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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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        平成13年01月17日発行 通巻130号
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 先週木曜日から土曜日にかけて、主要各紙はいっせいに社説で春闘を論じま
した。単独で見てそう面白いものはありませんでしたが、論調を比較してみる
となかなか興味深いものがあります。
 読売は10日に先行して意見を表明しました。「雇用維持に労使は協議を尽
くせ」とのタイトルで、「企業の将来展望や雇用の在り方について、個々の労
使が徹底的に協議する場としなければならない」「労使は痛みを分け合って合
意を目指すべきだ」などと主張。基本的に「雇用不安をこれ以上高めることは
何としても避けたい」「個人消費を回復させ、デフレスパイラルの危機から抜
け出すためにも、それは必要だ」との認識に立っています。さらに、日経連の
主張する定昇見直し、横並び後退にも一定の理解を示し、「新しい時代に適応
した春闘を労使双方で積極的に検討する時である」と結んでいます。まずまず、
経営サイドの主張に沿った内容で、労使協調路線を非常に重視していることが
目をひきます。
 東京は11日の掲載でした。「雇用不安を断ち切れ」とのタイトルです。ベ
ア統一要求見送りを「やむを得ない取り組み」と評価し、その理由として「日
本の再生には痛みも我慢しなければなるまい」としながらも、「失業の痛みが
いま以上に広がってよいものか。雇用を守るために、働く人たちが最善の努力
を尽くすのは当然」と述べています。緊急避難的ワークシェアリングについて
も「受け入れられやすいし」「大事な手だて」と前向きで、「労使は同じ土俵
上」として「話し合いで歩み寄りも可能」、「経営側も痛みを共にする覚悟で、
誠意を持って」と訴えています。ワークシェアリングについては若干混乱があ
るようで、最後はパートの労働条件改善で終わっています。読売が経営サイド
に視点があるのに対し、東京は連合の方に視点をおいていますが、基本的なト
ーンは同じといえるでしょう。
 12日には、朝日、毎日、日経、産経の4紙が一斉に掲載しました。まず朝
日ですが、「労使が真価を問われる」とのタイトルで、連合のベア統一要求見
送りを「わずかなベア額をめぐる攻防よりも、雇用の安定に力を集中しようと
いう決断」と、皮肉交じりながら評価しています。日経連の雇用重視路線にも
「買いたい」と云っています。ワークシェアリングについても「当面する失業
増にブレーキをかけるには有効」「中長期的には『会社人間』と言われてきた
日本人の働き方を変える」と高い評価です。ここまででほぼ半分。残りはもっ
ぱらパートタイマーの話で、オランダの例をひいて「均等待遇」「格差解消」
を繰り返し主張しています。結びに「危機に、どう誠実に役割を果たせるか」
と言っている割に、その内容が均等待遇というのはいささかちぐはぐな感はあ
りますが、朝日にしては珍しく前向きさのある春闘社説と言えるでしょう。
 毎日は「雇用確保の『安心切符』を」とのタイトルを掲げました。内容的に
はデフレ下でベア要求の根拠も薄れたとした上で、「これだけ切羽詰ってきた
以上、雇用確保に全力を挙げるのは、労組として当然」と云っています。ここ
までがマクラで、残りはサービス残業・年休未消化の改善、便乗賃下げの回避、
パート・女性の待遇改善などを訴え、「これまでの働き方を見直す良い機会」
と述べています。タイトルは「雇用確保」ですが、ベアはギブアップしたがそ
れ以外のところでは取れる限りのものを取れという内容で、個別の論点には大
事なものもありますが、さすがに調子に乗りすぎの感は否めません。
 日経は「構造改革軸に『企業防衛春闘』始まる」という異色のタイトルを打
ちました。「春闘はとっくに形だけ」「今年は完全に消滅」なので、今年は労
組は「『雇用春闘』という位置づけに傾斜」したが、これもダメだろう、とい
う手厳しい評価が下されています。労使ともに企業防衛に必死で「企業防衛春
闘」だが、雇用を守れと言っても無理、ワークシェアリングもダメとさんざん
の書きぶりです。要するに「労働力の移動は不可欠」であり、「日経連も連合
も」「賃金制度や雇用形態、社会保障などの面で改革」に「具体的に取り組む
べき」ということを言いたいようです。「構造改革軸に企業防衛春闘」という
タイトルと内容が全く一致していませんし、主張の内容も労使双方の考え方を
まったく理解しておらず、自分の思い通りにならないからダメダメダメ、とい
う幼稚な主張に終始しています。「企業防衛春闘」という造語は面白いですが、
これを「社説」として掲載してよく恥ずかしくないものです。
 産経は「小異捨て真の雇用確保を」というタイトルを掲げて、労使が共通し
て雇用問題を前面に打ち出したことを高く評価しています。労使に微妙な思惑
の違いはあるとしながらも、現状を見れば「こうした議論はいかにも瑣末」と
述べています。緊急避難的ワークシェアリングも「できる企業、部門から早期
に」と積極的です。さらに、「長期的には労働市場の流動化や成長分野への労
働移動が課題」としながらも、「グローバル経済の中で、どう雇用を考えるか
はもっと大事」と述べ、中国への「一国集中の投資リスクを踏まえて生産分担
をどうはかり、雇用問題をどう位置づけるのか労使は真剣に議論を」と主張し
ています。労働条件の中国との比較を持ち出して労組をいじめるのはあまり意
味がないとは思いますが、空洞化問題、特に中国への一国集中流出に対しては
労組にも取り組めることはあるという指摘はなかなかのものです。
 こうして見ると、やはり各紙の報道姿勢の違いはそれなりに鮮明です。全般
的には、やはり産経、読売は経営サイドの主張に共感があり、労使協調を重視
しています。対中対策を述べるのは産経らしいともいえるでしょう。読売は私
にはバランス良く感じますが、ということは少し産経よりで真ん中あたりとい
うことになるのでしょう。均等待遇やサービス残業などへの言及を見ると、毎
日や朝日は違うウィングだということもよく見えます。東京は一応若干朝日・
毎日よりの真ん中あたりというところでしょうか。その中でやはり日経の論調
は目立ちます。他紙はすべて雇用失業情勢の悪化を食い止めるべきとの見解を
示したのですが、日経は構造改革最優先で失業の悪化には無関心です。これは
今の世の中を考えるともはやアナーキーな印象すらあり、異質ぶりが際立って
います。他紙の論調に同調することを快く思わなかったのかも知れませんが、
全国紙の大新聞の論調としてはいかがなものかというのが率直な感想です。

                (次回は1月28日に配信する予定です)
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