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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成16年03月07日発行 通巻278号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 【書評】14歳からの仕事道 >>> 玄田有史著 評論社よりみちパン!セ =================================== ※本号の内容は、本日発行の日本キャリアデザイン学会「キャリアデザイン マガジン」に寄稿したものです。 この本の「14歳からの仕事道」という書名は、ただちに大ベストセラーの村 上龍著「13歳のハローワーク」を想起させる。中学生をターゲットにした(し かし大人の読者も十分意識しつつ)「仕事」の本、挿絵をふんだんにまじえた 体裁といった点では、たしかに「13歳」のエピゴーネンであるともいえるかも しれない。しかし、内容についてはむしろ正反対といえそうだ。 「13歳」は、仕事の百科全書の体裁をとりながら、むしろ著者の信念の告白 に近い作品であった。その信念のよりどころとなるのは、著者自身のさまざま な体験や取材の印象、そして独自の倫理観といったものだったといえよう。是 非は別として、少なくともその信念の根拠は科学的なものではなく、したがっ て大いなる独善ともいえるものであった。 「14歳」もまた、信念の告白であるかもしれない。しかしそこには、その多 くに著者自身が関与した調査にもとづいた、科学的な根拠がある。それが「14 歳」と「13歳」の決定的な相違であり、作家と社会科学者の違いと言ってしま えばそれまでだが、どちらがより普遍的な説得力を有するかは明らかであろう。 いずれ「13歳」のブームが去ったあと、「14歳」はますますその輝きを増すに 違いない。 そのほかにも、この小さな本には優れた特徴がいくつもある。なかでも第一 にあげたいのは、その内容が私のような実務家の実感にもよく一致しているこ とだ。もちろん、人事管理に非常に近い分野の本でもあり、異論を申し上げた い点も多々ある。しかし、この本の主要な主張であるやりたいことは簡単には みつからない、わからなくてもいい」「わからなくても働こう」「やめたくな っても粘ろう」などのメッセージは、まことに私のような実務家の実感にあう。 「13歳」が主張する「早く自分のやりたいことを決めなさい」「自分のやりた いことを仕事にしなさい」「サラリーマンやOLになることを考えるのはおや めなさい」といったメッセージが、私のような実務家にはひどい違和感を覚え させることとは対照的だ。 第二にあげたいのは、たしかに大人も意識してはいるだろうが、本気で「14 歳」のために書かれているらしいということだ。それは日本の現実、実情をし っかりふまえて書かれているということでもある。だからこの本には、「日本 では認められない個性ある若者が海外で飛躍する」などといった陳腐な、それ でいて多くの人々にとってはおよそ非現実的なお話は出てこない。「日本の労 働市場は、企業の人事管理はかくあるべきだ」といった議論も出てこない。あ くまで普通の(ということばは著者は好まないようだが)14歳にとって現実的 な対処が述べられる。これは実に誠意ある姿勢といえよう。ちなみに本づくり においても、平明でくだけた表現が心がけられ、多くの漢字にはふりがなが付 されている。あまり長くないのもよい。著者独特の(悪い表現をお許しいただ きたい。悪意はない)ちょっと拗ねたような語り口も、14歳にはむしろ自然に 受け入れやすいものではあるまいか。これも、「13歳」が子ども向けを装いな がら、妙に難解・晦渋な内容が多かったり、現実的でない事例を多用したり、 すぐに社会や企業に対する批判が展開されたりするのとはまことに対照的だ。 第三に、この本は「キャリア」という用語を避けているという(本文にはそ うは書かれていないが、「オビ」には、「この本には『キャリア』というコト バは出てきません。でも、…ほんとうのキャリア教育の本です」と書かれてい る)。その真意は明らかにされていないので、想像するしかないのだが、しか しこれはある意味において私もおおいに共感する。「キャリア」というコトバ には、「職業的成功」というイメージがぬきがたくつきまとう。実際、「キャ リア官僚」という語を持ち出すまでもない。「丸の内キャリア塾」などといっ たセミナーの類で語られるのも、だいたいは転職成功者の自慢話ばかりだ。私 は特段キャリアについて見識があるわけでもなんでもないが、しかし本当の意 味での「キャリア」がそんなものではないとは思う。「キャリア」というのは 職業生活だけに限らず、職業をその重要な一部として含む人生全体をいかに生 きるか、ということだろうと思うし、「キャリア教育」もそうした観点から進 められてほしいと思う(これは人事担当者としての願いでもある)。こうした 意味で、私は著者がこの本で「キャリア」というコトバをあえて避けたことに 共感を覚える。 これらのほかにも、この本にはよい点、共感できる部分が多い(申し上げた い点も多々あるが)。多くの14歳にとってこの本は、著者のいう、目的も手段 もわからぬままに「頑張る」のではなく、「冷静にファイトする」ための指針 となりうるものではないかと思う。大いに売れて、大いに読まれることを期待 したい。 =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)ID=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。毎週月・木曜日(祝日休)に発行しています。 ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.roumuya.net/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.roumuya.net/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.roumuya.net の「労働掲示板」に、 ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |