■2001/12/07 (金) 構造改革の一歩となるか?

 青木建設がついに破たんしました。バブル崩壊後の地価下落により、大幅な
過剰債務を抱えて経営危機に陥り、一度は銀行の債権放棄を受けて再建に取り
組みましたが、このところの公共事業の落ち込みによって計画に齟齬をきたし、
ついには破たんに至ったということのようです。海洋埋め立て工事には優れた
技術力を持っているということで、外資を中心に再建支援者を探している状態
だとか。メインバンクのあさひ銀行も、法定準備金まで取り崩すような赤字決
算に追い込まれており、もはやこれ以上の支援は難しかったということでしょ
う。実際、あさひはこれで相当楽になったはずだという説が流れているとか。
 青木建設の倒産は、いわゆる構造改革という意味でもなかなか象徴的な出来
事と言えるでしょう。青木建設は故竹下登元首相と密接な関係にあり、他にも
故金丸信氏といった大物政治家との関係も深く、いわゆる「政治銘柄」の代表
的存在で、「どれほど経営が傾いても絶対につぶれないだろう」と評されてい
ました。債権放棄を受けての再建計画も、ふつうに考えればおよそ非現実的な
もの(特に今となってはその感が強い。結果論ですが)でしたが、それでもな
お「青木をつぶさせるようなことは絶対にないだろう」と言われていました。
マイカルは単に大きい故になかなかつぶせなかったのですが、青木にはもう一
つ「政治」というつぶせない理由があったのです。
 そういう意味では、かつてのいわゆる「政治銘柄」−それは公共事業などの
利権と密接に結びついている−であっても「つぶれる」ということは、政治の
力の及ばない部分が拡大していることを象徴していると見ることができそうで
す。金融機関の不良再建処理、さらには小泉首相のもとでの「構造改革」路線
に沿った公共事業の見直しといったものが、「おそらく今後も政治の力では救
えないだろう」という判断がされるようになったということだろうからです。
 こう考えて見ると、後々考えて「今から思えば、あの青木の破たんが構造改
革の始まりだった」ということになるのかも知れません。その時この国がどん
な姿になっているにしても。

■2001/12/06 (木) 浸透しはじめたワークシェアリング

 本日の日経新聞朝刊に掲載されていた同紙実施の「社長100人アンケート」
の集計結果によれば、ワークシェアリングを「導入する」「検討する」が合わ
せて13.6%にのぼり、前回調査では設問すらなかったことを考えると、こ
こしばらくの間である程度浸透しはじめているという結果が出ました。
 さて、日経の記事を見ると、「『一気に人員削減』増える」と横綱くらいの
大きさで見出しが出ている下に、小結くらいの大きさで「ワークシェア前向き
13%」と書いてあります。でも、「一気に人員削減」と回答した割合は実は
6.8%で、ワークシェアリングに積極的な13.6%よりだいぶ少ない(設
問は別なので単純に比較できませんが)んですよねぇ。13.6%を「13%」
と書いているのもなかなかいじましくて憐れを誘います。
 「増える」と云っているのは、7月の調査で2.9%だったから、というこ
となのですが、7月には選択肢が「人員整理で従業員を減らす」だったのに対
し、今回は「希望退職などで一気に減らす」なのですから、明らかに今回の方
が範囲が広くなっています。もちろん、もともと7月と現在では米国同時多発
テロや狂牛病などの大きな変動要因が加わり、景況感が段違いに悪くなってい
るのですから、雇用調整を行う割合が増えるのは自然です。それに選択肢の変
更で水増しされた分まで加えて数字を大きく見せようというのは、相変わらず
の歪みきった報道姿勢であり、しかもそれがこれほどまであからさまでも恥じ
ないというのには、すでにあきれ果てている上にさらにあきれ果てます。
 こういう日経の恣意を排除してデータを見ると、人員に余剰感があるとの回
答は51.5%です。「ワークシェアリング導入」「検討」と回答している企
業は、基本的に「余剰感あり」と回答しているでしょうから、過剰感のある企
業の中ではおおむね4分の1以上がワークシェアリングに積極的ということに
なります。ワークシェアリングが「採用抑制」(37.9%)では対応しきれ
なくなった際の手段であることも合わせて考えれば、日経は「時期尚早が圧倒
的」と書いていますが、現実にはこれはかなりの浸透度と評価する方が適当で
はないでしょうか。

■2001/12/05 (水) 駆け込みはアンフェアという判決

 東京地裁は、東京都国立市で市の条例による高さ制限を超えて建築中のマン
ションについて、違法状態の是正を命じなかった建築指導事務所長の不作為が
違法であると判決しました。
 国立市では、昨年1月に当該地域の建物の高さ制限を20mに決定しました
が、マンションはその直前に駆け込み着工されたもので、高さが約44mと、
大幅に制限を上回るものということです。マンションの施工主は「決定前に着
工していたので規制の対象外」と主張しましたが、判決は「駆け込み着工の追
認は法の公正・公平な適用を害する」ということで、規制を適用すべきとの判
断を示したということです。
 確かに、このマンションに関して言えば、高さ20mの規制が行われること
が判明していたにもかかわらず、大幅に規制を上回るものを駆け込み着工した
わけなので、いささか筋の悪い話であることは間違いありません。まあ、そん
な状態においては、行政が業者に対して「そういうことはおやめなさい」と指
導するのが筋ではあるでしょう。とはいえ、それでも業者が着工、建設を強行
した場合には、行政にはその中止なりなんなりを命じる権限や根拠はないわけ
なので、そういう意味では今回の判決は行政(建築指導事務所長)には過酷な
ような気もしますが、アンフェアな駆け込みを許さないという点は好感の持て
る判決です。
 どのような規制でも(あるいは増税でも)、かならず直前の駆け込みという
ものはあるものです。今回はたまたま悪質だったということでしょうが、これ
がすべての駆け込みに対して「法の公正・公平な適用を害する」ということに
なったら大変です。住宅減税にあたっては、やはりその適用期間内の着工につ
いて減税されたため、期間満了直前には今回と類似の駆け込みが多発しました。
これについて、誰かが「実態としては期間終了後の着工であるにもかかわらず、
国税が徴税せずに放置したのは違法」という訴えを起こしたとしたら、東京地
裁はどのような判断を行うのでしょうか?住宅建設促進という減税の趣旨には
逆行してしまうことになりますが。。。
 もっと広げて考えれば、年度末になるとやたらに予算消化のための工事が増
えるというのはよく言われることですが、あれは相当の部分ムダ遣いになって
いるわけで、ああいうのも一種の駆け込みとして違法ということにならないで
しょうか。それでムダが減るなら、大いに結構な話と思うのですが。

