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■2001/12/21 (金) 「下げてはいけない」の先入観を捨てよ いつものことながらゴタゴタが繰り返されはしましたが、今回はとうとう診 療報酬もマイナス改定するということで政府の医療制度改革案がまとまったよ うです。連合は事務局長談話で「診療報酬は、初めてマイナス改定となったも のの、改定幅は全く不十分であり、連合はとうてい容認することはできない。」 としていますが、これまで長いこと下がらずに来たものが下がったことは評価 してもいいのではないでしょうか。 その一方で、厚生年金の物価スライドは今回もまた見送られて、改定なしと いうことになりそうだということです。こちらは、物価の変動によらず実質的 に生活水準が維持できるようにすることを趣旨にしているものですから、物価 が下がればマイナス改定するのが筋であり、事実法律もそうなっているにもか かわらず、「景気も悪いし、お年寄りの年金を減らすのは気の毒」という感覚 論でなんらの根拠もなく改定しないというのはまことに理解に苦しみます。こ れで3年連続の凍結で、累積するとすでに1.7%にも達しているそうです。 この1.7%はマトモに年金給付、ひいては年金財政に直結しているわけです。 年金改革が急務となっているときに、いかにも不合理な話です。これがあと何 年か続けば、凍結された率は3%、4%にも達するでしょう。そうなればます ますマイナス改定は難しくなります。投票率の高い高齢者の人気を失いたくな いという政治的動機はわからないではありませんが、これで物価が上がり始め たら今度は凍結されたマイナス改定は無視して年金額を上げるのでしょう。こ んなことでは年金改革など出来るわけがありません。 こうした話はこれに限りません。この9月に改定された地域別最賃も、これ だけの物価下落にもかかわらず、日額5292円で0.68%、時間額664円で0.76%の 引上げで決着しました。最賃は賃金動向だけでなく物価や生計費も勘案して決 められるはずなのにもかかわらず、です。まあ、最賃は一応厚生労働省の算定 する「総合指数」が判断基準になるというルールは明確ですが、それにしても このご時世に上方改定というのは納得いかないものがあります。 昨今、あれほど強硬だった賃金の下方硬直性すら打破されている時代です。 いつまでも「引き下げなんて論外」という発想を持つのはいいかげんやめるべ きではないでしょうか。 ■2001/12/20 (木) エリートたちの「貧乏人憎し」 先日、ある研究会の議事録を読んでいたら、三和総研理事長の中谷巌氏と、 当時連合会長の鷲尾悦也氏のこんなやりとりが目に付きました。 中谷「かつて日本人は死に物狂いで頑張って豊かになったが、今は死に物狂 いで頑張らなくても生きていけるような社会になってしまった。これからは、 いかにして日本人が死に物狂いで働くようなしくみにしていくかが重要だ」 鷲尾「中谷先生の言われることは理解できないではないが、言い方に気をつ けないと反発を招くだけに終わると思う」 まあ、実際、そこそこ頑張るよりは死に物狂いで頑張ったほうがパフォーマ ンスが上がることは間違いないわけですから、確かに理解できないではありま せんが、それにしても多くの人は死に物狂いで頑張らずにすむ方が幸せだと思 っていますから、こうも露骨に言われれば鷲尾氏ならずとも戸惑うでしょう。 今に限らず、経済の調子が悪くなってくると、エリート層からは「われわれ がこんなに働いているのに経済が良くならないのは、無能な貧乏人がわれわれ の働きにぶら下がっているからだ。あいつらがぶら下がるのをやめて、分相応 の暮らしに落ちて必死で働き始めれば経済もよくなるのだ」という怨嗟の声が 往々にして出てくるようです。実際、こういうアカラサマな言い方はさすがに ないにしても、同じことをいかにももっともらしい言葉で述べている主張には たびたびお目にかかります。基本的に、マスコミで主張を述べる人というのは エリートばかりですから、共通した怨念を抱いているのでしょう。 これを見て、経団連の今井会長がたびたび「倒産や失業が増えてもかまわな いから『改革』を断行せよ」といった発言をすることに対して、日経連の奥田 会長が「間違ったことを云っているわけではないが、『ご苦労をおかけするが』 とか『大変だろうが』とひとこと云えばずいぶん感じが違うのだが」と苦言を 呈していたことを思い出しました。とはいえ、「貧乏人憎し」というメンタリ ティの人には、そんなことは口先だけでも云えないのでしょう。 もちろん、世間のエリートは「貧乏人憎し」だけではない人がほとんどだろ うとは思いますが、こういうのを目にすると「日本のエリートには使命感がな い」と「不平等社会日本」で嘆いた佐藤俊樹氏の気持ちが少しわかるような気 がします。 ■2001/12/19 (水) 賃金が上がらない きのう発表された厚生労働省の「平成13年賃金引上げ等の実態に関する調 査」結果(速報)によれば、今年の賃金改定額は平均で4,163円、1.5 %となったもようです。これは比較可能な昭和55年以降最低(率は昨年と同 率)ということのようです。明確な賃金制度を持っていない企業もまだまだ多 いわけですが、一応平均的な定昇(相当分)は2.0%程度はあるということ になっていますから、今年も昨年に続いて0.5%の定昇割れとなりました。 団塊の世代が50代にありますので、本当の内転分が2.0%もあるかどう かは疑問ではありますが、一応あるという前提で考えれば、0.5%のマイナ スベアで、賃金カーブが下がる、労務屋的に言えば「賃下げ」だったというこ とになります。 それでも、昇給があれば個人ベースでは増えている(一歳一年上の人には追 いつきませんが)わけで、「賃下げ」という実感は乏しいでしょうが、現実を 見ると、今年1人当たり平均賃金を引き下げた企業も2.2%あり、改定を実 施しない企業は21.3%にものぼっています。個人ベースでも下げられる、 あるいは昨年と同額という企業が4分の1もあるわけです。とはいえ、今年の 春の時点でも、中小企業を中心に社長が従業員に頭を下げて「申し訳ないが、 今年の賃金は昨年と同じでお願いしたい」と謝り、従業員も「まあ、この状態 じゃ仕方ないよね」で終わり、というケースが続発しているといわれていまし た。これはベアどころか定昇もナシということで、大幅な賃下げなのですが、 それでも納得の得られるような職場の実態があったということでしょう。 これに関しては、物価が上がっていない、あるいは下がっているので、賃金 が上がらなくても実質生活が維持できるということも大きく関係しているでし ょう。実際、「衣」「食」にかかわる価格の下落はめざましく、それも低価格 な商品がさらに下がっているというのが実態です。賃金が上がらなくても、と りあえずはユニクロとマクドナルドと吉野家があれば「なんとかなる」わけで すから。 ちなみに下げた企業の平均下げ幅は1人当たり12,513円で、率にして 3.4%。けっこうな額といえるでしょう。理由を見ると、下げる理由は業績 悪化が圧倒的で、上げなかった理由は「雇用維持優先」もけっこう多くなって います。やはり「賃金より雇用」というのが現実の大勢でもあるということな のでしょう。 ■2001/12/18 (火) ご用心はお互いさま ビジネスシーンのコミュニケーションツールとして今や完全に定着した感の あるeメールですが、会社のネットワークを使ったeメールのプライバシーは どこまで守られるのか、守るべきなのか?というのは考え出すとけっこう頭の 痛い問題です。 先日、東京地裁で、同じ会社に勤める夫婦が、社内のネットワークを使った eメールでの通信を閲覧され、プライバシーを侵害されたとして損害賠償を求 めた事件の判決が出されました。判決によれば、「メールの私的利用は私用電 話と同様合理的な範囲で許されると考えるべきではあるが、システム上閲覧が 可能であることはシステム利用者にも明白であり、プライバシーの保護の程度 も私用電話に比べて低くなる」ということで、今回の事件については、直属上 司が監視したことについては不適当だったとしながらも、「私的利用の程度が 甚だしかった」ことから、監視が不合理とまでは云えず、損害賠償請求を棄却 するという判断となったようです。 それにしても、この事件の具体的な内容は、女性社員が上司からメールで食 事に誘われたことを「地位を利用した行為」であると受け止め、この上司を批 判するメールを夫に送ろうとしたところ、誤って当の上司に送付してしまった ことが発端だというから恐れ入ります。このメールに驚いた上司はその後女性 社員のメールを監視、閲覧するようになったのですが、女性社員はその後も食 事への勧誘をセクハラ行為で行政官庁に持ち出そうという相談をメールで送っ たりしていたことがわかったため、この女性社員や相談を持ちかけられた社員 を配置転換した(必ずしも不利益な変更ではないことから、プライバシー侵害 での訴えとなったものと思われます)、ということだそうです。 要するに、もともと女性社員は権利意識が強かった上、上司に対する不満が あり、その関係の改善、安定をはかろうとする上司の努力を逆手にとってセク ハラ加害に陥れようという意図があったということでしょう。 判決自体は、社内メールのプライバシーに関する従来の見解を踏襲するもの ですが、監視するのであれば直属上司ではなく比較的中立性のある人事部署な どが行うべきであることや、人によっては人間関係改善の努力を逆手に取って セクハラとして云いたてられる危険性があることなど、教訓も多く含んでいる 事件のように思われます。 ■2001/12/17 (月) 減収対策も効果的に 財務省が、なぜか企業のワークシェリングに熱心です。先日は塩川財務相が 「雇用調整助成金を活用して支援したい」と発言したとの新聞報道もありまし た。そもそも雇用調整助成金は構造不況業種を延命させるだけだという理由で (それはそれでソフトランディングのために意味がある延命もあるだろうと思 いますが)一応縮小の方向に進んでおり、なにより財源となる積立金が枯渇状 態と言われています。このご時世に、ワークシェアリングによる雇用維持に企 業が負担する雇用保険料(の三事業分)をあてるというのもあまり筋のいい話 とは思えず、さすがにこれは立ち消えかと思いきや、今度はワークシェアリン グで一定以上賃金が減額された場合には、社会保険料を賃金減額分以上に減額 することでそれを支援するというアイデアも出てきたそうです。これは本日の 読売新聞が坂口厚生労働相の発言として伝えたものですが、それによれば賃金 の減額幅が大きいほど社会保険料の減額率を大きくするというアイデアもある のだとか。 これはフランスで週35時間制を導入した歳に、一定の労働時間短縮と雇用増 を実現した企業については事実上の補助金として全従業員の社会保険料を一定 額減額したことにならったものでしょうが、それにしても筋が悪い発想のよう な気がします。 その理由はいろいろありますが、何よりまずいのは、今後経済・経営が好転 して賃金を再度上げて行こうという局面になったときに、社会保険料減額の恩 恵を失うことを怖れて、それに歯止めがかかりかねないという点です。もし、 労組がこの支援策を歓迎するとしたら、それこそ自分で自分の首を締めること になりかねません。 財政的な支援を行うのであれば、賃金減がより大きなダメージとなる、住宅 ローンなどの負担の重い人に対して、返済の猶予や繰り延べなどと云った支援 を行うことが第一に必要ではないでしょうか。もちろん、相対的に厳しくなる 若年雇用対策のためにも支援が望まれます。 財務省がワークシェアリング支援に熱心なのは、一説によれば失業給付の増 加に比べれば財政の負担が軽いからだとか。それが本当かどうかは知りません が、限られた財源なのですから、有効に使ってほしいものです。 |