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■2001/08/24 (金) キャピタルゲインは不労所得か 昨日と続けての話題になりますが、財務省は例によって証券優遇税制の導入 には消極的だということです。まあ、当然と言えば当然ですし、必要な牽制機 能であると言えるかも知れません。 これに関して、あるエコノミストが、「最大の問題点は、財務省がキャピタ ル・ゲインを不労所得だと思い込んでいることだ」と発言していました。言わ んとすることは、キャピタルゲインは、投資家がアナリストなどの専門家の意 見を参考に(場合によっては買い)、自己責任で投資先(投資顧問)を選択し、 リスクをとって投資した結果として得たものであるから、不労所得ではない、 ということでしょう。 一方、私が週末の夜に競馬新聞を買い求め、徹夜で検討し、翌日短波ラジオ を持って競馬場におもむき、ラジオのパドック解説を聞きながら馬の気配や状 態をチェックし、しかるのちに馬券を購入し、高額配当を的中させたとしまし ょう。これまた専門家の意見を買い、聞き、自己責任で買い目を選択し、リス クを取って賭けた結果として得たものですが、これを不労所得でないと言って くれる人はさすがにいないでしょう。 要するにその違いは「投資する」と「賭ける」の違いであり、もう一つ言う とすれば、後者は間違いなく「遊び」だということでしょう(リスクマネー供 給が新企業を育成する「善行」であるということは、不労所得か否かという議 論には無関係なはずです)。すなわち、その違いは、「投資」か「賭け」か、 といういたって主観的かつ恣意的な判断に委ねられるわけです。 私の主観的かつ恣意的な判断では、キャピタルゲインは不労所得だと思いま す。不労所得の補集合は勤労所得ということだと思いますが、勤労所得という からには何らかの勤労を伴わなければならないでしょう。しかるに、キャピタ ルゲインというものは、元本保証の金融商品を購入しておけば、ほぼ確実に手 にすることができるものです。もちろん、運用機関の破たんなどのリスクはゼ ロではありませんから、それなりに自己責任で判断し、リスクを取っていると 言えば言えるかも知れません。しかし、三菱信託の「ビッグ」を買うことが、 はたして「勤労」の名に値するでしょうか。 キャピタル・ゲインはやはり不労所得であり、基本的に重課税が妥当でしょ う。株式投資促進策としてこれを軽減するという議論はありうるでしょうが、 「不労・勤労」とは切り離して考えるべきものと思います。 ■2001/08/23 (木) 優遇税制で株式投資は増えるか 株式市場の低迷を受けて、「株式投資奨励策」を推進すべきだとの意見が強 く主張されています。具体的には、源泉分離廃止の再延期、申告分離課税の税 率大幅引き下げ、損失の次年度繰り越しなどが代表的でしょうか。さらに、こ の機に乗じて、市場関係者が「日本経済のボトルネックはリスクマネーの供給 不足」と主張し、個人金融資産の株式市場への呼び込み拡大を目論む動きもあ り、大きな政策課題になってきています。 実は、リスクマネー不足を問題視する主張は、すでに何年か前(たしか97 年版)の経済白書で展開されており、目新しいものではありません。ところが、 経済白書は、「国民は自分のために積極的にリスクをとるべき」と言うばかり で政策対応には言及しておらず(まあ、いつものことではありますが)、株式 市場がここまで深刻になってやっと重い腰を上げたという感じで、いまさらの 感は禁じ得ません。 しかも、本来株価上昇局面で採用すればこれらの施策もそれなりに効果があ ったかも知れませんが、株価が傾向的に下落していて、損失を被る可能性の高 い時期に、税金を多少負けてもらえるからといって株式投資が大きく増えるわ けもなく、あまり効果が期待できないことは自明のように思われます。 そもそも、経済白書はリスクマネーの供給不足をあたかも国民の無知に帰す るもののように書いていたという印象が残っていますが、実際問題としては日 本では家計部門が巨額の固定負債(住宅ローン)を抱えていることから、低リ スクな資金運用を選考するのは経済学の理屈に合っているはずです(イマイチ 自信なし)。少なくとも、住宅コストが低く、消費者信用のような流動負債が 多い米国の家計と同列に論じることは難しいような気がします(自信なし)。 いずれにしても、日本の株はperなどで見てもまだ割高(これまた企業の 寿命の短い米国とは単純に比較できませんが)という説もあるくらいで、優遇 税制くらいではなかなか個人投資家の株式投資が大きく増えるというわけには 行かないような気がします。 ■2001/08/22 (水) あのabbが業績不振 世界を代表するグローバル企業であるアセア・ブラウンボベリ(abb)の 業績が大幅に悪化しており、先月末には大規模なリストラ計画を発表しました。 全従業員の8%にあたる1万2千人を削減する計画とのことです。 abbといえば、並み居るグローバル企業の中でも、その経営組織は抜群に 優れているとされており、前ceoのバーネビック氏のリーダーシップととも に、ビジネス・スクールなどではきわめて良好な経営事例としてベンチマーク の対象となっている企業です。それだけに今回のリストラの発表は衝撃的と云 ってもいいのではないかと思います。