|
=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成14年07月08日発行 通巻180号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< サマータイムを考えよう >>> =================================== 7月に入り、いよいよ夏も本格化、暑い日が続きます。今回は、季節に合わ せて「サマータイム」を取り上げてみたいと思います。 サマータイムは、日照時間の有効活用をはかるため、夏季(7ヶ月間とする 国が多い)について、「時計の針を1時間早める」制度です。OECD加盟の 29カ国のうち、日本、韓国、アイスランドを除く26カ国で採用されている ということですから、国際的に普及した制度であるといえるでしょう(ちなみ に、アイスランドは高緯度のため夏の日照時間が非常に長く、サマータイムを 採用する意味がないのだそうです)。省エネルギー効果のほか、平日の終業後 に明るい時間が長くなることから、アウトドアを中心として経済活動(消費活 動)の活発化が期待されているとのことで、経済産業省(資源エネルギー庁)、 環境省などが導入に積極的な姿勢を見せています。政府が今年の3月19日に 決定した「改訂地球温暖化対策推進大綱」においても、「夏時間(サマータイ ム)の導入について、『地球環境と夏時間を考える国民会議報告書』も踏まえ、 国民的議論の展開を図り、合意形成を図る。」との表現でサマータイムが織り 込まれています。 この「地球環境と夏時間を考える国民会議」とはなんぞや、ということで、 過去の経緯を振り返って見ますと、最近サマータイムの議論が盛り上がったの は98年のことです。97年のCOP3(地球温暖化京都会議)を受けて、政 府は98年6月に「地球温暖化対策推進大綱」を決定しました(3月に決定し たのはこれの改訂版ということになります)。これに基づき、同年9月に「地 球環境と夏時間を考える国民会議」が発足して、サマータイム実施についての 検討が実施されたわけです。その結論が、「一定のコスト負担や課題に対応す ること、あるいは切替時における若干の煩雑さを受け入れることが国民全体と して必要となるものの、地球環境にやさしいライフスタイルを実現するきっか けとして、…その導入(2年程度の周知・準備期間をおいて)を図るべき」と の報告として発表されました。今回の改訂版は、これを踏まえているわけです。 さて、このサマータイム、98年当時の議論を見ても賛否両論で社会的合意 というまでには到らず、今年は議論もあまり盛り上がりませんでしたが、やは り同様の状況にあるようです。 賛成論は、当然ながら日照時間の有効活用と省エネルギーの効果を主張しま す。サラリーマンが仕事を終わって帰宅してもまだ明るければ、子どもと外で 遊んだり、園芸を楽しんだりできるというわけです。レジャー産業などを中心 に約1兆2000億円の経済効果があるとの試算もあります。この手の試算は だいたい過大なものと思った方がいいわけですが、それでもそれなりに経済効 果はあるでしょう。スポーツクラブのような健康増進産業は成長分野でもあり、 思った以上に有望かも知れません。 省エネルギーについては、サマータイムの直接的な地球温暖化防止への寄与 は、CO2換算で44万トンにとどまっています。今回の「改訂大綱」では、 全体で1億6500万トンの削減を必要としていますので、およそ大きな数字 だとは言えません。したがって、大綱でも、サマータイムの趣旨は直接的な効 果よりむしろ「国民が地球環境にやさしいライフスタイルを実現する」ための 「意識づけ」が主眼におかれています。それがどれほど意識づけになるのか、 あるいは意識づけがどれほど現実の行動につながるのかわからないとの意見も あるようですが、これはどんなに意識の低い人でも参加せざるを得ないわけで すから、それなりに意識づけ効果があると見てもいいのではないでしょうか。 いっぽうで、サマータイムに反対する意見は、「生活のリズムが崩れ、体調 悪化につながる」というのと、「(明るいうちは帰りにくいなどの理由で)労 働時間が長くなる」というのが最大の理由になっているようです(連合はこの 理由で反対を表明しています)。戦後すぐの時期に、短期間ながらサマータイ ムが導入されたことがあり、その際には同様の理由で不評だったとのことです。 また、「子どもの塾通いがあるので、アウトドア活動の増加などにはつながら ない」とか、「日本は欧州に較べて低緯度、高湿度なのでサマータイムの効果 は少ない」などといった、賛成論の根拠に対する批判もあるようです。 その他、通勤時間が長いからあまり意味がないという批判もありますが、こ れはもっぱら大都市部の問題、しかもほとんどは東京の問題でしょう。余暇施 設が少ない、あるいは費用が高い、という問題もあるかも知れませんが、それ もくふうしだいですし、実際に需要が出てくれば供給も追いついてくるでしょ う。年に2回の切替に際する交通・輸送などの対応の問題もありますが、切り 替えは週末に行われますので、深夜に調整すれば影響はあまり大きくないもの と思われます。いずれも反対の根拠としては不十分に見えます。 賛成にせよ反対にせよ、確たる根拠のない議論なので、なかなかまとまらな いのも致し方ないところなのかも知れません。 それでは世論はどうかというと、98年に実施された調査によると、サマー タイムの実施に賛成が約6割と過半数を占め、反対の約2割を大きく上回った (「わからない」が約2割)ということです。さらに、「サマータイムによっ て労働時間が延びる」との回答は14%にとどまり、「影響ない」が過半を占 めてています。 たしかに、国民全員を巻き込む話であり、その影響も不透明な部分も多いわ けではありますが、しかし、温暖化問題をはじめとする地球環境問題が人類の 重大な課題になっている現実に向き合えば、できることから取り組むという姿 勢はなにより重要ではないでしょうか。実際、サマータイムはそれほど大きな コストがかかるわけではなく、やると決めればやることができ、やめると決め ればやめるのも簡単です。であれば、まずはやってみるというのが前向きな態 度というものだと思います。「大綱」を見ると、自動車ではなく自転車をなる べく使うとか、自動車の相乗りにとどまらず、自宅でも家族がなるべく一室で 過ごすといった、生活意識をかなり変えなければならない取り組み事項も出て きます。こうしたことを積み上げていかなければ、温暖化防止条約を達成する すことはできなくなります。現実に参加し、行動することが意識の転換には大 きな効果を示すわけですから、国民があげて参加するサマータイムは、想像以 上の成果につながることも期待できるのではないかと思います。 (次回は7月11日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)ID=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2659/ の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |