■2002/03/15 (金) 案外いいかも?「サッカー休暇」

 ちょっと本当かなという話ですが、きのうの月例経済報告関係閣僚会議で、
需要創出・消費拡大策としてワールドカップ開催にあわせた「サッカー休暇」
が検討されたのだそうです。
 なんでも、保守党の二階幹事長が追加的なデフレ対策として「長期休暇も効
果があるのでは」と提案、これに対して首相が「サッカー休暇」のアイデアを
出したということのようです。
 特段の具体的な実施策が議論されたというわけではなく、「雑談レベル」だ
ったということですが、いかにも需要創出策の手詰まり感を伺わせる話ではあ
ると思います。
 「休暇にしてもみんなテレビを見るだけ」「ワールドカップにあわせると全
員一斉に動くので大変」などという意見もあったそうですが、夏休みにみんな
高校野球中継を見ているというわけではありませんので、それなりに効果はあ
るのかも知れません。
 そもそも、デフレの大きな原因が需給ギャップにあるのであれば、供給を減
らして需要を増やす長期休暇は一石二鳥といえるかも知れません。無給休暇に
して、その分賃金を減らすことにすれば、なんのことはないワークシェアリン
グになってしまいます。すでに電機産業などでは休業日を設けたりもしている
わけですから、乗り目のある企業も多いのではないでしょうか。
 考えてもみれば、ワールドカップというのは滅多にない大きな経済効果が期
待できる一大イベントです。この需要創出効果をさらに生かすためには、それ
に合わせて休暇を取るというのは案外合理的な考え方かも知れません。日韓親
善のためにもよろしいでしょう。たとえば、従業員がこの時期に休暇を申し出
たら取得させなければならない、という法律を作るくらいでも効果はあるので
はないでしょうか。なにしろ前回のワールドカップには会社を辞めてまで応援
に行った人もいるのですから。
 最初はなんのこっちゃと思ったサッカー休暇構想ですが、それなりに一理は
ありそうです。まあ実現しないでしょうが。

■2002/03/14 (木) 名目ベアゼロは実質2%ベア

 金属労協主要4単産の回答を受けて、案の定マスコミがセンセーショナルな
報道を展開しています。ベアゼロ回答が相次いだことをもって、春闘は終わっ
たとか日本型経営の転換点だとか騒ぎ立てています。しかし、これは本当なの
でしょうか。単にデフレがもたらした異常値であったという部分が大きい可能
性が高いのではないかと思っています。
 実際、名目ではたしかにベアゼロですが、実質で見れば、デフレで物価が下
がっているわけですから、その分は確実に実質賃金が向上、すなわちベースア
ップしているわけです。一昨年のgdpデフレーターがマイナス1.8%です
から、おそらく昨年もマイナス2%前後は物価が下がっているでしょう。とす
ると、名目ベアゼロは実質2%ベアということになります。要するに、名目で
は定昇凍結、根元から賃上げゼロで実質ベアゼロという異常な状況での交渉だ
ったのです。だから、電機各社などは賃金制度維持という回答を出したかたわ
らすぐに割賃や手当のカットという実質ベダの交渉を始めているわけです。
 連合も、これまで(前身の同盟当時から)「ベアが物価上昇分を上回ったら
実質賃金確保」という考え方でしたから、今年も十分実質賃金を確保して上積
みをとったと思っているはずです。おそらく、今回の交渉結果が本当に痛かっ
たのは業績好調にもかかわらず名目ベアが取れなかったトヨタと本田の労組と、
せいぜい自動車総連くらいのもので、あとの労組幹部はけっこう美味いビール
を呑んだのではないでしょうか。
 もし、今年デフレを脱却して多少なりとも物価上昇ということになれば、来
年の春闘はおそらくベアゼロではおさまらないでしょう(消費税増税の97年
のようにベアが物昇を下回ることはあるとしても)。ことによれば経営サイド
も何らかのものは出すかも知れません。
 もちろん、これまでもデフレが続く中でベアを出してきたわけですから、今
年の回答が異例であるには違いありません。しかし、マスコミの騒ぎぶりはい
ささか悪乗りの感は否めません。まあ、マスコミも商売なので致し方のないこ
とではありますが・・・。

■2002/03/13 (水) 実に愚劣な文科省通知

 石原慎太郎東京都知事は、きのう(12日)の都議会で、文部科学省が私立
学校に対して完全週5日制の実施を指導していることに対して批判的な姿勢を
示したということです。文部科学省の指導は都道府県を通じての通知という形
だったようで、これについて「このように非常に愚劣な通知を右から左へ伝達
するつもりは毛頭ない」と発言したというものです。「一番軽侮を抱いた」と
いうのですから、よほど腹に据えかねたのでしょう。
 石原氏は、もともと完全週5日制などの「ゆとり教育」による学力低下を懸
念するという考え方があるようであり、また、今回も「いかなる教員たちにお
もねったのか知らないが」などと語っているように、教員労組と対決しない姿
勢への批判もあるようですが、それにしても「今回の通知は国家の本質を毀損
しかねない非常に危険なもの」とまで言い切ったのは、いかに直言居士をもっ
てなる石原氏にしても相当のことでしょう。
 とはいえ、この石原氏の発言には大いに頷かされるものがあります。もちろ
ん、完全週5日制をふくむ今回の新学習指導要領が学力低下のみならず人的資
本形成の後退や人格形成の不足をもたらすことは大問題ですが、それは別問題
としても、今回の文部科学省の指導は、民間に対する行政の介入としていかに
も過剰に思えるからです。
 実際、首都圏ではあちこちで新学習指導要領をふまえた学習塾の新企画が広
告されています。文部科学省としてもこうした学習塾の動きまでは規制しにく
いでしょう。私学としてもこれはこれで大きなビジネスチャンスですから、国
公立との違いを打ち出した経営で顧客学生の獲得を企図するのは市場経済に
おいてはむしろ当然です。
 もちろん、これが格差拡大につながるとか国公立の空洞化につながるとか言
う問題は確かにあります。しかし、それを政策的に解決する必要があるとして
も、その手段がこのような指導というのは、愚劣とまではいわないまでもいか
にも安易でしょう。
 結局のところ、国民の要請をないがしろにして一部官僚と教員の独善で指導
要領を改訂したことに本質的な問題があります。過ちは改むるに如かずという
わけで、第一に取り組むべきはすぐにできることとして新指導要領を早期に元
に復すことでしょう。

■2002/03/12 (火) 駐在員にもドイツ語義務化の無意味

 先週、オーストリアで移民労働者にドイツ語の修得を義務付ける法案ができ
そうだという話をこの日誌に書きましたが、その続報が入ってきました。なん
でも、移民に限らず、eu加盟国を中心とした欧州18ヶ国を除いて、外国企
業の駐在員についてもドイツ語講習を義務付けるということで、4年以内に修
了しなければ国外退去になるのだそうです。米国や日本も例外ではないという
ことですから、オーストリアに現地法人や駐在事務所のある企業にとってはや
っかいな問題になるかも知れません。
 前も書きましたが、たしかに移民の同化を進めるには語学修得は非常に重要
であることは事実です。法律で義務化しているのもオーストリアだけではない
そうです。とはいえ、それはあくまで同化政策であり、同化というからには定
住を前提とした移民が対象であるはずです。それを数年間の滞在で帰国するこ
とが大前提になっている(まあ、そのまま現地で転職して定住する可能性もゼ
ロではないでしょうが)海外企業の駐在員にまで拡大することに何の意味があ
るのでしょうか。
 これは雇用対策という面でも意味がありません。駐在員が現地人雇用を代替
する数など知れたものだからです。むしろ、現地法人や駐在員事務所が存在す
ることで生まれる雇用の方が大きいはずです。オーストリアに現地法人などを
置くのは、オーストリア一国の市場のためというよりは、東〜中央ヨーロッパ
広域の拠点としてでしょう。であれば、こうした規制のために拠点が他国に移
ったとしたら雇用という意味ではむしろ損害のはずです。
 結局のところ、雇用対策という面もさることながら、経済的意味を離れた純
然たる排外主義が根本にあるのではないかと思われます。ドイツ語の他国語に
対する優位という差別思想があるから、他国民にそれを強要しようというので
しょう。暴挙とのほかいいようがありません。
 もっとも、ドイツ語講習の義務付けについては「4年以内に」ということな
ので、3年程度で駐在員を入れ替えれば、この規制を免れることができる可能
性もありそうです。とりあえずの防衛策としては、退去処分を受ける前に人を
交替させるというのも現実的かも知れません。

■2002/03/11 (月) 変更解約告知、今回は否定

 このところ労働事件の判決が目立つような気がしますが、今日は日本ヒルト
ン事件の東京地裁判決が出ました。
 この事件は、日本ヒルトン傘下で新宿副都心に偉容を誇る大規模シティホテ
ル「ヒルトン東京」の配膳人に対し、会社がホテルの経営悪化を理由に給与水
準の引き下げを提示したところ、それに応じなかった2人を解雇したという事
件です。原告は雇用関係の継続の確認と賃金支払を求めていました。
 これは一見して、労働条件の変更を申し出て、それに応じない場合は解雇す
るという、いわゆる「変更解約告知」の類型に属する事件で、欧米では一般的
に見られるものであるということなので、外資がこれを日本に持ち込んだ事件
という見方もできる興味深いケースです。
 判決は、「労働条件の切り下げに同意しなかったことで解雇が許されるなら、
不利益な労働条件変更を一方的に行えることとなり、社会通念に照らして解雇
の合理的理由とは認め難い」として、解雇を無効としました。そのうえで、給
与水準変更自体はホテルの経営悪化を理由に「合理性が認められる」として、
変更後の賃金水準で計算した未払賃金の支払いを命じました。
 この判決を見ると、解雇は無効でも賃金カットは認められています。考えて
みれば、そもそも原告が賃金カットを受け入れていれば解雇されなかったわけ
ですから、いったいどちらの主張が通ったのかというのは難しいところです。
実務的には、合理的な賃金カットを拒む従業員に対しては、いきなり解雇では
なく、とりあえずは新賃金で賃金を支払い、訴えを待って賃金カットの合理性
を争いなさい、ということになるのでしょうか。就業規則の不利益変更自体は、
法律の文面上は一方的に可能ですが、合理的理由がなければ無効という判例が
積み重なっていますので、応じなければ解雇というのは行き過ぎだよ、という
ことなのでしょう。まあ妥当な判決かも知れません。
 変更解約告知については認めないという内容の判決になっていますが、変更
解約告知を一般的に否定したものではなさそうですし、今後も類似の事件は続
出するのではないでしょうか。

                 






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