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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成14年06月12日発行 通巻170号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 【書評】人事管理入門 >>> 今野浩一郎・佐藤博樹著 日本経済新聞社 =================================== Amazon.co.jpでタイトルに「人事管理」を含む本を検索したら、169件ヒ ットした。トピックに「人事管理」を含む本は実に1116点に上る。重複もある だろうが、いかに多数の人事管理の本が出ているかがわかる。 昔からあるのは、求人票の書き方とか、就業規則の作り方、労働時間管理の ルールなどといったことを解説したごく手堅い実務書だが、これらの本は人事 管理の考え方や理論的側面には踏み込んでいないことが多いようだ。 それと対象的なのは、このところ目につくコンサルタント本である。これら は成果主義やコンピテンシー、あるいはエンプロイヤビリティなど、多くはア メリカ直輸入の理論で重武装している。しかし、結局は商売だから、売れるこ とが最優先で、売りたいことはたくさん書いてあるが全体像は見えないし、目 をひくけれど実態から乖離しているし、自分の利益が第一でお客の利益は二の 次だ、といったようなことが多いらしい。そもそも、常識的には人事制度を改 めれば業績がめざましく改善するなどということはありえないわけだが、溺れ るものは藁をもつかむということか、あるいは単なる流行だからということか、 とにかくよく売れるらしい。 もちろん、この手のコンサル本がたくさん出てきたということは、現実に人 事管理の改定が必要な企業が多いということだろうし、お手軽にその解を見つ けたいというニーズも強いということには違いあるまい。しかし、たかが数千 円の本を読めば事足りるのなら誰も苦労はしない。現実には、それぞれの企業 のビジネスや仕事の進め方、風土、環境などさまざまな与件の中で、最も効果 的で実行しやすい人事管理を考えるしかない。そのために必要なのは、最新流 行のカタカナ言葉ではない。人事管理の全体像を、そのバックボーンとなって いる考え方をしっかりとおさえながら、体系的に理解することが前提になるだ ろう。そのために必要なのは、これまで多くの企業が実践してきた人事管理の 具体例について、なぜ、何のために、どういう考え方でそうした人事管理が行 われてきたのかを整理し、理論的に体系化した教科書であろう。 今野浩一郎・佐藤博樹著「人事管理入門」は、こうした期待に応えるまこと に優れたテキストであると思う。人事管理の体系に従いながらそのしくみや考 え方などの基本的な知識を経済学や社会学の成果をふまえて幅広く記述すると ともに、最新の事例や調査結果を数多くまじえながら、いかなる環境変化の中 でいかなる意図をもってこれらの施策が採用されているのかを解説している。 とりわけこの本が優れているのは、わが国の企業経営や労使関係、人事管理 の実務の実態をしっかりふまえて書かれていることである。そのため、記述が 上滑りすることがなく、実務家にとっても現実感を持って読み進むことができ る本になっている。ともすれば企業は利益にしか関心がなく、人事管理ももっ ぱらコストダウンと労働強化のために行われるという思い込みの目立つ本も多 いが、この本は実務家の努力と苦心に応分の評価を与えてくれている。 もう一つ、この本の優れた点をあげるとすると、リアルタイムから未来志向 の本だということだ。最新の事例がコラムとして多数紹介されるほか、ファミ リー・フレンドリーやワークシェアリング、ダイバーシティ・マネジメントな どの新しい動向も紹介され、人事管理の将来を考えるための豊富な材料を提供 している。常に最新動向をフォローするために、次々と増補版、改訂版が出さ れることを期待したい。 なお、細かな点だが注文もないではないので、三点だけあげておきたい。第 一に、若干性格は異なるかも知れないが、労働安全衛生は人事管理の重要な一 分野であるから、これに関する記述がほしかったと思う。第二は、わが国にお ける解雇の法的規制についての記述で、いわゆる「整理解雇の4要件」を満た さなければ「正当な解雇」とならない、と読めるような記述がされている点で ある。ここは同種の誤解をしている人が多いだけに、慎重に書いてほしかった と思う。第三に、企業の人事管理施策が、行政による規制のために十分な効果 を得られていないことがあることを指摘してほしかった。これも本書の範囲を 超えるのかも知れないが、人事管理の将来を考えるには重要なポイントのはず である。 とはいえ、これらは些細な問題点にすぎない。教科書であるから、小説を読 むように面白いというわけにはいかないが、図表も数多く使われ、読みやすく 理解しやすいように配慮されて書かれている。学部生を念頭に書かれた教科書 であろうとは思うが、企業の人事担当者にもぜひ通読し、座右においてほしい。 自社の人事管理を考えるにあたり不可欠の基盤を提供してくれる一冊である。 (次回は6月13日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)ID=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2659/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2659/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2659/ の「労働掲示板」に、ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |