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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成16年08月05日発行 通巻266号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 【書評】ニート−フリーターでもなく失業者でもなく >>> 玄田有史・曲沼恵美 著 幻冬社 =================================== ニート(NEET=Not in Education, Employment, or Training)は、英国では かなり以前から問題視されてきた。この5月には、日本にもすでに63万人のニ ートがいるとの試算が紹介され、わが国においてもかなり深刻な問題と考えら れはじめているようだ。とはいえ、新聞報道などをみるかぎり、その理解は必 ずしも十分な広がりと深さに達しているとはいえない。こうしたなかで、ニー トの実像の一端をわかりやすく紹介し、その問題点の所在と構造を指摘し、具 体的な取り組みを訴える本が出版された意義は大きいだろう。 共著者のひとりは、『仕事の中の曖昧な不安』『ジョブ・クリエイション』 を著した玄田有史氏である。当然、計量分析を駆使した実証研究にもとづく記 述が予想される。しかし、この本はまったく趣を異にする。現状の紹介は、も うひとりの共著者、曲沼美恵氏のインタビューによっている。ニートは一般人 にはなかなかイメージしにくい一面があるから、わかりやすさに優れたこの方 法は理解を進めるには効果的だろう。前著のような研究書ではない、社会に対 する問題提起の本としては、時間のかかる実証研究の結果を待ってはいられな いという面もあるかもしれない。読みやすくなっている分、これまで以上に多 くの人に読まれてほしいと思う。 ニートへの支援はもちろん、「14歳の挑戦」のような取り組みをすすめるた めにも、社会がニートについての正しい理解と深い共感を持つことがなにより 大切だろう。「誰でもニートになりうる、あなたもなるかもしれない」という、 理解と共感を求める訴えは、ストレートに胸にひびくものがある。 おそらくこの訴えは、若年から著者の同世代までには届きやすいだろう。し かし、それ以上の中高年にはなかなか届きにくいのがいっぽうの悲しい現実の ように思われる。中高年層、とくに男性、それも有力な人ほど、ニートやフリ ーターなどに対しては「根性がない、職業意識が足りない」といった情緒的な 意識が先立ち、「本人の責任、自分のせい」という皮相な理解にとどまってい るのが大勢なのではないか。若年と中高年、どちらが社会的に有力かといえば、 それは圧倒的に中高年だろう。その彼らに当事者意識のかけらもないという点 に、ニートをふくむ若年労働問題の最大の困難が横たわる。『曖昧な不安』の 文章に漂うやりきれなさとやるせなさ、『ジョブ・クリエイション』の民間企 業に対する辛辣なまでの指弾は、こうした現実に対する無念の現れであろうし、 この本の記述がときに激しい怒りを含むのもそれゆえであろう。 とはいえ、考えてもみれば、現代とは異なる社会環境のなかを生きてきて、 その経験にもとづく価値観が固まっている中高年に対して、異なる価値観に対 する共感を持てというのも無理な注文なのかもしれない。それでも、問題の所 在と対策の重要性について、せめて理解を求めることは必要であり、困難では あっても可能だろう。 『曖昧な不安』は、実証研究の成果という「証拠」を突きつけながら若年雇 用問題の議論を展開することで、少なくとも理屈のわかる中高年を説得するこ とに成功した。それが労働政策にも転換をもたらしたことは周知のことだ。そ れに対して、この本のインタビューが中高年にどれほどの説得力を持ちうるの か、若干心細い感がないではない。もっとも、ニートについての問題意識は高 まっているし、この本はさらに多くの人々にインパクトを与えるはずだ。その 気運の盛り上がりが、具体的な取り組みに幅広く結びついていくことを期待し たい。 (次回は8月16日に配信する予定です) =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)ID=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.roumuya.net/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.roumuya.net/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.roumuya.net の「労働掲示板」に、 ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |