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=================================== *** 労務屋の労働雑感 *** +++++++++++++++++++++++++++++++++++ 平成16年04月18日発行 通巻280号 +++++++++++++++++++++++++++++++++++ <<< 【書評】人材育成論入門 >>> 川喜多喬 著 法政大学出版局 =================================== 「キャリアデザイン」ということばは耳慣れたものになってきたが、「キャ リアデザイン学」となるとどうだろうか。法政大学にキャリアデザイン学部が 開学したのが2003年、翌2004年9月には日本キャリアデザイン学会が発足し、 「キャリアデザイン学」はとりあえず学問の一領域としての主張をはじめた。 そして、この本は「キャリアデザイン選書」というシリーズの最初の一冊とし て、学会の発足と期を同じくして刊行された。続いて、この2005年2月には二 冊めの佐貫浩著「学校と人間形成」も刊行され、さらに続刊が予定されている。 つまり、「キャリアデザイン学」を学ぶ人たちの教科書を揃えてしまおうとい うわけだ。まことに遠大な構想だが、なるほど、「キャリアデザイン学」を確 立するには教科書を揃えるのはいちばんの近道かもしれない。 この本は、いわば「キャリアデザイン学」最初の教科書ということになる。 書名の「人材育成論入門」のとおり、人材育成論の初学者に対するまことにて いねいな手ほどきの本であり、これほど「最初の教科書」にふさわしい本もな かろう。 この本はまず、キャリアとはなにか、人材育成とはなにか、なぜ大切なのか、 を「キャリアデザイン学」の考え方にそって説明するところからはじまる。最 初の4章がおおむねこれに該当しよう。説明はもっぱら、理屈や専門用語では なく、逸話(事例というより逸話という語がふさわしい)や語録、語源などの エピソードによってなされる。大学の教科書という一般的なイメージには合わ ないかもしれないが、初学者にとっては読みやすかろうし、専門用語を使った 理屈っぽい説明より説得力もあるかもしれない。それよりなにより大切なのは、 とにかく楽しく読み進むことができることだ。それが人材育成論という学問へ の興味、関心を引き出すことにつながる。入門書の最重要の役割であろう。教 科書というものは、読んで試験を受けて単位を取るためにあるものではないは ずだ。 続けて、実地の人材育成において大切な考え方、概念が説明される。おおむ ね第8章までがこれに相当しよう。やはり逸話や語録が中心となるが、学説も 紹介される。専門用語を覚えるのではなく、読み手の頭に考え方のイメージを つくることが意図されているように思われる。これまた、学問の入り口で、そ の中の広く深い世界へと誘うには適切な手法であろう。 第9章以降は、人材育成の実践の歴史と、現代のさまざまな局面における人 材育成の実践のありさまが述べられる。さすがにこの部分になると研究成果の 紹介が多くなるが、しかし事例や逸話も多く盛り込まれる。初学者でもスムー ズに読み進めるうちに、アンケートや事例の調査結果を用いた科学的な議論、 検討の進め方に親しみながら、人材育成論の基本が自然と理解でき、さらなる 学習への興味を持てるように書かれている。 このように、この本は入門書、教科書としてまことに優れたものであるよう に思われる。著者の膨大な現地調査の集積に加え、単なる博識にとどまらない 深い思索と、独特の秀逸な筆力のなせるわざであろう。 また、内容的にも、「将来はこうなるだろう」「こうすればもっとよくなる はずだ」といった、ありがちな空論に陥ることなく、あくまで「歴史」と「現 実」をふまえた、地に足のついた内容となっている。昨今、「キャリア」ある いは「キャリアデザイン」というと、ともすれば実態を遊離した空論が展開さ れがちと感じるのは評者だけではあるまいが、この本はそれとは対極にある。 これはまさに、「キャリアデザイン学」が学問として確立されていくうえにお いて、もっとも重要なポイントではないだろうか。 新たな学問の誕生にすばらしい最初の一冊を得たことを喜びたい。 =================================== ◆メールマガジン「労務屋の労働雑感」 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん「まぐまぐ」で配送され ています。(http://www.mag2.com)ID=0000049801 ◆このメールマガジンは、発行者が、個人の資格で、管理職、人事労務担当者、 組合役員、学生・研究者などの方々を対象に、人事・労務・労働などに関す る話題を提供するものです。 ◆作者は、日本キャリアデザイン学会の公式メールマガジン「キャリアデザイ ンマガジン」(ID=0000140735)を編集しています。あわせてお読みいただ ければ幸いです。http://www.mag2.com/m/0000140735.html ◆バックナンバーは、次のページからごらんになれます。 http://www.roumuya.net/mm/backn.html ◆登録・解除は、次のページからお願いします。 http://www.roumuya.net/mm.html ◆労務屋のホームページ:http://www.roumuya.net の「労働掲示板」に、 ご意見・ご感想などをおよせいただければ幸いです。 ◆メールアドレス:nagoyakuma@nifty.com ◆転載・引用を歓迎します。原則として、ヘッダ・フッタも含めた全文の転載 をお願いします。部分引用についてはご相談いただければ幸いです。 ◆[免責事項]本メールマガジンは、内容の正確性を保証するものではありま せん。本メールマガジンの購読、利用などによって発生したいっさいの損害、 損失、障害などについて、発行者はその責任を負いません。 =================================== |