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          *** 労務屋の労働雑感 ***

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        平成16年09月02日発行 通巻271号
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        <<< 「男性の育児休業」は5日でOK!? >>>

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 次世代育成支援法により、来年3月までに従業員300人以上の事業主には次
世代育成支援の「行動計画」の作成が義務づけられたのは周知のとおりです。
関係者によれば、行政が開催する次世代育成支援関係のセミナー類は、ほかの
テーマに較べて非常に参加者が多いということです。関係者氏は「きわめて関
心が高い」と喜んでいましたが、これは企業が対応に困っていることを示して
いるとみるべきではないでしょうか。
 企業がなにを困っているかといえば、いちおう行政から計画のモデルなどは
示されていますが、さすがに行政が推奨するようなご立派な計画を作れる企業
は限られています。となると、どの程度まで計画すればいいのか、それに対し
て行政がどのような態度に出るのか、が読めないのが最大の悩みでしょう。も
ちろん、法律では「計画を作った」ということを届け出ればよいとされてはい
ますが、行政の現場では、そうはいっても計画そのものを「見せろ」と求めら
るのではないかとか、「こんな計画では届出を受理できない」などと言われる
のではないかとかいった心配はどうしてもつきまといます。さらに、「認定」
についても、行政の恣意が入る余地があるのですからなおさらです。
 それでは、行政の指針以外に参考になるものがないかといえば、ありました。
厚生労働省がこの4月、他に先駆けて(?)発表した「厚生労働省特定事業主
行動計画」がそれです。
 次世代育成支援法は、国および地方公共団体の機関等(特定事業主)に対し
て、計画期間、達成しようとする目標及び次世代育成支援対策の内容等を定め
た行動計画(特定事業主行動計画)の策定と公表を義務づけています。これに
ついては、「社会全体における次世代育成支援対策の牽引役としての積極的な
対応が必要」という雇児局長通達が出ていますから、民間に対し率先垂範する
という意図があるということでしょう。
 ということは、厚生労働省の行動計画は率先垂範の最たるものでしょうから、
民間企業としては大いに範とすべきものであることは言うまでもありません。
ということで、この行動計画を見てみましょう。
 分量はかなり多く、さすがの意気込みを示したというところでしょうが、全
部はとても紹介できませんので、数値目標のあるものを中心に目立つところを
紹介したいと思います。ちなみにこれは平成17年度から5年間の計画で、目標
数値は平成21年度のものです。
 まず、「少子化対策プラスワン」が「父親誰もが」と述べている「男性の出
産休暇5日間」ですが、これについては「子どもの出生時における父親の5日
間以上の連続休暇」を平成21年度までに「取得率50%」となっています。期間
が10年間の「プラスワン」が「誰でも」ということですから、その半分の5年
間の行動計画では、半分の50%でいいだろう、ということでしょう。ちなみに
平成14年度の実績は7.3%ということですから、なかなか意欲的な目標といえ
そうです。
 次に、「プラスワン」でも話題になった育児休業の取得率については、平成
21年度までに「女性92%、男性55%」という目標を掲げています。「プラスワ
ン」の「女性80%、男性10%」に較べて非常に高い数字で、とくに男性の高さ
は驚異的です。
 ところが、案の定これにはカラクリがありました。まず、女性については、
平成14年度ですでに取得率が91.6%ですから、92%というのはコンマ4ポイン
トの上積みで達成できてしまうのです。民間企業なら「目標」の名に値しない
でしょう。
 まあ、これについては、なかには育児休業をとらずに働きたい、という女性
も一定数いるでしょうから、あまり100%に近づくのもかえっておかしいと考
えるべきかもしれません。また、すでに100%に近いハイレベルなところにき
ているから、コンマ4ポイントといってもそれほど簡単ではない、ということ
もあるでしょう。
 それ以上に問題なのは、男性の55%のほうです。なんと、この55%に続けて
「(子どもの生まれる前後の連続5日間以上の育児休業的な休暇の取得率を含
みます)」という但し書きがあるのです(これは男性だけで、女性にはありま
せん)。
 しかし、この但し書きにある「子どもの生まれる前後の連続5日間以上の育