私自身も、数年前、某勉強会で、アンダ ーセンの研究員がabbの効率的な組織、迅速な情報共有化と意志決定、円滑 なサービス体制などをほれぼれと説明するのを聞いた記憶がありますので、本 当に驚きでした。 とはいえ、もともと重電業界はここ数年市場が停滞しており、すでにabb も97年以降1万人規模で雇用を縮小していました。さらに最近の世界同時景 気減速もあり、環境は非常に厳しく、やはり世界的な株安の影響もあって、株 価も昨年末に比べると半値近くまで下がっていたというのも実態のようです。 それにしても、あれほどまでに賞賛されたabbすら経営不振に陥るという ことを考えると、やはり経営手法だけで不況を克服することには限界があると いうことを思わざるを得ません。どれほど絶賛されたモデルでも、かくももろ いものだということです。その一方で、優れたモデルを維持し続けることの難 しさということもあるでしょう。おそらくはその両方があいまって、今回の経 営不振がもたらされたのだろうと思います。 その一方で、今回のリストラは、ニューヨークでの株式上場を目指してのも のだ、という話もあるようです。米国式の手堅い会計基準に当てはめるとさら に経営指標が悪化するというのです。もちろんこれは、潜在的な問題点を顕在 化させたものに違いありません。とはいえ、本来、上場は資金調達ために行う のが正論であり、資金需要がありそうもないabbがny上場を急ぐのは若干 奇異な感は免れません。まさか、すぐにも増資が必要なほど資金がショートし ているなどということはないでしょうが・・・。 ■2001/08/21 (火) 人間尊重で成功する米国企業 きのう(20日)の日経朝刊に、興味深いインタビュー記事が掲載されてい ました。米国でもわが国同様航空不況で、4−6月の四半期決算は大手8社中 6社が赤字を計上しましたが、そうした中で利益を確保しているコンチネンタ ル航空のベスーン会長・ceoのインタビュー記事で、ニューヨークの中山淳 史記者の署名があります。 ベスーン氏は航空機の整備工から身を起こし、パイロットから管理職に転じ、 ボーイングを経てコンチネンタルの経営トップにまで上り詰めたという人物だ けあって、その経営哲学も現場重視という感じがします。「利益は、時間どお りの運行、確実な荷物運送の積み重ね」と語るベスーン氏は、「それは従業員 のやる気や熟練度次第」であり、そのためには「一人ひとりの誇りを大切にし、 密接なコミュニケーションを通じて経営者と従業員の相互信頼関係を築く」 「従業員に自分の会社だと思わせる」ことが大切であると述べます。そして、 「従業員や顧客とは家族のような関係を築くことが大切」とまで言い切ってい ます。 もちろん、競争の大切さなどにも言及していますが、それにしても、市場主 義が徹底された米国において、こういう経営哲学を持つ会社が同業他社が赤字 の中で利益をあげているということは、なかなか示唆に富んでいます。 「従業員はどうしたら一番早く整備できるかを知っている。何とかして会社 のために急ごうという気持ちを従業員のために起こさせるのが経営者だ。人間 と人間の関係として当たり前のことを実践することでもある」というベスーン 氏の言葉は、顧客や従業員との信頼関係を捨ててまでも目先の利益を追おうと しているわが国の経営者、それを求めるアナリストや評論家たちにしっかりと 噛みしめてもらいたいものです。 ■2001/08/20 (月) プロフェッショナルが勝負する相手 先週の火曜日、東京ドームで久しぶりにプロ野球「日本ハム−大阪近鉄戦」 を観戦しました。私は実は一応阪神ファンなのですが、格別熱心ではなく、そ れにこだわらず野球観戦は好きです。 試合の方は日本ハムの投手陣が不調で序盤から大差がつき、17対3という いたって大味な試合で、若干カネ返せ的な試合ではありましたが(笑)、それ でも痛快な本塁打の連発や見事な内野守備などを堪能しました。 最終回、大差でリードされている大阪近鉄の攻撃、二死無走者で打順が人気 者の中村紀洋選手に回ってきました。もちろん中村選手は本塁打狙いでしたが、 これは自分の記録のためではなく、大差のゲームを最後まで観戦してくれたフ ァンに喜んでほしいという気持ちだったのでしょう。カウント2−3になった 後もさらにファウルで2球粘り、結局四球でしたが、四球を選んで本当に悔し そうでした。 私はこれが本当のプロフェッショナルだと思いました。もちろんスポーツで すから相手との勝負が第一です。チーム内でのポジション争いで、同僚との勝 負というのもプロなら当然でしょう。ナショナル・チームのように選抜された チームであれば、監督やヘッドコーチとの勝負、というのもあるという人もい ます。すべては自分との勝負だという人もいます。しかし、プロフェッショナ ルが究極において勝負するのはやはり顧客ということではないでしょうか。 顧客に勝つとは顧客の期待に十分以上に応えることでしょう。もちろん、顧 客にはさまざまな人がいます。プロ野球であれば、チームの勝利を求める人も いれば、一つひとつのプレーの充実を求める人、鮮やかな個人技を求める人も いるでしょう。自分もボールを握る目の肥えた人もいればもっぱらテレビ観戦 でルールもよく知らないという人もいるでしょう。こうしたさまざまな顧客の 期待に応えるためにぎりぎりの努力をするのが本当のプロではないでしょうか。 ちなみに試合は四球のあと大阪近鉄に連打が出て2点が入り、大阪近鉄ファ ンを大いに喜ばせましたが、私はあの四球を見ただけでも入場料の値打ちはあ ったと思っています。 |