■2001/12/04 (火) 石原都知事、今度は女性蔑視発言?

 石原慎太郎都知事が、雑誌のインタビューで女性蔑視とも受け取れる発言を
したということで、一部の女性解放団体などが問題視しているそうです。
 もっとも、具体的な内容は石原都知事の意見ではなく、科学評論家としても
有能な東京大学教授の松井孝典氏が「生命体の存在する使命は子孫を残すこと
であり、その意味において生殖能力のなくなった人は余剰な存在となる。男性
は80歳、90歳まで生殖能力はあるが、女性は一定年齢で生殖能力がなくな
る。その後も長く生き延びるのは人間だけであり、その間さまざまな消費を行
い、地球から収奪を行う。これは生物学的に人間、文明の基本的な矛盾であり、
特に先進国において顕著である」と述べていることに対して「同感だ」と言っ
た、ということのようです。石原都知事は同時に「政治家としてはいえない」
「半分は正鵠を射て、半分はブラックユーモア」などとも発言しており、基本
的なスタンスとして「文明社会において、人間が生命の原則を逸脱することが、
地球の存続を危うくしている」という認識を示したもの、ということのようで
す。この考え方自体はまことに科学的な意見であり、また、地球環境問題など
に対する基本的見地としても適切なものでしょう。
 もちろん、出産は体力的に多大な負担なので、ある程度の年齢で能力を喪失
することは自然です。また、人間は社会的な存在なので、具体的な妊娠、出産
に限らなくても、育児などの形で子孫を残すことに貢献することができる。も
ちろん、石原都知事も松井教授もそれは十分承知の上でしょうが、そういう部
分が省略されて面白おかしい表現だけがマスコミに出てきたというのは、政治
家としてはいささか不注意という感は免れません。松井教授も科学者として問
題を正確に伝える大切な役割を負っているわけなので、やはり配慮を欠いてい
ると思います。
 批判する側もまるで感情的で、この発言の意見や考え方についての批判とい
うよりは、口の利き方がバカにしているとか、石原だから女性蔑視だろうとか
いう批判に終始している感があります。まあ、しょせんは政治的意図を多分に
ふくんでいるので、宣伝としての有効性を追及すればそうなるのかも知れませ
ん。
 本質的な問題は「このような矛盾した存在である人間の長期的な幸福のため
に環境保全などの問題にいかに取り組むか」であるはずなのに、表面的な批判
に労力を費やすのは不毛な話だと思います。

■2001/12/03 (月) 株主オンブズマンは国の恥さらし

 イギリスのレイルペン社が、来年度の株主総会において、三井住友銀行とソ
ニーに対し、役員個人の報酬の開示を求める株主提案を行うことに決めたとい
うニュースが入ってきました。レイルペン社はイギリスの鉄道会社の年金信託
会社で、94年にイギリスの国鉄が分割民営化された際に民営化され、引き続
き年金の運用・管理を行っています。
 レイルペンは、カルパースのような「物言う」株主というイメージはなかっ
たのですが、機関投資家が株主提案権や議決権を行使する動きは世界的に広が
っていますので、その流れだろうか、それにしてもずいぶん先の話だし、レイ
ルペンは日本株も幅広くファンドに入れているはずなのに、どうして三井住友
とソニーなのだろうか、などと不振に思っていたのですが、どうやら「株主オ
ンブズマン」にそそのかされているらしいということがわかって、ある程度は
納得がいきました。
 なんでも、「株主オンブズマン」はレイルペンに限らず海外の機関投資家に
さまざまな権利行使の「共同提案」を働きかけているそうで、そうした活動の
中でレイルペンが引っかかったというのがどうやら真相のようです。もちろん、
日本のまともな機関投資家は株主オンブズマンの本質を知っていますから、当
然相手にはしないわけで、まだあまり株主オンブズマンを良く知らない海外の
機関投資家に誘いをかけていたということでしょう。レイルペンがそれを承知
のうえで誘いに乗ったのかどうかはわかりませんが、知らなかったとすればい
ささかお粗末な調査能力と云わざるを得ない感じです。
 株主オンブズマンとしては、例によって役員報酬が高すぎるという宣伝をし
ようということでしょうが、それにしても、イギリスの機関投資家をまきこめ
ば、役員報酬だけでは済まずに、従業員の賃金も高すぎるとか、そもそも従業
員が多すぎるとかいう話になることは目に見えていると思うのですが、それに
も株主オンブズマンは同調するつもりなのでしょうか?
 いずれにしても、私には株主オンブズマンは政治的意図で企業への嫌がらせ
を繰り返しているだけの団体に思えますし、そういう団体が国内では活動しに
くいから海外へ出て行くというのはまことに国の恥をさらすものであり、残念
至極な話です。

                





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