児休業的な休暇」というのは、さっき出てきた男性の出産休暇5日間、「子ど
もの出生時における父親の5日間以上の連続休暇」となにが違うのでしょうか。
お役所の文章で微妙に表現が違うということは、なにかの違い(年次有給休暇
の利用が含まれるかどうかとか)があるのでしょうが、それにしてもほとんど
同じことでしょう。ということは、「男性の出産休暇5日間」の目標50%を引
き算すると、実質的な目標は残りの5%ということになります。なるほど、そ
れでも、10年間の「プラスワン」の目標である10%の半分ですから、計算はあ
っています。平成14年度の実績は0.6%だったそうですから、厚労省としては
非常に意欲的な数字と言いたいくらいかもしれません。
 とはいえ、「連続5日」で育児休業取得と同様にカウントするというのも、
いささか違和感なしとはしません。まあ、育児休業を請求して休んだのであれ
ば、1日であっても育児休業だ、というのは一つの理屈ではあるでしょう。し
かし、目標を設定して管理する以上は、達成率を上げるために1日だけでもい
いから取得しろ、ということにならないよう、それなりに意味のある日数でな
ければカウントしないというのが常識でしょう。たとえば、育児休業給付につ
いては、支給要件のひとつに「各支給単位期間に、育児休業による休業日が2
0日以上あること。」というものがあります(ひょっとしたら今回の改正法案
では変わっているのかもしれませんが)。これは要するに、そのくらい休まな
ければ育児休業給付を出すに値する育児休業ではない、という行政の見解が表
れているわけでしょう。であれば、連続5日でもカウント、というのは少々短
すぎないかという気がします。
 そもそも、厚生労働省は、「プラスワン」をはじめとして、あらゆる場面で
「男性の出産休暇5日間」と「男性の育児休業」は別物として扱っているよう
に思われます。それを、ここだけいっしょくたにして(一応、「育児休業的な
休暇」を「含みます」と、建前は別扱いの表現になっていますが)カウントす
る、というのは解せない話です。「男性の育児休業」を意欲的に取り上げた以
上、自らが達成できないわけにはいかないということで、比較的とりやすそう
な「男性の出産休暇5日間」と合算して、達成できるような目標にした、と受
け止められても致し方ないのではないでしょうか。
 いずれにしても、厚生労働省がこういう計画を立てている以上、民間企業が
同様に「連続5日の休暇も育児休業に含めます」という行動計画を立てても、
行政としては異論はさしはさめないだろう、ということがわかったということ
は、大いに参考になるといえましょう。まあ、連続5日を5%、というのも民
間の実態からすればかなり高い目標ではありますが。
 次に、厚生労働省が民間に対して並々ならぬ期待をかけている託児施設につ
いてみてみましょう。行動計画は庁内託児施設について「保育料などの条件に
よって利用希望者数が大きく異なってくること、5号館の建物について物理的
な制約が多いこと、子どもを連れての電車通勤が容易でないことなどから、直
ちには結論が出ない状況です。今後、他の府省の動向を見つつ、共同設置の可
能性を模索しながら、引き続き検討します。」と書いています。案外?控えめ
な内容ですが、予算の制約もあり(待機児童が増えつづけているのに、霞ヶ関
に託児所を作るとなったら国民の納得は得にくいでしょう)、困難な事情があ
るだろうことは想像できます。
 とはいえ、これまた、民間企業にしてみれば「資金の余裕がないので、託児
所の設置は引き続き検討します」くらいの計画でOKです、ということがはっ
きりしたわけですから、大いに参考にはなります。厚生労働省が本気で民間に
範を垂れたいのであれば、職員の賃金をカットしてでも予算を捻出して、託児
所をつくるくらいの計画を立ててもよかったのではないかと思います。
 行動計画には、ほかにも年次有給休暇の取得の促進や、「19日は育児の日」
で休暇取得促進とか、「19時(イクジ)に帰ろうマイホーム」で定時退場日の
促進といった内容も含まれていますが、省略させていただきます。
 それでも大方の民間企業に較べれば、厚生労働省の次世代育成支援は進んで
いることは間違いないと思います。とはいえ、次世代育成支援法の趣旨は目標
の達成ではなく計画を作って取り組むことにあるはずですし、厚生労働省とし
ても、率先垂範するなら目標達成にこだわるのではなく、計画づくりにおいて
率先垂範し、目標は達成できなくても致し方ない、というのがあるべき姿勢だ
ったのではないでしょうか。まあ、それでも達成できなければなにかと叩かれ
るでしょうから、苦しい状況には同情を禁じ得ませんが・・・。

                 (次回は9月6日に配信する予定です)
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