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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成14年10月10日発行 通巻188号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< ノーペイ・ノーワーク >>> =================================== 連合は、先月12日の中執で、「労働時間法制順守の取り組み」をすすめる ことを確認したそうです。来年の春闘の共闘項目とすることを念頭に、まずは この11月に職場実態の点検活動を実施し、そのうえで来年2月を「労働時間 順守月間」として、「ノーペイ・ノーワークの取り組み」を展開する計画なの だそうです。この「ノーペイ・ノーワーク」というスローガンには思わず受け てしまいましたが、これが示しているとおり、「労働時間法制順守」とはいう ものの、本命は断然不払い残業、いわゆる「サービス残業」ということなので しょう。同じ12日に開催された日本経団連と連合の懇談会でも、連合首脳は 口々に「不払い残業」の実態の深刻さを訴えたそうです。 ここ数年、売り上げや生産量の減少に較べて人件費が減っていないというこ とで、多くの企業が人員削減を進めています。もちろん、企業活動としては、 売り上げが減ったら人件費も減らして、人件費比率と利益率を適正に保ちたい というのは当然でしょう。 問題は、人件費が多すぎるといっても、必ずしも職場として人が多すぎると いうわけではない、という点です。もちろん、生産現場や建築現場のように、 仕事量の減少にともない、直接的に人員過剰が認識できる職場もあるでしょう。 こういう職場では、残業を減らしたり、派遣やパートなどを雇い止めしたりし て対処しているものと思われます。その一方で、営業や管理部門、あるいは技 術、開発などといった職場では、売り上げが減っても仕事が減らないことの方 が多いでしょう。「企業内失業」などということばがありますが、本当に各企 業で窓際で新聞を読んでいる人がどんどん増えているかといえば、そんな職場 はまずほとんどないのではないでしょうか。 それでも、企業としてみれば背に腹は代えられないということで、人件費を 減らすために人員削減をせざるを得ません。そうなると、職場としてみれば、 仕事は変わらないのに人員だけ減らされたということになり、残った人が忙し くなるということになります。まさに、連合が昨年度の「連合白書」で危惧し ていた「逆ワークシェアリング」が拡大しているわけです。さらに、人件費が 厳しいわけですから、残業時間なども予算管理で枠をはめられます。それから はみ出した分がどうなるか、と考えれば、なるほど不払い残業が増えていると いう連合の主張もむべなるかなという印象はあります。 さて、そこで連合が具体的にどんな運動を考えているかというと、「厚生労 働省に求める課題」として「事後的な監視・監督機能と指導の強化」「自己申 告制度についての見直しの検討」「賃金・労働時間適正化協力員(仮称)制度 の創設」などの要求項目が並んでいます。1948年には35.7%であった労働基準 監督官による臨検監督実施率が、90年代は5%を割り込む水準にまで低下して いるという実態をあげて、監督行政の強化を求めています。 これについては、第一にあげている項目ではありますが、あまり原理原則論 にならないように注意してもらいたいものです。もちろん、監督を行うこと自 体には反対しませんし、悪質な事例に対しては厳格に臨むことも必要でしょう。 連合も、「『重大』かつ『度重なる』違反については」直ちに司法的制裁を与 えるよう働きかける、としていますので、一定の配慮は持っているようです。 不払いは法違反なのだから取り締まれ、というのはまさしく正論でしょうが、 現実の活動においては、まずは法規制が実態に即して本当に適切なものなのか どうかをきちんと考えておく必要があるのではないでしょうか。労働界とその 周辺を除けば、裁量労働制の適用範囲の大幅拡大が必要だというのはほぼ統一 見解になっています。生産現場などと異なり、ホワイトカラー職場では、仕事 のペースのコントロールは相当程度個人の裁量になっています。時間外労働に しても、仮に就業規則上は上司の指示によるとされていても、現実には上司か ら担当業務の包括的な指示のみ受けて、時間外労働するかしないか、どれだけ するかの判断は担当者に任されていることが多いのではないでしょうか(どれ だけ計上するかは必ずしも自由ではないかもしれませんが)。厳密にいえば、 就業時間内にお茶を飲んだりたばこを吸ったりして、仕事をしていない時間も かなりあるはずです。こういう実態の職場に対して、罰則を持つ法律を杓子定 規にあてはめていくことが適切であるとはいえないでしょう。連合にも行政に も適切な対応をお願いしたいものです。 この問題はむしろ、産別組合で構成された連合ではなく、各単組が主役とな って取り組むべき問題ではないでしょうか。 もとより、サービス残業が発生してくるのには、最初のほうで書いたように、 各企業の経営の事情が大きく影響してきます。働いただけ企業にカネを払わせ ればそれで解決、ということにはならないのがこの問題の難しいところです。 労組としても、企業経営上許される人件費の上限がおのずと存在することは理 解できるでしょう。それを突破して労使が共倒れしても意味がないわけで、そ うした制約のある中で、解決策を模索していかなければならないわけです。さ らには、背景となる労働条件や人事制度も企業によって異なりますし、労働時 間管理をふくむ労務管理がどれほどのレベルで実践されているかも、企業によ って大きな開きがあるでしょう。この問題に対する組合員の意識もさまざまで しょう。すなわち、個別企業それぞれの事情に応じて、労務管理はもとより、 働き方や仕事の進め方、生産性の向上、労働条件のあり方などを総合的に勘案 して適切な解決策を考えていかない限り、実効ある取り組みとはならないので はないでしょうか。 さらに、この問題に関しては、組合員個人の意識の問題も大きく関わってき ます。実際問題、多くの実務家にとっては、いわゆるサービス残業は、やらせ ることよりやめさせることの方がはるかに難しい、というのが偽らざる実感で はないでしょうか。連合の傘下に入っているような労組のある企業なら、「サ ービス残業をさせない・しない」ということを、人事部が繰り返し管理職や各 職場に徹底をはかっているはずです。それでもなかなかサービス残業をなくせ ないというのが多くの企業の実情ではないでしょうか。 その理由はいろいろ考えられますが、随所で指摘されるように、企業が成果 主義的な人事制度を導入したことが、サービス残業をしてでも成果をあげ、高 い評価を得ようというインセンティブとして働いているということはたしかに あるだろうと思います。というより、これはわが国大企業で典型的な「同期競 争モデル」においては、古くからあったことではないでしょうか。あるいは、 とにかくおカネがほしいという人が、残業代の予算が絞られる中で、「100 時間残業したのだから、35時間くらいつけさせてくれ」という理屈で長時間 労働しているというケースもあるでしょう。問題解決の道として、「不払い」 と「残業」のどちらを重視するのか(おカネをとるか時間をとるか)について も、人それぞれ考えが違うのではないでしょうか。 こうしたことを考えても、この問題は、各企業において労組と人事部の協働 によって取り組んでいくことが重要だということになると思います。 連合が労働界あげてこの問題に取り組もうというのは、それなりの意味のあ ることだとは思います。ただし、現実の問題としては、労組がこれに取り組む ことを必ずしも歓迎しない組合員が、おそらくは連合が想像する以上にいるの ではないかと思います。経営サイドも決して問題意識がないわけではないでし ょうから、現実を直視し、実態に即した実りある取り組みとなるよう、労使の 努力を期待したいものだと思います。 (次回は10月24日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)ID=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.roumuya.net/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.roumuya.net/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.roumuya.net の「労働掲示板」に、 ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |