の普通の人々が、ねばりと頑張り、まごこ ろと辛抱、そして心のゆとりを持ちつづけることができるような人事管理とは どのようなものだろう。それは少なくとも、著者も言うとおり、周囲を顧みず に「成果」をあげた少数の人間が優遇され、目立たぬ仕事に地道に取り組んだ 多数の人々が割を喰うような「成果主義」ではないことは間違いあるまい。あ るいは、働く人が腰を落ち着けて技能を磨くこともチームワークを高めること もできなくなるような「労働力の流動化」でないことも確実だろう。 たしかに、この本のものの見方は、世間で流行のものとはかなり違っている。 しかし、流行、多数が常に正しいとは限らない。ことによると、こうした見方 に立ってさまざまな施策を考え直して見ることが、今日の閉塞感を打ち破る起 爆剤になるのかも知れない。 (次回は7月11日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)ID=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2659/ の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |