|
=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成14年10月03日発行 通巻186号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 政治の世界も人事は難しい >>> =================================== 私は政治については酒呑み話程度の知識しかないのですが、「人事」が最大 の関心事のひとつであることは政治家の世界でも同様のようです。最近、政界 で民主党の執行部人事や、内閣改造といった「人事」がらみのできごとが続き ましたが、これを企業人事実務との比較で見てみたいと思います。 まずは民主党の方ですが、党首選でもかなりの混乱と迷走があり、組織の問 題としていろいろ考えさせられる材料もありましたが、これはいずれにしても 選挙であり、企業の人事とはかなり異なるものなので、ここでは取り上げませ ん。それに対し、執行部人事は基本的に党首の人事権によって進められるとい う点で、基本構造は企業の人事と共通するものが多いといえるでしょう。 今回の人事で最も問題視され、批判されたのは、党ナンバー2に中野寛成氏 を起用したことでしょう。その理由は人によりさまざまなようですが、ざっと 要約すれば、この人事が「露骨な論功行賞」であり、「世代交代を求める若手 の声を反映していない」ということで、「この体制では選挙に勝てない(政権 交代もできない)」というところでしょうか。 こうした批判について、世間ではあまり疑問が持たれていないようですが、 しかし人事実務の観点から考えると、どことなくしっくりこないものを感じま す。たしかに、政治活動の業績ではなく、選挙で協力したことの論功行賞でナ ンバー2ポストの人事を決めるのは筋が悪いと思います。そういう意味では、 鳩山党首が「そういう(論功行賞の)部分もある」ことを認めたと報道されて いるわけですが、これは人事権者としては非常にまずい対応であったと言わざ るを得ないでしょう。 とはいえ、論功行賞がすべて悪いわけではなく、政治活動の業績に対する論 功行賞、すなわち「実績」で人事を行うことは、これはむしろ合理的な考え方 のひとつといえるでしょう。民間企業の「成果主義」などというものは、まさ に論功行賞にほかならないともいえます。その点、中野氏は、評価はさまざま かも知れませんが、それなりに党内で有数の政治活動の実績を持つことも事実 であり、それがナンバー2にふさわしいかどうかという議論が必要なのではな いでしょうか。 選挙協力にしても、協力した最大の理由は「政策が共通」ということでしょ う。組織運営において、リーダーがその方針を共有できる人をナンバー2に選 ぶことは、これまたむしろ自然なことであると思われ、民間企業ならばむしろ 当然のことといえるでしょう。 人物がどうかという点はおくとすれば、中野氏の幹事長起用については、組 織の人事の考え方としてはむしろ常識的であると考えられる点も多いように思 われます。 これは要するに、「何のためにこの人事を行うのか」という考え方次第とい うことなのでしょう。この人事が「鳩山氏が考える政策を推進する」ためであ れば、いま見てきたように中野氏の起用にはかなり合理的な理由があります。 人事をもっぱらインセンティブという面から捉えるのであれば、「世代交代を 求める声」に配慮する必要も出てくるでしょう。企業の人事でも同様ですが、 組織の目的を遂行するには、メンバーのモチベーションを高めることが必要で あり、業務の執行のために適切で、かつインセンティブともなる人事が必要で あることは間違いありません。その両立はときに難しいこともあり、バランス に苦心するわけです。 民主党に民間企業と異なる事情があるとしたら、ひとつは「選挙に勝つため の人事」という特殊事情があること、もうひとつは政策的に幅広いウィングを 取り込んでおり、政策面での組織の目的が必ずしも一本化されていないことの 2点があげられるでしょう。 「選挙に勝つため」の人事であれば、実績や政策より、知名度と人気のある 人を幹部に登用することが手っ取り早い方法になるでしょう(優れた政策を訴 えて選挙民の支持を得るのが正論ではないかとは思いますが)。実力や実績は 考えずに、田中真紀子元外相のような人気者(民主党でいえば菅直人さんでし ょうか)を担ぐわけです。ある意味政党は人が商品なのですから、当然といえ ばいえるかもしれません。民間企業でも、魅力的な経営トップが企業の広報宣 伝に貢献するケースはあるでしょう。 「組織の目的が一本化されていない」というのは、民間企業なら命取りにな りかねない大問題ですが、政治の世界ではむしろ過度に一本化されるとファッ ショに陥る危険性もあるわけで、必ずしも悪いわけではないという意見は理解 できるものがあります。そこが政党の運営の難しさなのでしょう。 いずれにしても、「どういう目的で、どういう考え方でこういう人事を行っ たのか」について、人事権者は明確な説明をしなければならないというのは企 業経営では常識に類することであり、鳩山氏がこれをきちんと行っていないの であれば、いささかリーダーシップを疑わざるを得ないのではないでしょうか。 閣僚人事に関しては、目的意識については「小泉首相の考える構造改革を推 進する」ということでかなり明確なようですし、「そのために政策の近い人を 起用する」という考え方もはっきりしているように思われます。首相の政策方 針が本当に適切なのか、そのための具体的手法はどうなのか、といった大問題 は別にあるわけですが、少なくとも人事の方針は説明されているといえそうで す。 逆にいえば、組織に対するインセンティブという面では犠牲をはらっている といえるでしょう。内閣の人事と与党の人事が連動・一体化しているのは理屈 としてはわかりにくいのですが、これまで閣僚ポストが党務や閥務に対する大 きなインセンティブになってきたことは事実らしいからです。政策の相違によ るフラストレーションのある中での政策一致を重視した人事という意味では、 案外民主党と事情は似ているかもしれません。最大の相違点は、鳩山氏と異な り、首相自身が集票力のある人気者であるという点だといったらあまりに皮相 でしょうか? もうひとつ注目されるのが、「当選4回の若手」が多数起用されるなど、能 力・成果主義的な動きがある点です。従前、「当選5〜6回が閣僚適齢期」で、 「派閥の推薦で順送りに入閣」という、まことに年功序列的な人事が行われて きたわけですが、第一次小泉内閣では若手抜擢や民間人登用などが従来に較べ てかなり大胆に行われ、成果主義的な印象を受けました。今回も新入閣者の若 手抜擢にそれが引き継がれていると感じます。さらに、今回は多くの閣僚が留 任しましたが、なにかと批判を集めていた閣僚は交代しており、これはある意 味成果主義的に留任・交代が決まったという見方もできるのではないかと思わ れます。 だれもが納得し満足する人事というのは不可能に近いわけですが、人事をめ ぐる恨みは深く堆積するものです。わが国の大政党が人事で混乱するのは残念 な事態であり、リーダーがその力量をしっかり発揮してほしいものだと思いま す。 (次回は10月07日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)ID=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.roumuya.net/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.roumuya.net/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.roumuya.net の「労働掲示板」に、 ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |